この本を盗む者は

書影

著 者:深緑野分
出版社:角川書店
出版日:2020年10月8日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 本屋大賞ノミネート作品。

 エンタテインメント性があって、連続ドラマにしたら面白そうだと思った本。

 主人公は御倉深冬、高校1年生。読長町という町に住んでいる。読長町では深倉家は名士。深冬の曽祖父の深倉嘉市が、全国に名の知れた書物の蒐集家で、その蔵書を収めた地上2階地下2階の巨大な書庫である「御倉館」が、町の真ん中に建ち、名所となっていた。

 御倉館の蔵書はかつては公開されていたけれど、稀覯本200冊の盗難事件を機に、嘉市の娘のたまきが閉鎖し、建物のあらゆる場所に警報装置を付けて、御倉一族以外の立ち入りを禁じた。そして、たまきの死後ある噂が流れた。「たまきが仕込んだ警報装置は普通のものだけではない」という噂だ。

 一族と言っても、深冬と、深冬の父のあゆむと、叔母のひるね、の3人しかいない(親類はいるらしいけれど疎遠にしている)。叔母のひるねは、その名の通りに寝てばっかりで生活能力がない。あゆむが事故で入院してしまい、御倉館の管理とひるねの世話が、深冬の役割となった。

 深冬が御倉館に行くと、ひるねは案の定寝ていた。その手には何やら護符のようで、書いてある文字を深冬が読み上げると...。なんだかとんでもないことが起こった。雪のように真っ白な髪の少女が現れるし、外に出ると見慣れた街の様子が変で、なんと真珠の雨が降っている。

 ここまで50ページ。意外な展開だった。これまでに読んだ著者の作品は「戦場のコックたち」「ベルリンは晴れているか」と、外国を舞台としたリアリティのあるものだったけれど、本書は主人公が異世界に紛れ込むファンタジーだ。主人公が、異世界での課題をクリアしないと、元には戻らない。一種のミステリーの要素もある。

 森見登美彦さんが帯に言葉を寄せているけれど、本をめぐる謎があること、気が付くと異世界に入り込んでいることなど、「熱帯」と共通点がいくつかあるかも?と思った。

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