店長がバカすぎて

著 者:早見和真
出版社:角川春樹事務所
出版日:2019年7月18日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 本屋さんを舞台にしたコミカルな物語。本屋さんが好きな人なら楽しめそうな本。

 本屋大賞ノミネート作品

 主人公は谷原京子28歳。武蔵野書店吉祥寺本店の契約社員。時給998円。小さいときから本屋で働きたいと思っていて、武蔵野書店には憧れの書店員がいて..希望を実現した形ではある。それでもよく「こんな店、マジで本気で辞めてやる!」と思っている。主な理由は「店長がバカすぎて」

 今年四十歳になる店長は、毎朝の開店前のクソ忙しい時間に朝礼で長い長い話をする。「明後日か明明後日に自分に来客があるはずなので、私につないでください」とか言う。次の日には「明日か明後日に..」。そんなことはその日の朝に言え!いや言わなくても店長に来客があれば店長につなぐだろ!一事が万事そんな感じ。

 物語は、京子さんの奮闘を描く。ちょっとしたミステリーもある。京子さんの周辺には様々な人がいる。店長、憧れの先輩書店員の他、アルバイトの大学生、お店のお客さん、出版社の営業、作家の先生..。全部で6話あるタイトルはそれぞれ「店長がバカすぎて」「小説家がバカすぎて」「弊社の社長がバカすぎて」「営業がバカすぎて」..大変そうだ。

 大変そうだけれど、みんなバカであってもユーモラスで憎めない。だから面白く読める。京子さんのお父さんがやっている小料理屋があるのだけれど、京子さんは、そこでうまく気分転換ができている。それは読者も同じで、書店の中だけではいささか飽きるけれど、絶妙なタイミングで舞台が転換する。いいアクセントになっている。父娘の関係もなんとなくいい感じ。

 ひとつだけ。物語中に「本屋さん大賞」という書店員が選ぶ賞の話題が何度も出てくる。「本屋さん大賞」が出てくる「本屋が舞台」で「本屋の店員が主人公」の小説を「本屋の店員たち」が「本屋大賞」にノミネートしている。自分の尻尾を追いかけてグルグル回る犬が頭に浮かんだ。

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