編 者:アンドルー・ラング 監修:西村醇子
出版社:東京創元社
出版日:2008年7月25日 初版
評 価:☆☆☆(説明)
「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。
編者のアンドルー・ラングは、19世紀から20世紀初頭にかけて、世界各地の民話・昔話を収集再話した、英国の古典学者、民俗学者。よりすぐりの作品を子どもたちに提供するため、全12巻の童話集を刊行した。その童話集には、青、赤、緑、黄、....と色の名前が付けられていた。
本書「ももいろの童話集」は、東京創元社が刊行する、同じ色の名前が付いた12巻シリーズの5巻目になり、スウェーデン、デンマーク、シチリアなどの昔話が25編収録されている。それぞれの巻は、ラングの原書のすべてではなく、各巻より作品を選んで収録している。あまりに残酷なものや、差別的態度のもの、日本で入手しやすいものや日本の昔話などは、選から除外したそうだ。
世界の昔話を収集・再話したということだから、多くの話が1か所に勢ぞろいしていることによる資料的価値に意義がある。たとえば、並べて読んでみると、兄弟・姉妹では末っ子がしっかりして、ダメ兄貴は失敗する話が多いこととか、「~してはいけない」と言われると必ずそうしてしまうこととかが分かる。しかし、半ば安心して半ば飽きながら読んでいると、そういったパターンから逸脱している話もちゃんとあって、さらに興味深い。
もちろん、それぞれの話の面白さとか、展開の巧みさとか、込められたメッセージとか、評価したい点はいくつもある。しかし、逆に言えば、そういった小説を論評するような分析的な目で見ていると、批判したくなる部分も出てきてしまう。「それじゃぁ、元も子もないじゃないか」とか、「えっ、そんな終わり方でいいの?」とかいう話も1つや2つではない。
でも、そのことが本書の価値を左右するものではないはずだ。ある地域で語り継がれてきた話を、不都合があるからと言って面白くしたり、教訓的にしたりといった歪曲を行うべきではないのは自明なのだから。というわけで、今回は、個々の話についての評価はしないことにした。
物語が好きな人、子どもに聞かせる話のレパートリーを広げたいと思う人は、何色でもいいからこのシリーズ1冊を読んでみるといい。気に入ったならもう1冊、と増やしていけばいい。また、漢字にはすべてルビが振ってあるので、小学校低学年でも読める。本を読む年ごろのお子さんに贈るのもいい。
子どもは、いろいろなお話を聞いて、読んで、想像力や創造力、さらには生きる知恵などを身につけていく、そして大人よりも多くのものを吸収するのだと思うから。
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