6.経済・実用書

チェンジ・ザ・ルール

書影

著 者:エリヤフ・ゴールドラット (訳:三木本亮)
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2002年10月10日第1刷 2002年10月25日第3刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「ザ・ゴール」の著者でTOC理論の提唱者の第3弾。
 第1弾の「ザ・ゴール」は、「ドラム・バッファー・ロープ」と「バッファー・マネジメント」からなるTOC理論の核心部分、第2弾の「ザ・ゴール2」は、「思考プロセス」という問題解決技法をそれぞれ紹介した。なかなかインパクトのある本だった。

 この第3弾には、そうした新しいコンセプトや理論はない。TOC理論を応用した企業改革のケーススタディといったところ。しかし、ストーリー全体を流れる考え方は有用だ。「コンピュータシステムを導入してどのように利益をあげるのか」ということだ。
 私も企業の情報システムに携わったことがあるので、登場するERPメーカーのとまどいや驚きが良くわかる。決算書が早くできる、全社のデータが翌日にはわかる、5人で処理していた伝票を1人でできるようになる。コンピュータシステムにはそうしたメリットがある。そう、確かにメリットはあるのだが、「いくら利益に貢献するのか」はわからない。大金を投じる以上、それを上回る利益が見込めなくてはならないのだが、それはわからないのだ。

 利益をあげるためのコンピュータシステムの導入はこうすると、著者は言っている。
(1)コンピュータシステムは、何らかの限界を取り除くために導入する。
(2)その限界が存在することを前提に作られたルールのままでは効果は出ない。ルールも変更する必要がある。
(3)新しいルールに合わせ、コンピュータシステムにはどのような変化が必要か、さらに考える。

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心理テストはウソでした 受けたみんなが馬鹿を見た

書影

著 者:村上宣寛
出版社:日経BP社
出版日:2005年4月4日初版 2005年5月11日3刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 血液型による性格判断からロールシャッハテスト、矢田部ギルフォード、クレペリン検査と、様々な心理テストの「いい加減さ」をバッサバッサと切りまくる。著者は富山大学の教授で、認知心理学の先生で、学生にこういった性格診断についても教えているそうだ。もちろん、こんなものはウソッパチだと言いながら。

 血液型による性格判断は、前からウソくさいと思っていた。統計をとればそういった傾向が見られるという説明はよく聞くが(A型は神経質、B型は自己中心的といったたぐいのもの)、その因果関係は統計では証明できない、と。
 ところが、コトはもっと悪質で、統計でそういった傾向がでることさえないのだそうだ。つまり、全くのデタラメ。1933年に日本法医学会総会で正式に否定されている。
 こう聞いても別にハラも立たない。「やっぱりそうか」ぐらいにしか思わない。しかし、問題なのは、教育関係者や警察など、血液型による性格診断を信じて「利用している」ことだ。そう言えば、テレビでもよくやっている。こういうのはエセ科学として、有害な情報の流布にはならないのだろうか。

 ロールシャッハのブラインドテストの結果が見ものだ。被験者を伏せて、結果を診断させるのだが、これが全くのハズレ。その被験者の本当の姿とは全く合致しない、トンでもない診断が出てきてしまうのだから、お笑いだ。この一件以来、専門家の間では、同種のテストは行われなくなったそうだ。
 昔、フロイトの「夢判断」を読んだが、長いものは何でも「男性のシンボル」で、丸いものは女性のそれ、という具合に、夢で見たものが何でも性的イメージとされてしまう。ここから一歩も進歩していないのではないか。

 最後のクレペリン検査は、今でも自治体や教員の採用試験に使われるそうだ。この検査は、診断の仕方を知っていれば、簡単に正常値を出せるし、逆に、実験を繰り返していくと、正常者が1割ぐらいにまで減ってしまうそうだ。こんな検査をまじめにやっていて良いのか?

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チェンジモンスター なぜ改革は挫折してしまうのか

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著 者:ジーニー・ダック (訳:ボストン・コンサルティング・グループ)
出版社:東洋経済新報社
出版日:2001年12月23日発行
評 価:☆☆☆☆☆(説明)

 とある講演会で「改革を導入した当初は、導入前よりも生産性が落ちてしまう時期があるが、そこで踏ん張って続けることで、ようやく改革の成果を得ることができる。生産性が落ちたことで弱気になって止めてしまう例が多い」という話のなかで、チェンジカーブなる曲線を見た。いや、正確にはそういう名前が付いていたかどうかわからない。その曲線について調べていたところ見つけた本。
 巻末に、訳者であるBCGの日本法人が加えたと思われる、日本型チェンジモンスター(改革を阻害する怪物)が面白い。
タコツボドン:自分の担当を超えた視野を持たず、「よそ者」の関与を否定する。
ノラクラ:さまざまな言い訳を使い、あの手この手で改革を回避しようとする。
カイケツゼロ:課題の指摘やできない理由の説明は巧みだが、解決策は出せない。
などなど。うちの職場のあの人は○○だ、などと言って盛り上がれること間違いない。

 残念ながら、これらのモンスターは本編には登場しない。しかし、大変に示唆に富んだ内容だ。参考になった点を思いつく順にあげる。
・もし制限なしでなんでもできると仮定してやることをあげてから、アクションプランを検討する。制限があればそれを克服する方法を考える。
・必要なことは、コミットメントとコミュニケーション。こちらが思う以上に相手は情報を必要としている。
・絶えず関わり続けること。情報を共有すること。感情を甘く見ないこと。

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マッキンゼー式 世界最強の仕事術

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著 者:イーサン・M・ラジェル(訳:嶋本恵美、田代泰子)
出版社:英治出版
出版日:2001年4月20日第1版 2001年5月20日第10刷
評 価:☆☆☆(説明)

 マッキンゼーの問題解決のノウハウを紹介したもの。本当のノウハウはこんな本を読んだぐらいでは身に付けることができないのは当然なので、著者の責任ではないかもしれないけれど、この本を読んでも仕事ができるようにはならない。それでも、世界最大のコンサルティングファームの内幕が少し覗ける。ためになる話もけっこうある。
 要点を3つ挙げると(マッキンゼーでは、3というのがマジックナンバーなんだそうだ。どんなことでも、3つにまとめて表現すると良いらしい)、「問題を構造分析して構成要素に分けること」「問題解決の当初仮説を立てること」「リサーチの重要性」といったところか。(正直言って、3つ目はムリやり考え出した)
 構造分析と言うのは、一見どうしたらよいかわからない問題も、分析してバラバラの要素に分解すれば、それぞれは単純化されるので、解決策を考えやすい、ということだ。当初仮説と言うのは、問題解決策を仮に立てて、それを検証するプロセスで真の解決策に近づくことができる、ということだ。ここで大事なのは、当初仮説は攻撃するために立てるものなので、その仮説を補強することを目的にデータを探すということはNGだ。本末転倒になってしまう。

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ザ・ゴール2 思考プロセス

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著 者:エリヤフ・ゴールドラット (訳:三木本亮)
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2002年2月21日初版 2月28日第3版
評 価:☆☆☆(説明)

 ザ・ゴールの続編。数年後という設定らしい。著者の唱えるTOC理論には、前作で紹介されたボトルネックのコントロール以外にも、多くの理論が含まれているそうで、今回は問題解決の思考プロセスを紹介している。
 現状問題構造ツリー、未来問題構造ツリーなどのツリー図がこのプロセスの具現化のために使われる。前作のボトルネックのコントロールに比べると、実際への応用は難しそうに思う。前作のが誰がやっても同じ結果(効果)を生む数式だとすれば、思考プロセスは方法論だ。この意味では、おなじみのマーケティング理論と同じで、答えは自分で見つけなければならない。
 今回は、生産管理だけでなく、対人関係や交渉術まで含んだソリューションの提供が目的。誰がやってもできる万能薬のようなものを求めるのは都合が良すぎるのだが、前作と比べて明快さに欠けるのは否めない。
 しかし、中で提示されている、印刷会社、化粧品会社、高圧蒸気の会社のマーケティングプランは秀逸だと思う。特に、顧客の問題解消を中心に据える考え方は普遍なのではないか。ビジネススクールのケーススタディにしたいぐらいだ。
 「企業は製品の価値をコストをベースに考えがちだが、市場は便益をベースに考える」

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ザ・ゴール 企業の究極の目的とは何か

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著 者:エリヤフ・ゴールドラット (訳:三木本亮)
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2001年5月17日初版
評 価:☆☆☆☆☆(説明)

 著者は、イスラエルの物理学者。科学者らしく工場の生産管理を科学的にアプローチして、劇的な効果を実現させるTOC(Theory Of Constraints:制約条件の理論)を完成させた。本書は、それを小説仕立てで紹介している。
 経営について少し学んだことのある人なら、このTOC理論が大変有用であることがすぐにわかるだろう。ビジネスに関する理論は数多くある。ランチェスター、ゲームの理論、等々。しかし、それらは考え方を提供するのみで、実際の戦略、戦術へ落とし込むのにはそれなりの経験や能力が必要だ。その点、TOC理論は極めて具体的な方法論で構成されている。
 要点は生産工程のボトルネックの発見にある。全体の生産性はボトルネックの生産性に制約される。だから、ボトルネック工程が1時間止まれば、工場全体が1時間止まるに等しいので、この工程の前を空けないように他の工程を工夫する。逆に、ボトルネック工程が止まらない限りは、他の工程に空き時間があって生産性が落ちてもも構わない。
 当たり前のようだが、これは、今までの常識から多くの点で矛盾する。今まではどの工程でも生産性を高めることを是としていた。しかし、逆に仕掛部品在庫を増やしてコストを押し上げることにもなりかねない。こういった点が画期的だ。
 ところで、副題の企業の究極の目的は「儲けること」というのが本書の解答。その指標は3つあって、スループット、在庫、作業経費。

 ビジネスに関わる人全員に一読をおススメします。

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発想する会社 The Art of Innovation

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著 者:トム・ケリー ジョナサン・リットマン (訳:鈴木主税 秀岡尚子)
出版社:早川書房
出版日:2002年7月31日初版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「これが私が目標としている会社の本です」と、知り合いの起業家の卵から渡された本。
 一見してアメリカ的ハウツー & サクセス本という感じがした。字も2段組でびっしりで、正直言ってあまり読む気がしなかった。それでも、わざわざ貸してくれたのだし、彼女の目標だと言うし、とにかく読み始めた。....これが、面白かった。一気にとは言わないまでも、最後まで興味深く読んだ。

 米国に本社のある世界的に有名なデザイン会社。数々の大企業の製品デザインを手がけている。商品の企画・製造・販売といったメーカーの業務から、デザインだけを切り出してビジネスになるのか?なるのである。デザインと言っても、形や色などの形状のデザインでなく、商品コンセプトも含めた設計などを含むデザインである。(設計を英訳するとdesignだ。でも日本語のデザインは主には図案とか意匠のことだ。このズレは大きいかも。)

 では、商品コンセプトと言えば、メーカーの戦略の要の1つだ。そんなものをその商品の専門家でもない会社にアウトソースできるか?できるのである。

 ということで、この本は、デザインの本ではなく、この会社のイノベーション手法が明らかにされている。実際、この会社には、デザインの依頼だけでなく、イノベーション手法の手ほどきのオファーも多いらしい。この手法によって、専門ではなくても優れた商品デザインが可能になっているのだ。

 キーワード:ブレインストーミング、プロトタイプ、観察、他家受粉、ウェットナップインターフェイイス

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金持ち父さん貧乏父さん

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著 者:ロバート・キヨサキ シャロン・レクター (訳:白根美保子)
出版社:筑摩書房
出版日:2000年11月15日発行 12月15日第五刷
評 価:☆☆☆(説明)

 2年前のベストセラー。当時、本屋で平積みになっていたのを覚えている。
 この本の主張することは良く分かる。我々の固定観念を突き崩すところがあって、「なるほど」と思わせる。つまり、お金を生まない物(負債)を買うのを止めて、お金を生むもの(資産)を買え、ということだ。
 「我々の固定観念を突き崩す」というのは、固定資産という言葉が示すように、我々は、家や土地などのことを「資産」だと思っているが、他人に貸すのならともかく、自分で住んでしまってはお金を生まないので、これは「負債」だ、ということ。額に汗して、場合によっては何十年もローンを組んで、「負債」を買い込んでいるとしたら、ショックな話だ。
 実際、固定資産税やメンテナンスのお金がかかって、出費する一方で、いつまでも働かなくてはならなくなる。著者はこれを「ラットレース」と呼んでいる。回り車の中で走り続けるネズミ、どんなに走っても一生そこから抜け出せない。
 お金があったら、家や車を買うのではなく、株や不動産に投資して、そこから生まれたお金ではじめて買いたいものを買え、というわけ。著者も少し触れているが、投資というのは誰でもできるものじゃない。そうなるには努力が必要だ。

 努力してでも、お金持ちになりたい人にはお勧めです。

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