著 者:東野圭吾
出版社:講談社
出版日:1996年8月15日 第1刷発行 2010年12月1日 第51刷発行
評 価:☆☆☆(説明)
1993年というから今からざっと20年も前の作品。手元にある文庫本の帯には「ターニングポイントとなった傑作! この作品で作家・東野圭吾はますます輝きを増した」とある。この惹句に魅かれた。
主人公は西原荘一。地域随一の名門高校の3年生。野球部の主将。物語の発端は同級生の死。野球部のマネージャーでもあった宮前由希子が交通事故で亡くなる。真相が明らかになるにつれて、この「事故」が、学校全体を揺るがす「事件」に発展していく。
由希子は身籠っていた。産婦人科病院からの帰りに事故に会ったらしい。事故が様々な憶測を呼び、西原は「事件」の当事者になる。生徒指導の教師も事故に関わりがあることがわかり、西原と学校は鋭く対立し、ついには「殺人事件」が起きる。
当初は同級生の死を発端とした、学校の中の様々な出来事を描いた「学園モノ」の様相だったけれど、この「殺人事件」後には、犯人捜しを軸にしたミステリーの王道が展開される。
この学園モノからミステリーへの転換が実に鮮やかで、引き込まれた。さらにそのミステリーの背景には、高校生の友情・恋愛、教師と生徒の対立、学校の体面、それに環境問題など、様々なものが描き込まれている。多少「描き込み過ぎ」な感はあるが、物語を楽しめた。
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