著 者:伊坂幸太郎、山本幸久、中山智幸、真梨幸子、小路幸也
出版社:PHP研究所
出版日:2015年11月24日 第1版第1刷
評 価:☆☆☆(説明)
「幸せ」を描くのには、必ずしも「幸せ」な物語でなくてもいいのだな、と思った本。
本書は、伊坂幸太郎、山本幸久、中山智幸、真梨幸子、小路幸也の5人がそれぞれ「幸せ」をテーマに書いた短編を収めた短編集。「解説」によると、「名前に「幸」の一文字を持つ作家を集めて、幸せのアンソロジーをつくろう」という企画らしい。
伊坂幸太郎さんの「Weather」、主人公の大友君は、学生時代からの友人の清水の結婚式に出席している。清水には内緒にしているけれど、新婦は大友君が高校生の時に交際していた女性だった。山本幸久さんの「天使」、77歳のおばあちゃんのスリ師、福子が主人公。ある日「仕事」にでかけたショッピングモールで、福子自身が親子のスリグループに狙われる。
中山智幸さんの「ふりだしにすすむ」、主人公の29歳のりりこさんは、自宅近くのカフェで「ぼくね、きみの生まれ変わり」と声をかけられる。相手はでっぷりと太った60歳は超えてそうな老人。真梨幸子さんの「ハッピーエンドの掟」、主人公のアイコの家は母子家庭で、母親はキャバレーのホステス。先生は何かと心配してくれるけれど、アイコは今の暮らしが好きだ。
小路幸也さんの「幸せな死神」、主人公の帆奈は行きつけのバーで端正な顔をした「死神」と知り合う。その日いいことがあって、バーテンと乾杯したときに、思いっきりこぼしてしまった。それで、その場所にいた「死神」にウィスキーをかけて「召喚した」ことになってしまったらしい。
5編全部をそれぞれ少しだけ紹介した。でも物語の結末は、この紹介からはまず予想できない。ハートウォーミングで泣ける話、どんでん返しでゾクッとする話、切ない終わり方をする話...。「幸せ」の描き方にもいろいろとあるものだ。思わぬ方向に展開する物語を楽しんで読んだ。
「解説」で、執筆を依頼したときのそれぞれの作家さんの様子を紹介している。お見逃しなく。
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