2.小説

夜の山道で 星新一ショートショートコレクション

書影

著 者:星新一
出版社:理論社
出版日:2002年11月初版
評 価:☆☆☆(説明)

 少し前に読んだ「ねらわれた星」と同じシリーズ。こちらは17篇の短篇が収められている。
 「ねらわれた星」に比べると、こちらの作品はなんだか納得いかないものが多い。最後にオチがないものが多くて(ストーリー自体には、意外性がないことはないのだが)。星新一のショートショートらしくない、切れ味が悪いという感じ。
 作品の年代が違うのかと思い調べたところ、「ねらわれた星」に収録されているのは、昭和30年代で作者が30代のころのもの。「夜の山道で」は、昭和50年代のもの、なんと20年も違う。何十年も書き続けていて、傾向が変わったのだろうか。敢えて、優劣はつけないけれど、私がショートショートらしいと思って読んだ作品は、自分が生まれる前、40年以上も前の作品だったことになる。

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ねらわれた星 星新一ショートショートセレクション

書影

著 者:星新一
出版社:理論社
出版日:2001年11月初版
評 価:☆☆☆(説明)

 星新一のショートショート19編が収められている。著者は1997年に亡くなっているので、これは過去の新潮文庫を底本とした、言わば復刻版。
 中学生ぐらいの時に、ショートショートを好んで読んだ記憶があるので、1編ぐらいは覚えているかと思ったけれど、どれも覚えていなかった。
 中学生の頃は、最後のオチやドンデン返しが面白くて読んでいただけだけど、この本には環境問題を扱った「おーいでてこい」や、人間関係を皮肉った「肩の上の秘書」などなど、風刺の効いたものが多い。ひょっとして星新一の持ち味はこんなところにもあったのかも知れない。
 それにしても、ショートショートという分野は、星新一氏が確立したものだが、その後誰かが受け継いだという話を聞かない。惜しい気がする。

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神の吹かす風(上)(下)

書影
書影

著 者:シドニィ・シェルダン
出版社:アカデミー出版
出版日:1996年10月10日
評 価:☆☆☆(説明)

 久しぶりに読んだシドニィ・シェルダン。
 知っての通りストーリー展開の巧みさとドンデン返しが特長の作家。意訳を超えて日本語らしく読みやすくした超訳が売りの出版社。なるほど読みやすく、ドンデン返しも伏線もあり楽しめた。でも、「ゲームの達人」や「時間の砂」など、最初のころの作品ほど面白くなかった。その他の作品も何冊か読んだけれど、それと比べても平板な感じがした。
 ストーリーは、田舎の大学教授がルーマニア大使に抜擢されて活躍する話。最後には命も狙われるが、それでも機転を効かせて難を逃れる。
 ドンデン返しがあると思って読んでいるからか、善人が善く、悪人が悪く描かれすぎているのが途中から気になった。少し度が過ぎる。また、大使としてルーマニア政府の要人と交渉するのだが、あまりに単純で驚く。うすっぺらでリアリティが感じられない。ストーリー展開は面白いので、それに水を差している感じ。
 軽い読み物としては素直に楽しむには良いのかも。わざわざ、意地悪な見方をすることもないか。

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シュエイクスピア1

書影

著 者:シェイクスピア (訳:福田恒存)
出版社:中央公論社
出版日:1993年10月20日発行
評 価:☆☆☆(説明)

 シェイクスピアの戯曲のうち、ハムレット、オセロー、アントニーとクレオパトラ、リチャード三世、夏の世の夢の5篇を収録。
 知らない人はいないと思われる有名な作家の手になる作品だ。名前だけは知っているが読んだことがない人の作品、とも言えるかもしれない。かく言う私も、読んだ記憶はなく、一度試しに読んでみたいと思い手にした次第。
 ストーリーは至って単純明快。現代の小説も演劇も、なかなか凝った筋書きで楽しませるものばかりであることを思えば、かえって新鮮な感じさえする。読み込みが浅いだけで、実は奥深い意味があるのかもしれないけれど。 これらは戯曲なので、舞台で上演することを目的に書かれたとすれば、これぐらい筋がまっすぐに通っているほうが良いのだろうと思う。
 率直な感想を言えば、ハムレット、オセロー、アントニーとクレオパトラはそれなりに楽しめる。リチャード三世は、とっつきは悪いが奥深い物語。夏の夜の夢は、タイトルはロマンチックだけれど、面白くはない。
 それにしても、世界中で多くの研究者がシェイクスピアを研究しているようだけれど、何を研究するというのだろう。面白いとか感動したとかではだめなんでしょうかねぇ。

 大人なら(少し背伸びした子どもも)教養として読んでみても良いのでは?

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海辺のカフカ

書影
書影

著 者:村上春樹
出版社:新潮社
出版日:2002年9月10日発行 9月20日2刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 1999年「スプートニクの恋人」以来の長篇書き下ろし。
 期待を裏切ることなく、村上作品独特のつかみどころのない世界が広がる。灰色の海と灰色の空の境界があいまいなように、夢なのか現実なのか、その境界が見えない浮遊感がただよう。 「僕」と「ナカタさん」の2つの物語が同時に進行し、最後に折り重なる手法も馴染み深い。
 しかし、今回の物語は底が浅いように感じた。まるで、誰かが村上春樹のスタイルを真似て書いたような、しっくりこない感じがする。少年の家出やその他の人の行動に必然性がない。偶然や都合よく現れる登場人物(猫もいた)の導きの繰り返しで、物語が進行する。まるで、ロールプレイングゲームのように。

 それでも、「どうやったらこういう人物を思いつくのか」と思うような、独特の登場人物と設定など、軽めな村上作品を楽しみたい人には良いと思う。

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ガリヴァー旅行記

書影

著 者:ジョナサン・スウィフト (訳 平井正穂)
出版社:岩波書店
出版日:1982年6月2日発行 1984年6月10日第3刷
評 価:☆☆☆(説明)

 子ども向けのおとぎ話の定番とも言える物語の原作。
 船が難破して、小人国(リリパット)に流れ着いて...という冒険譚は、なるほど子どもが好きそうなワクワクした話だけれど、作者の意図するところは、そんな楽しげなものではないようだ。
 なにしろ毒気が強いなんてものじゃない。リリパット、ブログディンナグ(大人国)、ラピュータと、冒険が進むのにつれて文明批判の度合いが強くなり、最後のフウイヌムでは、完全な人間不信、否定に至るのだから。
 「ガリヴァーの冒険」は、日本だけでなく世界各地で子供向けの話になっているようだけれど、最初に子供向けに焼き直すことをした人は、原作や原作者についてどう考えていたのかと思う。それから、ヤフーという生き物が、フウイヌムで下等なきたならしい人類として登場する。検索エンジンの名前にYAHOO!とつけようと思ったひとは、どういうつもりだったのだろう。

 子ども向けの「ガリヴァーの冒険」は、小人国か大人国で終わりのものが多い。その他の冒険も読みたい人、ラピュータがスタジオジブリの「天空の城ラピュタ」と関係がありそうだと思った人、ガリヴァーが日本にも来たことを確かめたい人にはお勧め。

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