デジタル・ミニマリスト

著 者:カル・ニューポート 訳:池田真紀子
出版社:早川書房
出版日:2019年10月15日 初版 2020年7月15日 3版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 読んでさっそくTwitterを開くのを1週間に1回だけにした本。

 本書は「デジタル・ミニマリズム」の基礎となる概念や実践の方法を説明したもの。「デジタル・ミニマリズム」は本書の中で定義がある。

 「自分が重きを置いていることがらにプラスになるか否かを基準に厳選した一握りのツールの最適化を図り、オンラインで費やす時間をそれだけに集中して、ほかのものは惜しまず手放すようなテクノロジー利用の哲学」

 つまりは、デジタルツールの利用は自分で選んだ本当に必要なものだけにして、できるだけ少なく(ミニマムに)しよう、ということだ。そして、こんなことをわざわざ言うには前提がある。私たち(の多くは)、SNSやニュース、ストリーミングメディアなどのデジタルツールを使いすぎているのだ。

 もちろん人によって違うけれど、本書が引用した調査によれば、Facebookの「平均的なユーザー」は、ソーシャルメディアと関連サービスに1日2時間を費やし、スマートフォンなどのデバイスを85回もチェックする。しかし、本当に問題なのは時間や頻度ではない、ユーザーがデジタルツールの利用のコントロールを失いつつあることだ、と著者は言う。

 それには「承認欲求」と「間歇強化」という人間の心理が関係している。「承認欲求」は言わずもがな。「間歇強化」とは、報酬を予期せぬパターンで与えられると喜びが大きくなる、というものだ。「いいね!」されているかも?コメントが付いているかも?その期待は、叶う時も叶わない時もある。まさに「予期せぬパターンの報酬」だ。

 スマホの新着を占める赤い丸数字(赤い色にも心理的な意味がある)を見るとチェックせずにはいられないのは、そういう心理的な理由だ。人間の心理に基づく行動だから、これに抗ってコントロールするのは難しい。さらに留意すべきなことは、この状態はサービス提供企業が意図して作り出している。もう私たちはサービス提供企業に操られているも同然だ。

 SNSを使わないと「でも何か役に立ちそうな情報を見逃してしまうかもしれないでしょう?」と不安を口にする人が多いらしい。それに著者はこうコメントしている。

「使ってみなよ、意外なメリットがあるかもしれないから」というのは、商品の売りこみ文句として史上最悪の一つに違いない。

 ごもっともで。

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