こそあどの森の物語 はじまりの樹の神話

著 者:岡田淳
出版社:理論社
出版日:2001年4月 初版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 久しぶりの児童文学。「こそあどの森の物語」というシリーズの中の1冊。シリーズは1994年の「ふしぎな木の実の料理法」から始まって、今年(2017年)2月に発行された12冊目の「水の森の秘密」で完結した。本書はその6番目の作品。

 息の長い人気シリーズだから知っている方もいると思うけれど、シリーズの説明を。舞台になるのは「こそあどの森」。「この森でもあの森でもその森でもどの森でもない森」。主人公はスキッパーという名の少年。スキッパーはバーバさんと住んでいる(バーバさんは旅に出ていてあまり家にいない)。

 他にはトワイエさん、ポットさんとトマトさんの夫婦、スミレさんとギーコさんの姉弟、ふたご(彼女たちはしゅっちゅう名前が変わる)、という風変わりな住人たちが、それぞれ風変わりな家に住んでいる。例えば、ポットさんたちは「湯わかし」の家、スミレさんたちは「ガラス瓶」の家に住んでいる。ここまではシリーズ全体の設定。

 本書では、この森にハシバミという少女がやってくる。ある夜にしゃべるキツネがスキッパーの家にやって来て「森のなかに、死にそうな子がいるんだ」と言う。それで、スキッパーとキツネで助け出したその「死にそうな子」がハシバミだ。

 ぜひ読んでもらいたいので詳しくは書かないけれど、ハシバミはずっと前の時代から来た少女で、スキッパーたちはその時代の出来事に深く関わることになる。この物語は、神話の時代と現代との間の、数千年の時間を越える壮大スケールの話なのだ。

 本書の特長はこのスケールの大きさだけではない。進歩発展してきた私たちに、少し立ち止まってこれでいいのか?と問いかけるメッセージが込められている。「依存」して生きてることについて、それに「無知」であることについて、「戦う」ということについて。

 児童文学に、圧倒されここまで深く考えさせられるとは思わなかった。実はシリーズの他の本も何冊か読んでいるのだけれど、本書は出色の作品だと思う。

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