マスカレード・ホテル

書影

著 者:東野圭吾
出版社:集英社
出版日:2011年9月10日 第1刷発行 9月21日 第2刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 文庫本で売上200万部を突破した「容疑者Xの献身」など、数多くのベストセラーをモノにしてきた著者の最新刊。

 主人公は、超一流ホテル「コルテシア東京」のフロントクラークの山岸尚美と、警視庁捜査一課の刑事の新田浩介の2人。都内で発生した連続殺人事件の捜査の結果、次の事件が「コルテシア東京」で起きることが判明。新田はフロントクラークに成りすましての潜入捜査を命じられ、尚美はその教育係。

 犯人はもちろん誰が狙われているかも分からない。いつ起きるかも分からない事件。そんな手探りの状態で、「怪しい人物」を発見するために、新田はフロントに立つ。しかしホテルには実に様々な人が訪れる。「怪しい人物」も数多く来る。
 部屋付きの高級バスローブをくすねようとする客、「この部屋には霊がたくさんいる」と言って部屋のチェンジを求める客、ホテルクラークに次々と無理難題を吹っ掛ける客、結婚式の新婦を狙うストーカー...。
 ちなみに、タイトルの「マスカレード・ホテル」の「マスカレード」は「仮面舞踏会」のこと。客は仮面を着けてホテルにやってくる。見えている姿が本当の姿とは限らない。

 こうした客たちを、尚美と新田の即席コンビが見事にさばいていく。その間の2人の心の通い合いが見どころの1つ。さらに一見して事件とは関係がない、客とのエピソードのそれぞれが、連続殺人事件とその解決に結びついていく。このパズルのような組み立てがもう1つの見どころだ。

 本書の公式サイトに、「加賀恭一郎、湯川学に続く第三の男、あらわる」とある。これはもしかして、「新田浩介シリーズ」の予告だろうか?

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嘘つきアーニャの真っ赤な真実

書影

著 者:米原万里
出版社:角川書店
出版日:2001年6月30日 初版発行 2002年9月5日 8版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 本好きのためのSNS「本カフェ」の読書会の10月の指定図書。

 著者は、本業のロシア語の通訳の他、エッセイスト、テレビのコメンテーターなど、幅広く活躍されていた。2006年5月に亡くなられた。合掌。(もう5年も経つとは思えないのだけれど)

 本書は、著者が9歳から14歳までの少女時代を過ごした、プラハのソビエト学校での思い出と、当時の友だち3人を31年ぶりにそれぞれ訪ねた顛末が綴られたもの。タイトルにある「アーニャ」はその中の1人。2002年度大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
 ソビエト学校とは、ソ連外務省が運営する学校で、50か国以上の子どもたちが通っていた。著者の父が日本共産党代表として、各国共産党の情報誌編集局のあるプラハへ赴任し、著者も一緒に渡欧したのだ。チェコ語ではなく、ロシア語で授業が行われた。つまり、著者のロシア語通訳としての原点はここにある。

 ガラスの多面体のように、光の当て方を変えると違った見え方のする作品だった。時にユーモアを交えて描かれる、少女たちの学校生活の活き活きとした姿。少人数で自律を重視した、日本とは大きく違う学校運営も興味深い。音信不通の友だちとの再会は叶うのか?といったサスペンス調のドキドキ感。
 そして、子どもたちにも影を落とす、共産主義を共有しながらも各国で微妙に異なる事情。再会が露わにした31年間のそれぞれの人生。子どもの微笑ましい暮らしから政治経済問題まで、様々な視点から見ることができ、どの視点からも著者の息づかいが伝わってくる。

 私が特に思いを馳せたのは、著者を含めた4人の31年間の人生についてだった。それは本書には多くは書かれていない。しかし、31年後に会った40代半ばの女性になったそれぞれを見れば、その歩んできた道のりが慮られる。
 その道のりは、著者の歩んできた道と、大きく隔たっていた場合もある。アーニャとの再会では、「31年ぶりに会った友だちに、そんなこと言わなくても」と思う場面もあるのだけれど、それは逆に著者がアーニャを、まだ「友だち」だと思っていることの証しなのかもしれない。

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闇の公子

書影

著 者:タニス・リー 訳:浅羽莢子
出版社:早川書房
出版日:2008年9月15日 発行 
評 価:☆☆☆(説明)

 本好きのためのSNS「本カフェ」で、少し前に話題になった本。

 英国の女性作家による「幻想文学」。英語にするとFantasyで、ハヤカワ文庫の分類もFT(ファンタジー)なのだけれど、日本語の「ファンタジー」という言葉ではしっくりこない。「幻想文学」が、この物語が持つ退廃的な怪しさと妖しさを表すのに適した言葉だと思う。

 主人公は、地底の王国に君臨する絶大な魔力と美貌を誇る妖魔の王、アズュラーン。彼は、地上に姿を現しては、災いの種をまき、気まぐれに人間の運命を弄ぶ。例えば、災いを招くと知っていて、地底界の宝でできた首飾りを地上にもたらす。また、自分を拒んだ娘への意趣返しに、娘の婚礼の夜に花婿をおぞましい怪物に変えてしまう。

 「退廃的」「怪しい」「妖しい」と修飾語を重ねてきたけれど、さらに加えると「エロティック」で「不道徳」だ。こんな物語が許されていいのか?と問うてみたいが、少なくとも私は許してしまった。目を背けることなく(背けられずに?)、最後まで読んでしまった。
 物語というものはかなり時代が下ってくるまでは、エロティックで不道徳なものもたくさんあったようだ。それは、アンドルー・ラングの「ももいろの童話集」を読んだ時にも思ったことだ。日本の民話を調べてみると、教訓的な改変が後世にかなり為されていることがすぐ分かる。

 そして、この物語を読んでいると「千夜一夜物語」が思い浮かんだ。短めの話が互いに関連しながら続く形式や、砂漠の国が登場する、エロティックなシーンがある、という理由もあるが、そういう明確な特徴ではなく、語りから感じる雰囲気がそう思わせるのだ。
 と思ったら「訳者あとがき」で、「これはリー版「千夜一夜物語」だ」と訳者の浅羽莢子さんの感想が披露されていて、そう意図して訳したことが書いてあった。さらには、著者本人も「千夜一夜」を意識したものだと認めているそうだ。
 英語の文体から「千夜一夜」を読みとって、私にも分かるように「千夜一夜」っぽく訳すなんて、すごい。職人技だ。翻訳という仕事は、そこまでできることなのだ。

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20代で読んでおきたい成功の教科書

書影

著 者:嶋田有孝
出版社:PHP研究所
出版日:2011年11月7日 第1版第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 著者の嶋田有孝さまから献本いただきました。感謝。

 著者は、「世の中には仕事に悩みや不安を抱えている方がとても多く、そういう方々に少しでも元気になってもらいたい」との思いから、若手のビジネスパーソン向けに、この本を書かれたそうだ。著者は私より3歳下、まぁ同年代と言わせてもらおう。私も、若い人たちに少しでも元気になってもらいたい。

 本書には、「ポジティブに生きていくためのものの見方、考え方」が、「プラス発想をしよう」「ストレスを乗り越えよう」など5章に分かれて、全部で40個紹介されている。それぞれに「下を向いて立ちすくんでいないで、前を向いて歩きだそうよ」という著者の励ましが滲む。

 その1つめは「事実の解釈を変えてみよう」。頬を縫うケガをした上司の例で、「悪い出来事だ。俺はついてない」と解釈するか、「少し上か下だったら、目か口をやられていた、俺はついている」と解釈するかの違いについて述べている。ケガをした「事実は変えられない」けれど、「解釈は自分で変えられる」というわけだ。
 ケガをしたのに「ついている」と思え、というのはかなり無理がある。同じように、プラスの意味に捉えるのが難しい出来事もたくさんあるでしょう?、と問いたいところだ。しかし、この問いへの著者の答えは明快だった「無理やりにでもプラスの解釈を考えてみる。それだけで十分」ということだった。そうした考えは、ほんの僅かかもしれないけれど、事態を良い方向へ進めると、私も思う。

 実はこの1つめの「事実の解釈を変えてみよう」は、その後の39個のほとんどに通じている。失敗した時に、失業した時に、悔しい目に会った時に、不満を感じた時に...それをどう解釈するか。また、心配ごとができた時に、目標が出来た時に、困難に直面した時に...どういう選択をするか。
 つまりは、1つの「事実」に対するアクションの「選択」の問題、ということだ。それは、それぞれの項目に付いているチャート図のほとんどが、「Aを選ぶかBを選ぶか」2つに分かれる図になっていることからも分かる。
 タイトルの「成功の教科書」や帯の「これであなたの将来は約束された!」という言葉はどうかと思うけれど、たくさんの方が本書を読んで、「要は選択の問題で、選択するのは自分なのだ」と気付いてくれれば、少し世の中が元気になると思う。

(2011.11.4 追記)
タイトルと帯の言葉は、出版社が決めたもので、著者の意思ではないそうです。そう言えば、「恋の六法全書」の著者の長嶺超輝さんのベストセラー「裁判官の爆笑お言葉集 」もタイトルが内容と合わないのですが、これも出版社が著者の意に反してつけたんだそうです。出版社の「売るための工夫」なんでしょうが、消費者を欺くようでいただけませんね。

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恋の六法全書 ガールズトークは”罪”ですか?

書影

著 者:長嶺超輝
出版社:阪急コミュニケーションズ
出版日:2011年10月5日 初版発行
評 価:☆☆(説明)

 著者の長嶺超輝さまから献本いただきました。感謝。

 突然だけれど皆さんに質問。「居酒屋でお酒を飲んだので、自分の車は駐車場に置いて、自転車に乗って家に帰った」、これは何かの法律違反になるか?(お酒を飲んだのは48歳の私)
 答えは「法律違反になる」。道路交通法の第65条「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない 」の「車両等」には、軽車両として自転車が含まれることが、第2条で定義されている。だから、お酒を飲んで自転車を運転すれば、道路交通法違反になる。

 実際には自転車の飲酒運転は、事故を起こしたり悪質なものだったりでなければ、今のところはほとんど取り締まられることはないので、知らなくても大きな問題にならない。でも「話のネタ」にはなる。本書は、そんな「話のネタ」になる「法律雑学」の本だ。
 「自転車の飲酒運転」は本書からの引用ではない。タイトルで分かる通り、本書は恋愛絡みの「法律雑学」の本。「同棲していた恋人と別れる時、彼の家から持ち出しても法律的に大丈夫なものは?」とか、「彼のケータイのメールをこっそりのぞき見るのは犯罪か?」といった、恋人の間でのかなり実践的(笑)な事例が載っている。

 ただの事例の列挙では味気ないので、喫茶店での女性3人の「ガールズトーク」に事例を乗せる、という読みやすさの配慮もされているので、スラスラと読める。事例も意外性のあるものが選ばれていた。だから悪くはない。
 ただし、この本を誰に勧めればいいのか?と考えて困ってしまった。恋愛でありがちな事例なので、上では「実践的」と書いたのだけれど、「実用的」ではないのだ。メールをのぞかれたことを知った彼氏は、法律違反だから怒るのではないし、法律違反ではないなら怒らないというものでもない。だから、これを知ったところで使えない。

 「話のネタ」としては使えそうで、著者も「それで十分」とおっしゃっている。ただ、これも難しい。女性が「彼の家から何なら持ち出しても大丈夫だと思う?」なんて言い出したら、聞いている方が引いてしまうし、男性から「彼のメールを見るということは法律的には..」なんて話をされて楽しい人も稀だと思う。おススメできる相手が分からなかったので、申し訳ないけれど☆2つ。

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だからテレビに嫌われる

書影

著 者:堀江貴文 上杉隆
出版社:大和書房
出版日:2011年9月25日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 証券取引法違反で2年6か月の実刑判決を受けて収監中の、ホリエモンこと堀江貴文氏と、「記者クラブ」を厳しく批判し報道のタブーにも切り込んできたフリージャーナリストの上杉隆氏の対談。帯によると「語り尽くした全11時間」だそうだ。堀江氏の収監や対談での話題から考えて、5月か6月に対談は行われたのだろう。

 自分たちに都合の悪い意見、方向性に合わないコメントを言う人を、「異質なもの」として排除するテレビ。自由な取材と報道を認めない「記者クラブ」。政治家の子弟を多く受け入れて、政治とグズグズの関係になってしまっているテレビ局。決して報道されない「放送利権」「電波利権」。政府が公開しない原発事故の実際。刺激的な話が次々と繰り出される。

 堀江氏はライブドアの社長であった頃から、挑戦的な物言いが目立っていたし、上杉氏は特に政治家を標的とした記事で、これまでに数多くの物議を醸している。だから、本書に書いてあることが全て「真実」だとは思わないし、それを公衆に明かしたので彼らを称えようとも思わない。
 そんなことは、恐らく彼らも望んではいないのだろう。大事なことは、本書の中で上杉氏が主張する「多様性のあるいろんな意見を許す社会」が望まれる、ということなのだ。「いろんな意見」には、自分に反対する意見も当然含まれる。

 著者2人については、ちょっとトンガリすぎている感じがして、私には受け入れ難いのだけれど、この「いろんな意見を許す社会」の主張には100%賛成だ。第2章「実は「言論の自由」がないテレビ局」に詳しいが、今のテレビは随分と狭量に感じる。テレビだけでなく、報道全体がそうで、それに引きずられて世の中が余裕を失っているように思う。
 失言とも思えない失言で閣僚を次々と辞任させて、何か不始末があった人を寄ってたかって叩く。こんなことが私たちにとっていいはずがない。本書が「テレビの意見なんか信用できない、これからは自分で判断する」と思うきっかけになるなら、おススメしたい。「ホリエモンが嫌い」な人にも「上杉は胡散臭い」と思う人にも。

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あやつられ文楽鑑賞

書影

著 者:三浦しをん
出版社:双葉社
出版日:2011年9月18日 発行 
評 価:☆☆☆(説明)

 本好きのためのSNS「本カフェ」のお友達の日記で知った本。
 著者はその作品「仏果を得ず」で、文楽の奥深い世界を、若手の大夫(文楽で情景やセリフを語る役)の目を通して、小説の形で垣間見せてくれた。本書では、同じことを文楽の劇場の楽屋への「突撃レポート」風のエッセイの形でやってくれた。「仏果を得ず」と合わせて読むといいと思う。

 著者はまず、三味線の鶴澤燕二郎(2006年に鶴澤燕三を襲名)さんの楽屋に行って、かなり面白い(どうでもいいような)質問をしている。「みなさんで飲みに出かけたりはするんですか?」とか。「楽屋の部屋割りはどうやって決めるんですか?」とか。しかし、その(どうでもいいような)質問が、思いがけず文楽の伝統を感じさせる答えを引き出す。

 そんな感じで、次の回は人形遣いの桐竹勘十郎さんのところへ行って、何と人形を持たせてもらっている。著者曰く「美少女との初デートで、思いがけずはじめての接吻までこぎつけた」ようなものだ。そしてまた、燕二郎さんのところへ、勘十郎さんのところへと、行き来して、後半では大夫の豊竹咲大夫さんにもお話を聞いている。皆さんご協力ありがとうございます。(と私までお礼を言いたいぐらい、文楽の演者の皆さんは協力的だった)

 そんな「突撃レポート」を挟むように、文楽の主な演目の解説がある。著者独自の視点から、登場人物にツッコミを入れながらのユニークなものだ。特に「仮名手本忠臣蔵」の章は、量的にも質的にも圧巻だった。これを読んで「仮名手本忠臣蔵」を観に行けば、何倍も楽しめることだろう。

 文楽に限らず「楽屋」というのは興味深いものだ。舞台の裏側を覗いてみたいということもあるが、演じている「人」のことを知りたい、というのも大きい。本書はその両方を満足させてくれた。「人」に興味があるのは著者も同じらしく、江戸時代の文楽の作者の人となりにまで想いを馳せている。それがまた思いがけず慧眼であったことが、巻末の「解説」に記されている。

 冒頭の(どうでもいいような)質問といい、この文楽作者の人となりといい、「思いがけず」良い結果を生んでいるんだけれど、これはもしかして著者には、ものすごい才能があるということなんじゃないだろうか?

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これはどうしようもないのでしょうか?その後

 9月19日に、「これはどうしようもないのでしょうか?」という記事で、私のブログの記事を盗用したブログ記事が多数見つかったことを書きました。1カ月経ちましたので、今回はその経過報告です。

 9月21日に、それぞれのブログサービスのプロバイダー(Seesaa、livedoor、ココログ、YAHOO!、BIGLOBE)に、記事が盗用されていることを告げて、削除依頼をしました。各社とも「著作権侵害の申し立て」のためのページがあり、こうしたことに対する窓口は整っていました。

 しかし私の申し立てから1カ月経っても、盗用した記事が削除されたのはlivedoorブログの記事だけでした。ココログからは「ブログの所有者に連絡した」という旨のメールが届きました。ただし「解決は当事者間で」ということでした。その他のプロバイダーからは何のアクションも返ってきませんでした。

 確かに「著作権侵害の申し立て」のページには、「以後は当事者間で」とか「何らかの処置を講じることを保証するものではありません」とか書いてあります。しかし「書いてあるからいい」というものでもないと思うんです。
 「当事者間で」としながら、相手の連絡先は伝えてきません。自分で探し出して自分でコンタクトをとれ、ってことなんでしょうか?こちらの連絡先は本名も含めて先方に伝える、というところもありました。権利を侵害された方が、こんなふうに苦労や心配をしなければいけない現状はおかしいと思います。

 プロバイダーにしてみれば、権利侵害だと申し立てられたからと言って、簡単には削除できないのでしょう。権利侵害の有無を判断できないし、削除したことでそのユーザーからクレームがつくことだって有りえます。そういうことかもしれません。
 しかし、「プロバイダー責任制限法」には、権利侵害を申し立てられた場合の免責が規定されているのです。それによると、そのユーザーに記事の削除(送信防止措置)を照会して、7日経っても同意しない申出がなければ、ブロバイダーは記事を削除したことによる損害賠償の責任を負わなくて良い、と定められています(第三条2項)。livedoorでは、この法律に則った手続きが行われて、盗用ブログの記事が削除されたわけです。他のプロバイダーで同じことができない理由が分かりません。

 3年前に同様のことがあった時には、速やかに処理されたので、今回もすぐに片付くだろうと思っていました。残念ながらそうならず、解決のメドさえ立っていません。切ないです。

自分たちの力でできる「まちおこし」

書影

著 者:木村俊昭
出版社:実務教育出版
出版日:2011年9月30日 初版第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 タイトルにある通り、本書は「まちおこし」をテーマとした本だ。例として冒頭に「人口5万人の地方都市・A市」のことが紹介されている。A市ではまず、「商店街活性化委員会」を、市長、市議会、会議所や近隣の大学などをメンバーにして立ち上げて、検討した政策を実行することで、中心部の商店街に人が戻るようになった。次いで、「企業誘致推進委員会」によって企業誘致にも成功、「温泉地域活性化委員会」では観光客の増加を果たした。

 一見して見事な成功例だ。しかし著者はこれを「失敗例」として挙げている。著者は、元市役所職員で、今は「地域活性化伝道師」として地方を飛び回っているらしく、さすがに地方の「実情」を一段深いところまで心得ていらっしゃる。実はA市のやり方はたくさんの地方都市で(私が住む街でも)行われているのだ。それでいて地方が(私が住む街も)一向に元気にならない。つまり著者の言うとおり、このやり方は「失敗」なのだ。

 著者の意見では、このやり方は「部分最適化」の方法で、街全体が活性化する「全体最適化」ではない、というところが問題なのだ。確かに中心部の商店街に人が集まっても、その商店街の人以外の大多数の住民には、特に良いことはない。商店街以外の場所で店を営む人にとっては、「害」しかない。市の貴重な財源をつぎ込むのなら、全体を見て「害より利の多い」施策が必要だ。

 本書には、こうした著者の考えを踏まえた「成功例」が18事例紹介されている。皮肉な話だけれど、読み終えて感じるのは「まちおこし」の難しさだ。著者が「成功例」として挙げた事例でさえ、「全体最適化」を自治体単位で実現している例はいくつもない。
 これは本書の問題点だと思うが、同時に大事なことを表していると思う。それは「「まちおこし」は小さな単位でやるべし」ということだ。本書の事例の中でも「全体最適化」と言えるのは、人口320人の集落や、多くても5千人弱の村や町だ。

 5万人や10万人、20万人といった地方都市では「全体最適化」はとても難しい。その場合はもっと小さな自治会などの単位で考えないとダメだろう。そのためには、そこに住んでいる人自身が中心になる必要がある。ここにタイトルの「自分たちの力でできる」という言葉が生きてくる。
 これは「自分たちの力でしかできない」ということでもあり、さらに換言すれば「自分たちがやらなければ誰もやってくれない」ということだ。紹介された成功事例よりも、このことの方が私には重要に思えた。

 この後は、書評ではなく、本書を読んで思い付いたことを書いています。取りとめもありませんがお付き合いいただける方はどうぞ

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(さらに…)

下町ロケット

書影

著 者:池井戸潤
出版社:小学館
出版日:2010年11月29日 初版第1刷発行
評 価:☆☆☆☆☆(説明)

 2011年上半期の直木賞受賞作品。今年の8月に早速WOWOWで三上博史さん主演でドラマになっている。

 主人公は佃航平、43歳。7年前に父親の死に伴って、家業の精密部品の工場「佃製作所」を継いだ。それ以前には、佃は宇宙科学開発機構で、ロケットエンジン開発の研究者をしていた。本書の冒頭は、佃が開発したエンジンを積んだロケットの打ち上げシーンだ。

 佃が社長を継いでから佃製作所は大きく成長した。売上百億円に少し欠けると言うから、並みの中小企業ではない。しかし、部品製造業の経営は取引先に大きく左右される。佃製作所も主要な納入先の方針変更によって、「わかってくれよ、佃ちゃん」と言われて、十億円を超える取引を停止されてしまう。
 その後も佃の受難は続く、銀行の融資を打ち切られたり、ライバル社から特許侵害で訴えられたり。足元の社員や家族も盤石とは言えない。一つ乗り越えたら次の問題が持ち上がる。それでも佃には寄って立つものがあった。それは「技術」と「夢」だ。

 「並みの中小企業ではない」のは、百億円近い売上だけではない。佃が寄って立つものの一つである「技術」がある。佃製作所は、水素エンジンのバルブシステムの特許を持っている。帝国重工という巨大企業が、巨額を投じて開発したシステムに先んじる最先端技術で、この技術がなければ帝国重工のロケットは飛ばない。起死回生の願ってもない話のようにも聞こえるが...ビジネスの世界は怖い。

 佃が寄って立つもののもう一つの「夢」は、彼を支えるが、同時に彼を苦しめ、彼に決断を迫る。面白かった。ちょっと甘めだけれど☆5つ。

 このあとは書評ではなく、ちょっと思ったことを書いています。お付き合いいただける方はどうぞ

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