終わらざりし物語(上)(下)

著 者:J・R・R・トールキン クリストファー・トールキン編
出版社:河出書房新社
出版日:2003年12月20日初版 2004年1月30日第3刷
評 価:☆☆☆(説明)

 トールキンが、ホビットの冒険や指輪物語を執筆、出版するに時に、膨大な背景世界を構想していた。その中で出版を目的に書きためた原稿をつないで、指輪物語の前史に当たるものを、息子のクリストファーが本にしたものが「シルマリルの伝説」。首尾一貫しないところもあり、読み辛いものだったが、それでもひとつの物語の体を成していた。
 本書は、さらに断片的に残っていた遺稿を、若干解説を加えつつも、断片は断片のまま収録したもの。序文にあるように、指輪物語の読者で、その歴史的背景の探求に関心がある人でなければ、大半の人には読むに値しない。映画The Lord of the Ringsを見ただけの人には、全くわけがわからないはず。この本は読者を選別する。
 私は、悪戦苦闘しながらも、指輪物語、シルマリルの伝説、ホビットの冒険他を読んできたし、歴史的背景にも興味があるので、さらに悪戦苦闘したが何とか読み切った。
 トゥオル、トゥーリンの話は面白かったし、第三紀のゴンドールとローハンの友情や、ガンダルフらイスタリの話は、好奇心を満たしてくれた。読んでいて歴史をひも解くような感覚が何度もした。そう、これは、それぞれは断片ながら、ひとつの世界の歴史を記録した、トールキン世界の歴史史料を集めたものなのだ。この本の読者は、もはや研究者だということか。
 実は、中つ国の歴史シリーズという12巻の書籍があるらしい。この上まだ12冊も。いったいトールキンは、本当に1つの世界の歴史を作ろうとしていたのではないだろうか。英語版なので躊躇しているが、日本語版の出版予定はあるのだろうか。

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