サロメ

書影

著 者:原田マハ
出版社:文藝春秋
出版日:2017年1月15日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 まず、タイトルの「サロメ」について。「サロメ」というのはアイルランド出身の作家オスカー・ワイルドが1891年に書いた、新約聖書の一節を元にした戯曲の名前。まずフランス語で書かれたが、3年後に英訳版が出版される。その挿絵にイングランド出身の画家オーブリー・ビアズリーのペン画が使われている。

 最初に「サロメ」についての説明を書いたのは、本書がこうした史実に基づいたフィクションだからだ。著者の原田マハさんはフリーのキュレーターで、同様の美術作品にまつわる虚実ないまぜになった作品がいくつかある。「楽園のカンヴァス」「暗幕のゲルニカ」。どちらもとても面白い。

 物語の大半は、オーブリー・ビアズリーの姉、メイベルの目を通して描かれる。オーブリーの絵の才能を誰よりも評価し、献身的に支える姉として。オーブリーがオスカー・ワイルドに出会い、評価される現場にも傍らで立ち会い、オーブリーがオスカー・ワイルドに魅入られていく様も、その目で見て心を痛めた。歓喜の瞬間を経て破滅へと向かう物語だ。

 表紙にオーブリー・ピアズリーその人が描いた「サロメ」の一場面の絵が使われている。オーブリーが描く絵には、物語の中で「微細」「緻密」「圧倒的」「豊穣」「異端」「狂気」などとたくさんの形容詞がついてる。実物を見て、それが意味するところが分かる。そして、物語自体もその絵のように妖しく破滅的な雰囲気が満ちている。

 上に書いた他の2作にも共通する特徴なのだけれど、本書には現代の研究者が登場する。オーブリー・ビアズリーとオスカー・ワイルドを、それぞれ研究する男性と女性。芸術家と研究者のそれぞれの時代の物語が交差する。今回は研究者の時代のパートが控えめだけれど、この構成の工夫は著者の持ち味となっている。

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