著 者:三浦しをん
出版社:双葉社
出版日:2021年4月25日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
アホ男子高校生の暮らしは楽しい。でも彼らも一生懸命生きているのだ、と思った本。
主人公は穂積怜。餅湯温泉駅前商店街の土産物屋で、母の寿絵と暮らす男子高校生。餅湯温泉は、関東近県から客がやってくる一大リゾート地。餅湯温泉駅には新幹線の駅もある。とはいえ、団体旅行も減って久しい昨今、ホテルや旅館は経営が厳しく、それは土産物屋も同様で、怜が生まれた時からこの町は半分寝たような状態だ。
物語は怜の日常から始まる。朝起きて、母親としょうもない口喧嘩をして、学校に行って、身が入らない授業を受けて、昼休みには子どものころから一緒に育った友達と屋上で弁当を食べる。あっと言う間に食べ終わって、誰かが「腹へった..」とか言う。..平和だ。
と思ってたら「あれ?」と思うことが起きる。怜が寿絵と暮らす家とは違う家に帰って行く。どうやら毎月第三週はそこで暮らすらしい。50畳はあろうかというリビングダイニングがある豪邸で、商店街の店舗兼住居の家とは全く違う。おまけにそこには伊都子という名前の女性が居て、怜は伊都子のことを「お母さん」と呼んでいる。なんと怜には母親が二人いるらしい..。
男子高校生の学園生活、お店や旅館の子どもが多い同級生たちの支えあい、子どものころから知っている商店街の大人たちとの関係、サスペンス調の冒険などなどが描かれる。もちろん、怜に母親が二人いる事情も明らかになるし、それに絡んだ事件も起きる。すべてが著者らしいユーモアと人情にくるまれている。
笑う場面が多いのだけれど、なかでも特に声を出して笑ってしまった場面がある。友人の一人が右手の中指と人差し指を骨折する。その理由が...ぜひ読んで欲しい。
人気ブログランキング「本・読書」ページへ
にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
(たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)