のっけから失礼します

著 者:三浦しをん
出版社:集英社
出版日:2019年8月10日 初版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 笑い過ぎて酸素不足になって倒れるかと思った本。人前で読むのは控えた方がいい。

 月刊の女性向けファッション誌「BAILA」に連載したエッセイをまとめたもの。2014年6月号から2019年5月号までに掲載した60本を収録。

 とにかく変だ。どうかしていると思う。帯に「ありふれているのに奇想天外な日常」とある。冒頭2本目の「美容時間の問題」というエッセイに衝撃的なことが書かれている。「外出する用事があるときは、ちゃんと風呂に入って顔も洗う」。つまり..外出する用事がない時は,,,。

 「変だ」と思ったのは2つの意味で。1つ目は「なんでこんなに可笑しいのか」ということ。著者はほとんどの日は家に籠って仕事をしていて、だれとも会わない。そんな日常なのに、なんで毎月こんなに面白いことが起きるのか。

 それは、読み進めていけば分かる。それは「著者自身が面白いから」だ。例えば3本目のエッセイ「もやしとぬた」から引用する。

 スーパーでもやしを手にするたび、「やす・・・っ!」と驚愕の声を上げるのを抑えられない。「ヤス!」「銀ちゃーん」。一人で「蒲田行進曲」ごっこをはじめてしまうほどだ。...

 「もやしが安い」だけなのに、それを著者が面白可笑しくしてしまう。まぁ「力技」で面白くなっている。そして面白い著者が面白い人を引き寄せている。お母さんとかお父さんとかお友達とか編集者とか...。その人たちが面白いことをしてくれる。

 「変だ」と思った意味の2つ目は「なんでこの雑誌にこのエッセイなのか」ということ。「BAILA」の読者層は「おしゃれ感度の高い30代」らしく。紙面はおしゃれな洋服やコスメが満載になっている。そこに「外出する用事があるときは風呂に入る」というエッセイが、しかも巻頭に(タイトルの「のっけ」はそういう意味)ある。

 しかも、ここでは具体的に書かないけれど、下ネタもやたら多い。本書の書下ろし部分に、ボツになった下ネタが紹介されているけれど、これを読むと、編集者も頭を抱えた瞬間があるはず。それでも2014年に始まった連載が今も続いている。「おしゃれ感度の高い30代」に支持されているということか?

 冒頭の「とにかく変だ。どうかしている」は、ほめ言葉です。

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