6.経済・実用書

仕事頭がよくなるアウトプット勉強法

書影

著 者:増永寛之
出版社:サンマーク出版
出版日:2009年3月25日初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 株式会社ライブレボリューション様から献本いただきました。感謝。

 本書は「ライブ~社」の社長が、自身の経験をもとに「仕事で成果を生み出せる人」(著者はこういう人を「仕事頭のいい人」と呼んでいる)になるための色々を綴ったものだ。著者の会社はモバイルの広告代理店業をメインに急成長している。つまり、本書には成功の裏付けがあるわけだ。成功のただ中にある人の話は自信と勢いがあって、清々しい感じがする。
 自信があるだけに曖昧さがなくて、デキるヤツはこうするけれど、こんなのはダメなヤツ、と切って捨ててしまうような感じがした。そのためか、私にはとても共感できる部分と受け入れられない部分に分かれた。

 共感できる部分は、タイトルの「アウトプット勉強法」をはじめとして全編に通底する、アウトプット(成果)に重きを置いたものの考え方だ。例えば、いつか必要になった時のために英語を勉強するのはインプットに重点を置いた考え方だ。そうではなくて、今の仕事で使うこと(アウトプット)を前提にした勉強を行え、というわけだ。
 また、誰かに報告をすることを前提に日々の活動を記録すると、「記録に書ける活動をしなくては」という気になって活性化につながる、という話も「なるほど」と思う。こちらは、アウトプットが良い意味でプレッシャーになっている。その他、ライブレボリューション式「フセン術」や「打ち出の小槌」の話は良かった。ビジネスに携わる方にはオススメだ。読む価値があると思う。

 受け入れられない部分は、歴史小説とビジネス小説以外のフィクションを「現実逃避本」で経営者には悪影響としたことだ。これは意見の違いであり、正しいか間違いかの問題ではないので「私は違うと思う」とだけ言っておく。
 そうそう、この本は「仕事で成果を生み出す」ことのみに目的が置かれている。その他のこと、例えば家族との暮らしなどは考慮されない。仕事のジャマになればマイナス要素でさえある。著者自身もそういう考えをお持ちらしい。家族や子供がいて事情があっても、早朝勉強会に来られない人は「意識の低い人」という評価をされている。だから「ワーク・ライフ・バランスを考えて」という人には合わないだろう。
 それでも著者が「「経済合理性」や「スキル」といったものがすべてを支配しているとは限らない」と考えておられることに安堵した。もっとも、著者の場合はこれも「人に助けてもらえる「かわいげがある人」になる訓練」という文脈で出てくるのだけれど。

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Eコマース成功の条件

書影

編  者:Eコマース戦略研究所
出版社:日本経済新聞出版社
出版日:2008年12月12日 1版1刷
評 価:☆☆☆(説明)

  本書は楽天市場のショップ・オブ・ザ・イヤーを受賞した3つのお店「桃源郷」「アンジェ」「北国からの贈り物」のそれぞれの経営者が、ネットショップで成功する条件を伝授するものだ。「集客方法」「キャッチコピー」「ページデザイン」など、11の項目に分けられている。タイトルは「Eコマース~」となっているが、ネットショップ、つまり「Eコマース」のうち「B to C」の分野がテーマだ。

 本書によると、ネットショップ専門会社として利益が出ている企業は1%未満なのだそうだ。そして本書は残りの99%の「利益が出ないネットショップ」の経営者らのために書かれているわけだ。
 私は「経験は最大の教師」だと思う。その観点で言えば、著者の3人は、利益が出るのは1%という世界で、現在のところ成功を収めているのだから、その言葉には有益な得難い情報が含まれているに違いない。ネットショップで利益を出したいと願う方々は、本書から何かヒントを見つけることができるだろう。

 ただ、残念なこともある。著者の方々にはもっと自分の経験を話して欲しかった。「経験は最大の教師」だと思う私は、生の経験の中にこそ重大なヒントがあると思うのだ。それなのに、書かれていることにはネットショップ一般のことや、「例えば○○を売る店なら」という架空の話が多い。
 経験から得たノウハウには、個々の事例特有のデコボコやキザキザしたものがあるはずだ。それを一般化する過程で、そうした大事なことが抜け落ちてしまう恐れは高い。カドの取れた丸っこい話は、飲み込みやすいかもしれないが、引っ掛かりがなくなってしまう。
 まぁ、機密の問題や広く受け入れられるようにという配慮があるのだろう。それでも、「こうしたらダメだったけど、こう変えたらうまく行った」という実際にあった話の方が、ためになるように思うがどうだろうか?その点で言えば、「北国から~」のチーズケーキの販売の話が終わり近くになってあるのだが、これはとても参考になった。

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アンガー・マネジメント

書影

著 者:安藤俊介
出版社:大和出版
出版日:2008年10月1日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 著者の安藤俊介さんからお声をかけていただいて、出版社の大和出版さんから献本いただきました。感謝。

 アンガーマネジメントとは、本書によると、「怒り」に正しく対処することで健全な人間関係を作り上げる知識・技術を習得する、ということだそうだ。「怒り」は感情の中でもとくにマイナスの結果を引き起こす原因となる、つまり怒りのままに行動すると、自分にとっても周囲にとっても良い結果は生まないから、怒りに操られるのではなく、怒りをコントロールしましょう、ということだ。
 私は、自分では怒りやすい方ではないと思う。しかし、怒った時にはかなり高いレベルに到達することがある。我が家の壁には、私がつけた拳の形のへこみがあるぐらいだから。絶対に人に手を出してはいけないと思っているので、壁に犠牲になってもらった。

 本書は、怒りを分析することから始まる。あっという間に頂点に達する私の怒りも、分解すると3段階からなるそうだ。(1)出来事に遭遇、(2)出来事の意味付け、そして意味付けの結果、許せないものであれば(3)怒りの発生、という具合だ。
 だから、誰かの行いの結果である(1)だけでは私を怒らせることはできない、(2)(3)という私の行いが私を怒らせている。つまり、私の怒りは私自身が選択したものであって、その選択の責任も私にあるのだ。いや参った、イタイところを突かれた思いだ。誰だって怒っている人は、「誰かのせい」で怒らされた、と思っているだろうから。

 この怒りの発生までの3段階の分析は、自分に反省を促すだけではなくて、これをさらに追及することで「怒らない」ためのテクニックが導き出される。本書ではそれらが具体的に紹介されている。今すぐ使える方法から、長期的に取り組むものまでいろいろあり、詳しくは読んでもらうしかないが、想像するにその効果は劇的だと思えるものもある。
 ただ欲を言えば「怒り」のエネルギーを積極的に活用する方法はないのか?と思う。本書は、ほぼ全編が「怒らない」ことに主眼が置かれている。「「怒り」をプラスに生かす視点」という項目があるのだが、プラスに生かす方法は書かれていない。代わりに「怒らない」ことで得られるプラス面が大きいということが強調されている。まぁ、発想の転換ということかもしれないが。

 「欲を言えば」はあるにしても、真面目な良い本だと思う。世の中全体が他者に対して不寛容になっているように感じる。こうした技術が広く普及して「大人のたしなみ」のようになれば、多くの悲劇が未然に防げるだろう。そのためになら、この本が多くの人の手に渡ると良いと思う。だからオススメだ。

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予想どおりに不合理

書影

著 者:ダン・アリエリー 訳:熊谷淳子
出版社:早川書房
出版日:2008年11月21日初版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。早川書房さんのプルーフ版(簡易製本の見本)でいただきました。

 著者はデューク大学の行動経済学の教授で、MITのメディアラボにも籍を置いている。不肖私は20数年前に経済学を学んだ者だが、「行動経済学」という研究分野のことを知らなかった。
 古典的な経済学では「人は合理的に行動する」ことを前提に理論が構築されている。しかし、現実を見ると人の意思決定は合理的ではない。必要ではないものを買ってしまうことの何と多いことか。そこで行動経済学は、人は合理的に行動するという前提をなくし、いわば心理学の見地を取り入れ、人の振る舞いを基礎に置いた経済を研究するものだそうだ。

 まずは、本書にあるちょっとした実験を紹介。日本でもハロウィンの行事が認知されるようになってきたが、著者がハロウィンの日に家にきた子どもに仕掛けた実験(イタズラ?)だ。キスチョコを3つ渡してこう言う「この他に、小さいスニッカーズをもらうのと、キスチョコ1個と交換に大きいスニッカーズをもらうのとどっちがいい?」
 小さいスニッカーズは約30g、大きいのは約60g、キスチョコは約4.5gだ。合理的に考えれば、大きいスニッカーズとの交換が得策だ。でも..この子は一旦もらったキスチョコを手放すのが惜しかったのか、小さいスニッカーズを選んだ。「予想どおりに不合理」だ。
 「子どもだから..」という理由付けをしてしまいがちだが、そうではない。比較のためにやった他の実験では子どもたちは、ちゃんと合理的な判断ができた。そして、何よりも同じような実験を大人(MITの学生が被験者になることが多い。頭の出来は保証付きだと言って差支えないだろう)を対象にしても結果は同じく不合理だ。そんな実験の数々が本書の中にはあふれ返っている。

 実を言うと本書で紹介されている実験結果は、読者にとっても「予想どおり」だ。何となく普段の生活で感じている通りのことで「まさかそんな!」というものはなかった。しかし私は、本書が優れて示唆に富む本だと思う。
 それは、私たちが思う「感じ」を本書はキチンと実験で証明し、その理由を分析しているからだ。理由が分かればうまく利用ができる。もっと大切なのは対策ができることだ。世の中には不合理な行動の結果の争いや悲劇も数多くある。著者はその対策にもいくつか言及しているが、実現することを希望する。

 余談だが、著者は2008年のイグ・ノーベル賞の医学賞を受賞。受賞理由の「高価な偽薬は安い偽薬よりも効果が高いことを証明」に関連する実験も本書で紹介されている。

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この国の経済常識はウソばかり

書影

著 者:トラスト立木
出版社:洋泉社
出版日:2008年9月22日初版
評 価:☆☆☆(説明)

 本書は、今の日本の社会のありようを様々な視点から、実に見事に活写している。しかも視点の取り方がユニークだ。まぁ、著者はちょっとひねくれたところのある人なのだろう。しかし「ユニークだ」ではあっても、「間違えている」のではない。「なるほど!」と思わせる説得力は十分だ。

 一例として、「会計ビッグバンが家族に与えた影響」というのを紹介する。「会計ビッグバン」というのは、10年ほど前に日本の企業会計に取り入れられた会計基準の大きな変更を指し、ひとつの特徴に時価会計の導入がある。
 企業が時価会計の考え方を、人材の評価にも取り入れるとどうなるか?「あなたの価値は今いくら?」と問うわけだ。そして、正社員は昇給に見合った価値(能力)を向上させないと「含み損」になりうるから、取り換え可能な非正社員の活用に走る、という具合。
 まだまだある。男女の仲でも、かつてはお互いに相手の将来を何となく現在の価値より豊かに感じることができた。それが、時々に厳しい評価をするのでは、若者は経験も財力もない今現在の価値で向き合うことになる。いや、このご時世では将来は不透明で、今より差し引いて考えることもある。結婚しようという時に、これはつらい。

 また、年長者ら「古い世代」の「記憶」によって政策が決定される、という指摘はその通りだと思う。政治家など政策決定者が経験した「記憶」がない問題は、優先順位が低いしやってもトンチンカンなものになってしまうのだ。就職できない、結婚できない若者の問題。子どもを産み育てづらい社会。「古い世代」はこうした問題に遭遇していない。これからの未来を担う人の問題なのに、解決の兆しさえないのは、そういう理由なのだ。

 この他にも、医療福祉、環境、国家財政、経済政策…など、数多くの問題が論じられていて読みごたえもあって、オススメだ。
 最後にひとつ。本書は今年の9月に出版されたもので、執筆はそれより前だ。しかし、この10月に入って一気に進んだ、米国を震源とする現在の経済危機が端的に予測されている。そして著者が描いてみせたこの国の行く末は...。本書の欠点をあげるとすれば、明るい気持ちになれないことか?

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お客をつかむウェブ心理学

書影

著 者:川島康平
出版社:同文館出版
出版日:2008年7月25日初版
評 価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 本書は、「ウェブ商人」を名乗る著者が、モノを売るウェブサイトの工夫の数々を紹介したものだ。「ハロー効果」「ザイオンス効果」などの、50個の心理学の知見を巧みに活用して、お客の心理を読んで「注文」ボタンを押させるテクニックが満載だ。
 50個の心理学用語がそれぞれ4ページの章建てになっていて、全部の章で、事例を交えた用語の解説と、それをウェブに落とし込む方法の例示、という同じ構成になっている。何ともまじめで親切な本だ。読みやすさの点からも評価できる。

 例えば「バンドワゴン効果」。これは、行列ができているお店に人気が集まるように、多くの人に支持されている(と感じる)ものに惹かれる現象のこと。バンドワゴンとは、パレードの先頭を行く楽隊車のことだ。
 これをウェブに落とし込むと、セミナーの告知広告なら、講師のアップの写真だけでなく、過去のセミナーの参加者の後頭部がたくさん写っている写真を載せる、となる。「こんなにたくさん人が来ているのなら、いいセミナーなんだろう」と、思ってもらえることを狙っているわけだ。
 別に取り立てて目新しいことはないように思うかもしれない。しかし、レストランのウェブサイトなどを見たらどうだろう?きれいな(無人の)店内の写真が載ってはいないだろうか?「静かで落ち着いた雰囲気」が売りならそれも良いが、そうでなければ賑わいのある写真が1枚あってもいいように思う。
 ちなみにレストランでは、客の入りの少ない時間帯は、窓際に案内することが多い。客が誰もいないと入りにくいから、というのが理由らしい。「バンドワゴン効果」という用語を知らなくても、レストランは本業ではそういったことを知っているのだ。

 敢えていくつか気になったことを言わせてもらう。1つは些細なことだが「サブリミナル効果」の紹介が不十分なこと。「アメリカの映画館で実際にあった有名な話」として、(確かに有名なコーラとポップコーンの)エピソードが紹介されている。しかしこの実験は後に、実験者自身がデータが不十分だったと告白しているので、実際にあった、と言い切るのはどうかと思う。まぁ、その後の解説には影響しないのだけれど。
 もう1つは、「ウソ」に対する許容度が、私とは少し違うと感じること。コミュニティサイトへお客のフリをして書き込むとか、玄米の紹介で(事実のあるなしは関係なく)「健康診断で医者に良いと言われた」と書いた方が効果的だとか。私はこれらはウソ、不誠実だと感じる。
 著者がいる「売れてなんぼ」の世界では許容範囲なのだろう。こんなことを言う私が甘チャンなのかもしれない。もう一つ言えば、この本の基ネタはセミナーらしい。口頭で言われる分には、私も抵抗なかったかもしれない。
 しかし、50個の用語が全部とは言わないが、相当数は役に立つし、ウェブサイト以外でも応用可能だ。だから基本的にはオススメの本だ。おいしい魚を食べていたら、小骨がノドに刺さったようなモノ。魚のおいしさが変わるわけではない。

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楽して成功できる 非常識な勉強法

書影

著 者:川島和正
出版社:アスコム
出版日:2008年9月12日発行
評 価:☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 本書は、タイトルのとおり「楽して成功しよう」というコンセプトの本である。帯には、「勉強しないで」有名大学に入学、「努力しないで」会社で出世、「ほとんど働かないで」年収1億円、「自動的に」異性が集まってくる、「ガマンしないで」健康的な体に、とある。これを読む限りは、「~しないで」願いを叶える方法が書いてある..ように見える。
 「成功したい」という気持ちは多くの人が持っているだろうし、それが楽にできるんだよ、と言われれば心が動く。著者自身が年収1億円を達成しているとなると、さらに気持ちは揺れる。著者の前作が25万部のベストセラーになったのは、こんな心理が増幅されて引き起こした現象なんだろうと推察する。
 それで、上の段落で「..ように見える」とわざわざ振ったのは、もちろんそういったことが書かれていないからだ。正確には「勉強しないで有名大学に入学」だけは、著者自身が国立大学に入学したという方法が書いてあった。「誰にも想像できない方法」と著者が言うとおりに奇抜な方法だ。ここでは、あえて紹介しない。しかし、日本中の受験生の共感はあまり得られないだろう。

 タイトルや帯の内容が書かれていない代わりに、本書にはごく普通のビジネス本によくある管理手法が書いてある。つまり、夢や課題を書き出す→それらをよく吟味する→個々の行動にブレイクダウンする→タイムテーブルに落とし込む→実行、という具合だ。
 特徴的なことがないわけではない。それは「前に同じ夢を叶えた人の行いを、徹底的にマネする」ということ。「こうしたらいいかも」という自分なりの考えは「まったく当てにならない」そうだ。 見本になる人は、本屋で探せばよほどマニアックな夢でない限り、その人が書いた本が見つかる。もしダメならインターネットで検索したり、情報商材を探せば高い確率で見つかる、と著者は言う。

 この本を読んで私が得たものは、「楽して成功」なんてことは言葉とは裏腹にそう簡単なことではない、という考えを新たにしたことだ。著者の本がベストセラーで、年収1億円、というのはウソではないのだろう。その人がどんなことを書いたのかを、どうしても知りたいのでなければオススメはしない。

 ここから先は、書評ではなく、本書のプロモーションについて、思ったことを書いています。
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ウェブ時代をゆく -いかに働き、いかに学ぶか

書影

著 者:梅田望夫
出版社:ちくま新書
出版日:2007年11月10日第1刷 2007年12月5日第4刷
評 価:☆☆☆(説明)

 あとがきによれば、本書はベストセラーとなった「 ウェブ進化論」と対になった本である。前書がウェブ時代の意味を書いたものであるのに対し、本書は「その時代に生まれる新しい生き方の可能性」をテーマとしたものだ。
 実は、私が本書を手にした時に期待していたのは、「ウェブ進化論」を読んだ時の新鮮な驚きや、現状が整理されて目の前が晴れるような感覚の再来だった。そして残念ながら、そういったものは、本書にはない。
 しかし、それは当然である。冒頭のように、本書は前書の続編や新版ではないのだから。私の勝手な期待が叶えられなかったにすぎない。サブタイトルに「いかに働き、いかに学ぶか」とあるのだから、テーマが違うことに気が付くべきだったのだ。

 まずここで思考実験。あなたは、航空宇宙工学で熱の制御を専門に博士号を取得しようと勉強中です。就職先として専門を生かせるNASAやボーイング社が考えられるけれど競争は厳しそうです。そんな時、Googleが巨大コンピュータシステムの熱処理の課題を抱えていて、そこに新しい職業が生まれそうだと聞きました。直感的にパッと考えて、NASAやボーイング社とGoogleのどちらを選びますか?
 著者は、前者を「古い職業」後者を「新しい職業」として、その人の志向性を試している。2つの職業には優劣は全くない、だた「新しい職業」もあるのだよということを、著者は特に若い人に言いたいのだ。そして「飯を食う」つまり自分と家族を養うだけ稼ぐには、色々な方法があるのだよと言っている。

 「新しい職業」にはルールがなく不安定だということで、「道しるべ」のない「けもの道」という言い方を著者はしている。著者自身、1980年代に20才代半ばにしてコンサルタントという「けもの道」を歩き出して今日に至っている。そしてその頃に比べると、知りたいことは「すぐに」「無償で」ウェブで手に入る。今後は、ウェブの世界とリアルの世界の境界に、新しい職業や新しい雇用の形が次々に生まれてくる。だから、自身の時より「けもの道」も歩きやすくなっているはずだ、というわけだ。
 本書では、もっと具体的に「けもの道」の歩き方の指南がされている。先ほどの思考実験で「新しい職業」を選んだ人、大組織の中で生きづらいと感じている人、好きなことでやりたいことがある人は、一読をお薦めする。ただし、簡単にできる方法が書いてあるわけではないので、そのつもりで。

 ここから先は、書評ではなく、本書中にあった「人を褒める能力」ということに関して、思ったことを書いています。
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だから片づかない。なのに時間がない。

書影

著 者:マリリン・ポール 訳:堀千恵子
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2004年6月10日 第1刷 2004年7月7日 第2刷
評 価:☆☆(説明)

 ビジネス書・実用書を中心に書評を書かれているブログ「本読みサラリーマン」で、たかさんが紹介されていた本。片付かないし、仕事の期限に追われている身を思い、参考になればと思い読んでみた。

 この本は、私に向かって書いているようでもあり、私には合わないようでもあった。中に例として出てくる「滑り込みで締切に間に合わせたことに達成感を感じる人」とは、正に私のことだ。大事な会議の資料を10分前に仕上げて、周囲に迷惑をかけておきながら「間に合わせる自信はあった」なんて言う始末だ。
 その一方で、著者がかつてそうだったと言う「散らかった部屋は温かみがあり、きれいに整った部屋はなんだか冷たい」「だらしなさは創造性の源」なんていう考えには、全く賛成できない。だらしない人は言い訳の天才、というくだりもあるが、片づけないことの言い訳としてもかなり程度が低い。こういう考えの人を対象にしているなら、私とは合わない。

 サブタイトルにある「7つのステップ」とは、(1)目的をはっきりさせる (2)ビジョンを描く (3)現状を検討する ...という感じで、(7)心を深く掘り下げ、変化を維持する、まで続く。そして、それぞれのステップごとに「やってみよう!」というワークシート的なものがいくつかついて、親切な作りになっている。
 ただ難点なのは、このステップの1つ1つが(したがって全体ではさらに)面倒なことだ。習慣や意識を変えようというのだから、そうそう簡単にはいかないのはわかる。でも、面倒なことができないからこそ「だらしない」のではなかろうか?
 それから、この7つのステップは、企業経営のステップに似ている。これは、恐らく偶然ではなく、著者が組織改革等を専門とするコンサルティング会社の経営者だからだと思う。企業のワークフローを変えるのと同じアプローチで、個人の習慣を変えようという考えなのだろうか?どちらも、相当エネルギーを必要とすることでは共通しているが。

 「習慣を変える」ということで言えば、本書のかなりの部分で繰り返されているのは、「それが習慣になるまで続ける」「挫折しても、元に戻ってしまっても、またやり直す」ということだ。何度でも、何年でも。著者も、机の上を整理する習慣化のために30~40回トライしたという。正論ではあるけれども、これも「だらしない人」には苦手なことだろう。
 その点、随所にちりばめられている「ちょっとしたアイデア」には使えるものもある。例えば「所要時間を実際に計ってみる」。所要時間を短く見積もってしまって失敗することがあれば、実際にやってみたらあっという間に終わってしまうこともある。洋服をハンガーにかけてしまうのは面倒だけれど、実は15秒しかかからないことが分かると苦にならないかもしれない。
 この本を読んでキチンとした習慣が身につくかどうかは疑問。大きな期待をしないで少しでもヒントを拾おうというぐらいが良いと思う。

補足があります。こちらからどうぞ。

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