カフーを待ちわびて

著 者:原田マハ
出版社:宝島社
出版日:2008年5月26日 第1刷 2018年3月8日 第8刷 発行
評 価:☆☆☆☆☆(説明)

 原田マハさんのデビュー作。エッセイ「フーテンのマハ」で、このデビュー作に至るエピソードを紹介していて、がぜん興味が湧いて読むことにした。

 主人公は友寄明青(あきお)。35歳。沖縄県与那喜島で食料品も雑貨も文房具も扱う「よろずや」を営んでいる。午前9時半に店を開けて午後1時に昼食、2時から4時までは昼寝、6時には閉店。のんびりしたものだ。

 その明青の元に手紙が届く。「あの絵馬に書いてあったあなたの言葉が本当ならば、私をあなたのお嫁さんにしてくださいますか」。「あの絵馬」とは、数カ月前に明青が北陸の孤島の神社に納めた絵馬のことらしい。そこに明青は「嫁に来ないか。幸せにします」と書いた。

 その手紙の主を待って数週間。待ち続けることを恐れ、区切りをつけようと手紙を燃やした翌日、明青の元に本当に幸が現れた。白い花のような小さな顔、潤んだ大きな目、すっと通った鼻とふっくりとした唇。「でーじ、美らさんだ」

 物語は、明青と明青の家に住み込むことになった幸の暮らしぶりを描く。そこに、「裏のおばあ」や、明青の幼馴染、そのうちの一人が持ち込んできた、島のリゾート開発の話が、巧みに織り交ぜられる。

 ぐぅっと引き込まれる物語だった。背景に沖縄の島の青い海と空が見える。デビュー作にしてこの完成度。「日本ラブストーリー大賞」を受賞した作品だけれど、明青と幸の二人の関係は遅々として(というか全く)進まない。それでいて、気持ちが痛いほど伝わってくる。

 「楽園のカンヴァス」「暗幕のゲルニカ」「サロメ」「たゆたえども沈まず」など、「アートミステリー」作品が、キュレーターでもある著者の真骨頂。ところが、「フーテンのマハ」によると、小説家になるにあたって当初は「アート」を封印していたそうだ。そうして書いたのがこの作品。すごい。

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3つのコメントが “カフーを待ちわびて”にありました

  1. 日々の書付

    「カフーを待ちわびて」 原田マハ

    沖縄の小島を舞台とした、あたたかく、奇跡のようなものがたり。
    ガジュマルを渡る風が風吹き抜ける美しい島に飼い犬・カフーとともに暮らす明青。
    そんな明青のもとに見知らぬ女性・幸から「お嫁さんにしてください」と手紙が届く。
    最初、なにかの冗談かと思っていた明青だが、そのうちに会ったことも無い幸の訪れを待ちわびるようになる。
    やがて訪れた幸との奇妙であたたかな同居生活が始まるが、島のリゾート開発に伴う立ち退き問題や、周りの人間の無邪気な悪意によって、幸は明青の元を去っていってしまう。やがて幸が明青…

  2. 日月

    「カフーを待ちわびて」には続編にあたる作品があり、「花々」という南の島々を舞台にしたオムニバス小説の中で明青たちのその後が語られます。

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