39.小路幸也(バンドワゴン)

Happy Box

書影

著 者:伊坂幸太郎、山本幸久、中山智幸、真梨幸子、小路幸也
出版社:PHP研究所
出版日:2015年11月24日 第1版第1刷
評 価:☆☆☆(説明)

 「幸せ」を描くのには、必ずしも「幸せ」な物語でなくてもいいのだな、と思った本。

 本書は、伊坂幸太郎、山本幸久、中山智幸、真梨幸子、小路幸也の5人がそれぞれ「幸せ」をテーマに書いた短編を収めた短編集。「解説」によると、「名前に「幸」の一文字を持つ作家を集めて、幸せのアンソロジーをつくろう」という企画らしい。

 伊坂幸太郎さんの「Weather」、主人公の大友君は、学生時代からの友人の清水の結婚式に出席している。清水には内緒にしているけれど、新婦は大友君が高校生の時に交際していた女性だった。山本幸久さんの「天使」、77歳のおばあちゃんのスリ師、福子が主人公。ある日「仕事」にでかけたショッピングモールで、福子自身が親子のスリグループに狙われる。

 中山智幸さんの「ふりだしにすすむ」、主人公の29歳のりりこさんは、自宅近くのカフェで「ぼくね、きみの生まれ変わり」と声をかけられる。相手はでっぷりと太った60歳は超えてそうな老人。真梨幸子さんの「ハッピーエンドの掟」、主人公のアイコの家は母子家庭で、母親はキャバレーのホステス。先生は何かと心配してくれるけれど、アイコは今の暮らしが好きだ。

 小路幸也さんの「幸せな死神」、主人公の帆奈は行きつけのバーで端正な顔をした「死神」と知り合う。その日いいことがあって、バーテンと乾杯したときに、思いっきりこぼしてしまった。それで、その場所にいた「死神」にウィスキーをかけて「召喚した」ことになってしまったらしい。

 5編全部をそれぞれ少しだけ紹介した。でも物語の結末は、この紹介からはまず予想できない。ハートウォーミングで泣ける話、どんでん返しでゾクッとする話、切ない終わり方をする話...。「幸せ」の描き方にもいろいろとあるものだ。思わぬ方向に展開する物語を楽しんで読んだ。

 「解説」で、執筆を依頼したときのそれぞれの作家さんの様子を紹介している。お見逃しなく。

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イエロー・サブマリン

書影

著 者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2020年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 幻の作家の話で家族が盛り上がるのが、微笑ましく羨ましく感じた本。

 「東京バンドワゴン」シリーズの第15弾。東京の下町にある古本屋&カフェの「東京バンドワゴン」を営む、大家族の堀田家の1年を描く。前作「アンド・アイ・ラブ・ハー」の続き。(実は16弾の「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」を先に読んでしまった)

 本書のシリーズは毎回、ミステリーと人情話が散りばめられてエピソードが重ねられる。今回は後半に少しだけ荒っぽいことがあったけれど、全般的に落ち着いた人情話だった。シリーズ通してその傾向はあるのだけれど、意外な人の縁がつながっていく。

 第1章にあたる「夏」の章で、東京バンドワゴンにやってきたお客さん。毎日来る近所の神社の神主さん以外に3人。一人は近所の建設会社の社長。解体予定の建物に血まみれの本が落ちていたとか。二人目は以前は古本屋をやっていたという男性。段ボール箱で3箱の持ち込み。三人目は文学部に通う女子大学生。幻の作家とも言っていい画家と小説家の希少な本を探している。

 いかにも剣呑な血まみれの本のことはともかく、なにげない他の2人の古書店の客も、この後の物語につながって、けっこう大事な役割を一人は担っている。この人は、またいつか別の物語にも登場してくるのだろうなと、それを期待させる気になる(というか、このシリーズにピッタリな)人だった。

 かんなちゃんがスゴイ。研人くんが結婚した。

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グッバイ・イエロー・ブリック・ロード

書影

著 者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2021年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 藍子さんの「怖くはなかったわ」というセリフにシビれた本。

 「東京バンドワゴン」シリーズの第16弾。いつもは東京は下町の古本屋&カフェの「東京バンドワゴン」が舞台で、そこを営む堀田家の面々の活躍を描いているけれど、今回は舞台をイギリスに移した番外長編。ロンドン警視庁の事務官ジュン・ヤマノウエが活躍する。

 高校を卒業してプロミュージシャンになった研人くんたちのバンド「TOKYO BANDWAGONN」が、レコーディングのためにイギリスにやってくる。レコードスタジオの近くには、研人くんの伯母にあたる藍子さんが、夫のマードックさんとそのご両親と一緒に暮らしている。

 物語は、ジュンが上司の警部補と一緒にマードック家を訪ねたあたりから動き始める。マードックさんが、絵画の密輸事件の事情聴取で任意同行に応じて
出かけたまま行方不明になってしまう。警察に連絡したら話を聞き終わって帰ったというのに、翌日になっても帰ってこない。連絡もない。電話もつながらない。

 面白かった。このシリーズは、ミステリーと人情噺を組み合わせた本編もなかなかいいのだけれど、番外長編が新鮮な躍動感があっていい。第4弾「マイ・ブルー・ヘブン」は、いつもは語り担当の、堀田家の大ばあちゃんのサチさんの若いころを描いている。ちなみにサチさんはすでに亡くなっているのだけれど、この世に留まって皆を見守っている、という設定。

 何がよかったかと言うと、サチさんが物語に絡んでくるとことだ。セリフもたくさんある。それには新登場のジュンの存在の意義が大きい。彼女はサチのような人が「見える(し話せる)人」なのだ。これまでにも一度登場した人物の再登場を繰り返して、新たな物語を生み出してきたシリーズなので、ジュンの今後の登場とサチさんの活躍が楽しみだ。

 そういえば「マイ・ブルー・ヘブン」も、サチさんが活躍する物語だった。私はサチさんの活躍が楽しみなのかもしれない。ファンなのかもしれない。

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アンド・アイ・ラブ・ハー

書影

著 者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2019年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「フィクション」と知った上で、筋の通った生き方をしていれば、支えてくれる人にも恵まれるのだなぁ、と思った本。

 「東京バンドワゴン」シリーズの第14弾。東京の下町にある古本屋&カフェの「東京バンドワゴン」を営む、大家族の堀田家の1年を描く。前作「ヘイ・ジュード」の続き。

 いつもと同じ、大小のミステリーと人情話が散りばめられている。前作のレビューで「メンバーの成長や新しいステージへの踏み出しが主に描かれる」と書いた。今回は、主に描かれたのは「別れ」だった。

 上に「大家族」と書いたけれど、堀田家(と隣のアパート)には今は13人が住んでいる。最年長は堀田家当主の勘一で86歳、最年少はひ孫のかんなと鈴花で6歳の4世代。家族以外にも何人かが「家族同然」として同居している。その他に、それぞれの仲間や堀田家を慕って来る人々が大勢出入りする。

 また「別れ」と書いたけれど、この大勢の中の2人が旅立つ。一人は永久の別れに、一人は自分で終の棲家を決めてそこに。いつものように、ミステリーとその解決は小気味よく、人情話はしみじみとしていて、とても心地いいのだけれど、私はこの2つの別れが特に心に残った。

 かずみさんが泣かせる。あなたサイコーです。

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つむじダブル

書影

著 者:小路幸也 宮下奈都
出版社:ポプラ社
出版日:2012年9月14日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 子どもには違いないけれど10歳の少女は侮れないな。そう思った本。

 小説なのに二人の共著、しかも交互に執筆するという異色の作品。

 主人公は鎌倉に住む小学4年生のまどかと、まどかの兄で高校2年生の由一の兄妹。まどかのパートを宮下奈都さんが、由一のパートを小路幸也さんが、それぞれ担当して交互に執筆。設定や名前(だけ)を決めて、宮下さんのまどかのパートから始めて、文芸雑誌に順次掲載したそうだ。

 まどかと由一の小宮家(小路の「小」と宮下の「宮」)は、兄妹の他に、まどかの話をニコニコして聞いてくれる優しいお父さん、美人でお料理やお菓子づくりが上手なお母さん、接骨院と柔道教室を開いている元気で明るいおじいちゃん、の5人家族。

 まどかは柔道教室に通っていて柔道大好き少女。しかもなかなか強いらしい。由一はバンドでキーボードとボーカルをやっている。しかもイケメン。バンドは人気で、定期的にライブを開いているスタンディングで40人の下北沢のライブハウスは、メンバーが売らなくても満員になる。絵に描いたような「幸せ家族」。でも、この家族には秘密がある。

 面白かった。真っ白な布に小さなシミが付くように、幸せ家族に気がかりな出来事が一つ、二つと起きる。何気ない出来事や一言が、後になってその意味が深まる。まどかと由一のパートの切り替えに、メリハリはあるけれど、物語の流れはスムーズで、二人の作家さんが別々に執筆しているとは、とても思えない。

 心に残った言葉。お母さんがまどかに言った言葉。

 おかあさん、話したくないことがあるの。だから、聞かないで

 物語が終わっても、小宮家が幸せ家族であることは変わらない。

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ヘイ・ジュード

書影

著 者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2018年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「東京バンドワゴン」シリーズの第13弾。

 前々作の「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」の続き。東京の下町にある古本屋&カフェの「東京バンドワゴン」。を営む堀田家の1年を描く。

 本書のシリーズは毎回、ミステリーと人情話が散りばめられてエピソードが重ねられる。時には、堀田家の存亡に関わる事件や、親しい人たちが抜き差しならない窮地に陥ることもある。ネタバレになるけれど、今回はそういった方面の大立ち回りではなく、メンバーの成長や新しいステージへの踏み出しが主に描かれる。

 例えば、当主の勘一の曾孫である花陽は医大を受験、花陽の母である藍子は夫の英国人のマードックさんとある決断を。堀田家を物心ともにサポートしてきたIT企業の社長の藤島さんは、高名な書家だった父が亡くなって、実家の後継者に。

 13巻、年に1回のペースで続いてきたシリーズだから13年。物語の中では7年の時間が流れている。元々大家族で、大勢の出入りもある堀田家だけれど、今回は多くの人に異動や決断があって「節目」を感じる。前々々作「ヒア・カムズ・ザ・サン」あたりから成長著しい研人くん(勘一の曾孫)が、さらに存在感を増した。

 最後のシーンで、本書のタイトルでもある、ビートルズの「ヘイ・ジュード」が歌われる。その歌詞を思い出すと、心に染み入る。

 Then you can start to make it better.(そうすれば、きっと良くなるから)

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ラブ・ミー・テンダー

書影

著 者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2017年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「東京バンドワゴン」シリーズの第12弾。

 今回は、本編からずっと時代を遡って昭和40年代。舞台の古本屋「東京バンドワゴン」の当主で、本編では80代の堀田勘一が40代、その息子でロックスターの我南人はまだ20代だけれど、バンドデビューして少し経っていて、すでに若者に人気のバンドになっている。

 本書では、我南人と後に妻となる秋実の出会いを描く。本当に最初の出会いの場面は「フロム・ミー・トゥ・ユー」で、秋実さんの語り口で描かれている。今回はまさにその場面から始まって、その後の物語を描く。いつものように堀田家には事件が持ち込まれる。そしていつものように鮮やかに(多少強引に)事件を解決する。

 昭和40年代のテレビというと、アイドル歌手が人気になりだしたころで、本書の事件も、アイドルと芸能界やテレビ業界が絡んだものだ。あの頃のアイドルは、一般の人々からすると今よりももっと遠い存在だった。でも、誰かの友達だし、一人の若者として恋もすれば悩みもする。そういう話。

 「シリーズ読者待望」の秋実さんの物語、しかも長編。本編では、秋実さんは、シリーズが始まる数年前に亡くなったことになっていて、誰かの思い出としてしか語られない。その思い出の中で「堀田家の太陽」とまで言われているのに、エピソードはもちろん、どういう人だったのかも分からない。

 それが今回、長編でたっぷりと紹介された。まだ高校生なのだけれど、こんな芯の通った魅力的な人だったとは。登場のシーンからすでに惹きつけられる。その時の我南人もカッコいいし、そこに気が付く秋実もカッコいい。(すみません。ちょっと気持ちが高ぶってしまいました)

 私は「フロム・ミー・トゥ・ユー」のレビュー記事で、「秋実さんの物語が読めて、私は大満足だ」と書いた後で、「更なる欲が出て来た」と続けて、「長編にならないかなぁ」と書いている。その希望が叶った形で、また「大満足」だ。「更なる欲」も、また出てきてしまったけれど...。

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2030年の旅

書影

著 者:恩田陸、瀬名秀明、小路幸也ほか
出版社:新潮社
出版日:2017年10月25日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 新年の1冊目ということで、未来のことを考えてみようと思って、本書を選んだ。

 本書は2030年の日本の姿を、8人の作家さんがそれぞれ描いたアンソロジー。恩田陸さん、瀬名秀明さん、小路幸也さん、支倉凍砂さん、山内マリコさん、宗田理さん、喜多喜久さん、坂口恭平さん。恩田さんと小路さんは、私にとってお馴染みの作家さんだけれど、他の方は多分初めて。

 どれも短い中で展開の上手い物語になっていて面白かった。2作品だけ紹介する。

 1つ目は恩田陸さんの「逍遥」。ロンドン郊外に集まった3人の男性の話。そこでちょっとした事件がらみの、落し物の時計を探す。「集まった」と言っても、実はRR(リモート・リアル)という技術を使っていて、一人はマレーシア、一人は香港に実体がある。物に触ることもできるし、その場所では他の人からも見える。

 「他の人からも見える」となると、同時に2か所に居るようなものだから、アリバイなんて作り放題で、こんな技術が実現したら、犯罪捜査は大変だ。

 2つ目は山内マリコさんの「五十歳」。老齢の両親を助けるために帰郷した五十歳の女性の話。帰郷した時にはピンピンしていた両親があっけなく亡くなり、今は実家で一人暮らし。市の嘱託職員として、高齢者をショッピングモールや病院に送迎する仕事をしている。その日は新人を研修として、仕事に同行させる。

 予備校で英語を教えていたけど、少子化のあおりで閉校、その後に始めた英会話教室も、生徒が集まらずにクローズ。自動翻訳の機能が飛躍的に向上してわざわざ英語を勉強する人がいなくなってしまった。この経歴に「これはたぶん確実に起きる未来だ」と思った。

 2030年というと、今から12年。時代の変化が激しいとは言っても、まったく予想できないというほど先でもない。本書でも、AIやVRといった技術の進歩と、少子高齢化といった社会の変化という、現在既にみられる方向性が共通して題材になっている。

 帯に「日本のアカルイミライ」と書いてあるけれど、明るいとばかりは言えない。でも、このくらいの未来なら「まずまず良いシナリオ」だと思う。

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ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード

書影

著 者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2016年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「東京バンドワゴン」シリーズの第11弾。

 舞台は、東京の下町にある古本屋&カフェの「東京バンドワゴン」。前作の「ヒア・カムズ・ザ・サン」の続き。「東京バンドワゴン」を営む堀田家の1年を描く。

 いつもと同じ、大小のミステリーと人情話が散りばめられている。ミステリーの方は、東京バンドワゴンの蔵に眠る「呪いの目録」を探る男、創業者の堀田達吉と名門女子大の知られざる関係、幼稚園のお友達の家に出る幽霊、等々。

 人情話の方は、お隣の今は更生したかつての不良少年と昔の仲間の話、仕事一筋に生きた翻訳家と娘の関係、還暦を過ぎたロックミュージシャンの決断、亡くなった姉への思慕を抱き続ける青年実業家、等々。

 シリーズの中で時々ある大立ち回りも今回はあった。なんと、英国の秘密情報部が、王室の秘密が書かれた古書を奪還しに、東京バンドワゴンに現れたのだ。それに対して堀田家が打った一手がすごい。当主の勘一が切った啖呵がまたカッコいい。

 前作のレビューで「今回の一番の主役」と言った研人くんは高校生になった。ミュージシャンとしても人間としても男としても、今回も一回りも二回りも成長した。

 単行本の第1刷には、初回限定特典として、語り手のサチさんの初七日を描いたショートストーリー「夢もうつつもひとつ屋根の下」がついている。

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ヒア・カムズ・ザ・サン

著 者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2014年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「東京バンドワゴン」シリーズの第10弾。

 舞台は、東京の下町にある古本屋&カフェの「東京バンドワゴン」。前作の「オール・ユー・ニード・イズ・ラブ」の続き。「東京バンドワゴン」を営む堀田家の1年を描く。

 今回も、大小のミステリーと人情話が散りばめられている。ミステリーの方は、白い影が見えるとかすすり泣きが聞こえるとかの幽霊騒ぎ、近くの区立図書館に古書が置かれるという謎の事件、宮内庁からの招かざる客、等々。

 人情話の方は、ご近所の青年の恋愛がらみの騒動や、以前に堀田家に救われたかつての不良少年(今は一児の父)の話、万引き少年の更生の機会、等々。それから、今回は少し悲しい別れもいくつかある。

 前作のレビューで「子どもたちの成長が楽しみになってきた」と書いたけれど、今回はその成長をはっきりと感じることができた。高校2年生の花陽ちゃんの啖呵がよかった。そして、登場回数は多くなくても、今回の一番の主役は、中学3年生の研人くんだ。何とも甘酸っぱいことになった。

 このシリーズのタイトルは、第1作を除いてビートルズの曲名(第3作「スタンド・バイ・ミー」はジョン・レノンによるカバー)。これまではその巻のイメージに「何となく合っている」感じだった。今回は、ストーリーにうまくはまっている。

 Here comes the sun, and I say It’s alright. ♪

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