6.経済・実用書

図解 90分でわかる!日本で一番やさしい「アベノミクス」超入門

書影

著 者:永濱利廣
出版社:東洋経済新報社
出版日:2013年4月18日 第1刷発行 2013年6月3日 第4刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 今さら言うまでもないことだけれど「アベノミクス」とは、現在の第2次安倍内閣の一連の経済政策の通称。大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3つを、「3本の矢」に例えたりして、なかなかネーミングセンスが良いらしく、今年の流行語大賞候補として取り沙汰されてもいる。

 著者はエコノミストで、プロフィールには「テレビ出演多数」とある。このテレビ出演などで「理解してもらえなかった」と感じることが多々あったことが、本書執筆のきっかけになったそうだ。理解してもらうために本を一冊書こうというのだから、真面目な方なのだろう。

 「真面目な方」らしく、良く言えば曖昧さやいい加減さがない、悪く言えば面白味や親近感の湧かない説明だった。きっと「日本一やさしい」ということはないだろう。経済を勉強中の学生さん、つまり基本的な経済用語の知識がある方、が読むのに良いぐらいかと思った

 本書の内容はまず、日本がデフレである理由、アベノミクスの狙い、アベノミクスへの反対意見、をそれぞれ1章を設けて解説する。そして、最終章のタイトルは「2~3年でデフレは終わり、日本経済は復活します」とくる。そう、著者は「アベノミクスは成功する」と考える一人であるらしい。

 「成功するのか」と安心するのは早い。「2~3年で...復活します」となっていることに、注目して欲しい。私たちが効果を実感できるまでに3年かかる。具体的には、月々の給料が上がるのは2016年ぐらいからだそうだ。私たちがそれまで我慢できなければ、「アベノミクス」は頓挫してしまう。

 本書の随所に「期待の醸成」という言葉が出てくる。「これから経済が良くなる」という「期待」こそが経済を良くする。「経済は感情で動く」という本があるが、その言葉どおりで「期待」という感情のエンジンが止まると、そこで終わってしまう。けっこう頼りない基盤の上に乗った政策なのだ。

 もちろんこんなことは著者も十分承知している。我慢してもらうためには「その後には必ず効果が実感できる」という、未来予想図を示す必要がある。本来はそれは政治の役割だが、誰もやらないので、それを自分でやることにしたのだろう。著者は「アベノミクスは成功する」というより、「成功して欲しい」と痛切に願っているのだと思う。

 その痛切な願いは著者だけのものではない。「デフレを脱却して、経済を活性化して、暮らしを明るくして欲しい」というのは、今の日本の国民の共通した願いだろう。その成否はあなたの我慢にかかっている、と言われたらどうするだろうか?私は我慢しようと思うのだけれど、さて我慢しきれるだろうか?

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

思考の整理学

書影

著 者:外山滋比古
出版社:筑摩書房
出版日:1986年4月24日 第1刷発行 2013年4月25日 第91刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 30年前の1986年に発行され、この4月現在で175万部突破。つまりロングセラーにしてベストセラー。すでに数多くの評価や引用がなされているので、「今さら感」があるのだけれど、前から気になっていたので読んでみた。

 本書はもともとは、さらに3年遡った1983年に「ちくまセミナー」という叢書の1冊として刊行された同名の本を文庫化したもの。絶版となっている叢書の他の本には、田原総一朗さん、竹内宏さん、金田一春彦さんらが著者として名を連ねている。著者やタイトルから察するに、ビジネスマン向けの知的読み物だったようだ。

 内容は、英文学者、言語学者である著者の、情報の整理法や発想法、教育論、時評など、全部で33編を収めたエッセイ集。「整理学」よりは「整理術」と言ったほうがしっくりとくる。例えば、「アイデアが浮かんだら、これを一旦寝かせておく。そのためには安心して忘れる必要がある。安心して忘れるために記録する。」という論法で来て、記録するカードやノートの書き方の具体例を説明してくれる。

 教育論として、今の学校教育は、自力では飛べない「グライダー人間」の訓練所で、自力で飛び上がる「飛行機人間」は作れない、という。何げなく「今の学校教育は..」と書いたが、この本は30年以上前に書かれた本だ。さらに時評として、コンピュータに仕事を奪われる様までが鮮やかに描き出されている。まさに慧眼。これはほとんど「予言の書」だ。

 最後に。帯に「東大・京大で5年間販売冊数第1位」と書いてあって、このコピーが販売部数に大きく寄与していると思う。大学生協の調べで「第1位」にもちろんウソはないと思うけれど、東大・京大で売れるのもこのコピーの効果だろう。つまりこのコピーが、好循環を生む「良くできたコピー」だということで、それが内容を保証するわけではない。私は「なるほど」と思うところも「そうなんだよ」と共感するところもあった。しかし公平に言って、大きな期待は禁物かと思う。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

ワーク・シフト 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>

書影

著 者:リンダ・グラットン
出版社:プレジデント社
出版日:2012年8月5日 第1刷発行 10月7日 第7刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 著者は、ロンドン・ビジネススクールの教授。英タイムズ紙による2011年の「世界のトップビジネス思想家15人」のひとりに選ばれた。その著書はこれまで20ヶ国語以上に翻訳されてきたが、日本語の訳書の刊行は本書が初めて。これが10万部のベストセラーになっている。

 本書はまず「2025年の働き方」を展望する。その時、私たちはどのような仕事観を持っているのか?どのような希望を抱いているのか?何に不安を感じているのか?そうしたことを「2025年のある1日」として、6つの物語に仕立てている。3つは悲観的なストーリー、3つはもう少し明るいストーリーだ。

 この6つの物語は、著者ひとりの想像の産物ではなく、「働き方の未来コンソーシアム」という、世界中から多数の企業が参加した産学協同の研究プロジェクトの成果を基にしている。そこでは未来を形づくる5つの要因として「テクノロジー」「グローバル化」「人口構成・長寿化」「社会の変化」「エネルギー・環境問題」が挙げられ、それをさらに32の現象に細分化して検討するという緻密な作業が行われている。

 ここまででも読み応えがあるのだけれど、本書のキモはこれからで、それは「悲観的なストーリー」と「もう少し明るいストーリー」が別れるのはいつで、それを決定するのは何か?に関する著者の考察だ。「いつか?」の答えは本書の1ページ目の第1行に簡潔に書いてある。「働き方の未来は今日始まる」。現在流行中の「今でしょ。」というわけだ。

 「何か?」の答えは、「仕事」に関する考え方の転換(SHIFT)だ。本書のタイトルの「ワーク・シフト」はそれを指している。その「転換」は3つあって、簡潔にいうと「広く浅く」から「複数を深く」へ、「競争」から「協力」へ、「モノ」から「経験」へ。これを私たちが、主体的に選択した場合に「もう少し明るいストーリー」になる。この「主体的に選択する」ことが、本書の主張のキーポイントになっている。

 さて、2025年と言えばあと12年、私は62歳になっている。考え方によっては、職業人生としてはゴールかゴール間近で、もう悩むこともないのかもしれない。しかし、12年と言えば長い。このまま漫然と、では済まないことは明らかだ。
 また、2025年には社会の中心的役割を担う20~30代の人や、ちょっと荷が勝つかもしれないけれど、一番影響を受けそうな10代後半ぐらいの人も読んでおいて欲しい。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

貧乏人が激怒する新しいお金の常識

書影

著 者:午堂登紀雄
出版社:光文社
出版日:2013年2月20日 初版第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 出版社の光文社さまから献本いただきました。感謝。

 様々なお金に関する「常識」に異を唱える本。「日本経済」「投資」「家」「お金」の4つに分類して合計40個の「旧常識」を論駁してみせる。

 著者は「旧常識」には「亡霊型」と「洗脳型」の2つのタイプがあるという。「亡霊型」は時代の変化とともに陳腐化してしまったもの。「家」についての「持家は資産になる」という「常識」はこれに含まれるだろう。

 私は(多分著者も)要注意なのは「洗脳型」の方だと思う。これは誰かが意図をもって流布したもののことを言う。例えば「(このままでは)年金は破綻する」が「常識」になれば、年金支給開始年齢を上げたり、支給額を下げたりしやすくなる。真偽は分からないが、政府が意図的に喧伝した「常識」かもしれない。

 そもそも、著者がこの本を記した意図は、「自らの頭で考えよう」ということを訴えるためだ。「常識」を真に受けてしまうのは「思考停止」で、それでは「頭のいい人」たちに騙されてお金を失ってしまう、というわけだ。とくに「洗脳型」にやられてしまえば、一たまりもない。政府もマスコミも学者も、その発するメッセージが正確で公正とは限らない。いや、何らかの意図を持っていると思った方がいい。

 「激怒」するほどではないのだけれど、ちょっと過激な言葉で、庶民の気持ちをわざと逆なでする。特に第5章の「貧乏人は、貧乏になるべくしてなっていることを知る」はそうだ。でも、一番ためになったのもこの章だった。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

「いいね!」であなたも年収1億円

書影

著 者:佐藤みきひろ
出版社:講談社
出版日:パイロット版
評 価:☆☆☆(説明)

 出版社の講談社さまから、パイロット版で献本いただきました。感謝。

 「月に100万稼げる「Amazon輸出」」のレビューの冒頭で、「やけに景気のいい、すごいタイトルの本だ」と書いたが、本書は金額でその8倍超も景気がいい。そのレビューで「うまい話がそうそうあるはずがない」とも書いた。「あるはずがない」レベルも8倍ということになる。

 しかし、このタイトルは誤解されやすいと思う。「いいね」つまりFacebookが、直接お金になる何かうまい方法があるような印象を与えるけれど、それは違う。収益の元はFacebokとは別にある。例えば、著者は飲食店やリース会社など、複数の会社を経営していて、そこからの収益が1億円、ということなのだ。Facebookは集客や商品への誘導に使っている。これなら「あるはずがない」とは思わない。

 まぁ、会社経営をするとなるとおいそれとは行かない。でも、本書はそんなハードルの高い本ではない。読んでみると分かるが、本書に書かれているのは、Facebookページを使った集客の実践的ノウハウであって、年収1億円はその結果に過ぎない。本書のノウハウは魅力的なFacebookページ作り全般に役立つ。1億円までは求めないのなら、会社経営は必要ない。

 例えば会社のFacebookページを担当している人、例えばウェブ制作会社のデザイナー(本書中に「ウェブ制作会社は集客とは無縁」なんて書いてある。的確な指摘だけに、言われっぱなしでは不甲斐ない)も読むといいと思う。実際、私は職場のFacebookページを作っているのだけれど、大いに参考にさせてもらった。

 タイトルに話は戻るけれど、本のタイトルは難しい。本書を家族や職場の同僚に見せたら、ほぼ全員が失笑した。「年収1億円」に「あるはずがない」と思ったのだろう。インパクトはあるけれど、真面目に受け取ってもらえない恐れがある。では「Facebookページで集客力アップ!」ではどうだろう?これはインパクトに欠ける。同種の本の中で埋没してしまいそうだ。

ところで、著者の人生を変えた(救った?)本として、神田昌典さんの「あなたの会社が90日で儲かる! 」が紹介されている。本書の装丁がこの本にとても似ているのは、リスペクトの気持ちからだろう。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

10分あれば書店に行きなさい

書影

著 者:齋藤孝
出版社:メディアファクトリー
出版日:2012年10月31日 初版第1刷 11月28日 第2刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 テレビでもお馴染みの著者。大学の先生らしい理性的なものでありながら、なかなか気の利いたコメントをされるので、私はけっこう好きだ。さらに、ものすごい数の著書があって、新聞の書評欄や広告、書店でもよく目にするのだけれど、著書を読むのはこれが初めて。

 本書での著者の主張はたった一つ「1日最低10分、必ず書店へ行こう」ということだ。本のタイトルとは少しニュアンスが違う。しかし、本書の中で著者自身の言葉でこう書いてある。

 「それはちょっとムリだろう」と思った方は多いだろう。私もそう思った。しかし、本書の内容を読むと「1日最低10分、必ず」に拘らずとも、「今より頻繁に、できるだけ多く」ということで、大部分はOK。その意味で、本のタイトルの方がうまく表現できているかもしれない。

 その理由は、まず書店は古今東西の「知」の集積だということ。そこは良い刺激を受ける「知的トレーニングの場」になり、潜在能力を引き出す「パワースポット」になり、心を落ち着かせる「癒しの空間」になる。(しかも行くだけならタダ)だからせっせと書店に行きなさい、ということだ。

 内容は、書店に顔を出すメリット、コーナー別の利用法、書店利用の裏ワザ、といったことが、とても丁寧な文章で書かれている。また、随所に著者のおススメの読書法がちりばめられていて、「なるほど」と思うことも多かった。

 第2章「書店はアイデアの宝庫」に、「私たち凡人の抱える問題が、人類史上初の難問ということはまずあり得ない」というくだりある。古今東西の叡智が集積した書店にはその解決のヒントがある、ということなんだけれど、これをそっくりの話が「夢をかなえるゾウ2」に登場する。(齋藤先生がガネーシャだったのかも(笑))

 気になったことを1つ。著者の興味は実用書・時事問題と古典に集中していて、現代の小説には関心が薄いようだ。ベストセラーを読むと「世の中を知ることができる」「人と話を合わせやすい」という、好意的とは言えない微妙なメリットしか認めていない。

 それは著者が「情報を得るもの」としての本を重視しているからだ。「パラッと読むだけでほぼ一冊全体を把握」「一冊を10分から15分でさばく」なんて読み方は、そうでなくてはできない。いや「情報を得るもの」と割り切ったとしても、この読み方には賛否あると思う。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

人生が変わる2枚目の名刺

書影

著 者:柳内啓司
出版社:クロスメディア・パブリッシング
出版日:2013年1月11日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 出版社のクロスメディア・パブリッシングさまから献本いただいました。感謝。

 前回の「一流役員が実践している仕事の哲学」の記事で予告した通り、今回紹介する本書は前回の「一流役員が~」と同じ出版社さんからいただいた本で、私はこの2冊の方向性が対照的だと思う。

 本書の著者はTBSテレビの社員で、今は放送局のIT戦略全般に取り組んでいるそうだ。しかし本書は、放送業界ともIT戦略とも、ほぼ関係ない。本書は、著者が実践する「2枚目の名刺を持つ働き方(パラレルキャリア)」の魅力を伝える本なのだ。

 2枚目の名刺、パラレルキャリアとは何か?本業以外に「自分がやりたい活動」をすることだ。例えば著者は、テレビ局の社員である傍ら、合計で年間1000人以上を動員する、ビジネス勉強会や交流会の主催をしている。その他には、広告会社に勤めながらマジシャン、銀行に勤めながらWebアプリケーション開発者、投資ファンドに勤めながら途上国の貧困問題に取り組むNPO法人理事長、といった人たちが紹介されている。

 このように本業とは別の活動をすることで、「収入や生きがいを本業一本に頼るリスクを軽減する」「たくさんの縁が生まれる」「人脈や経験が本業に生かせる」といったメリットがある。本書はこのメリットと、成功のためのヒントなどを、分かりやすい文章で解説する。

 どうだろう?前回の「一流役員が~」の「仕事以外何もできない自分を選ぶ覚悟を持つ」とは、好対照ではないだろうか?「リスク軽減」の一点を考えても、本書の方が時代に合っていると思う。とは言え本書は、「本業で他の人以上に成果を出す」ことを繰り返し強調する。甘くはないのだ。

 私は、「本業以外のキャリア」とは多少違うけれど、仕事以外も充実した暮らしをしたいと思っていた。だからせっかく入った大企業だったけれど、その会社は10年務めて転職した。「役員になる/ならない」とは関係なく、暮らしの多くの時間を仕事に割かれ、その会社では自分の思う暮らしができないと思ったからだ。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

一流役員が実践している仕事の哲学

書影

著 者:安田正
出版社:クロスメディア・パブリッシング
出版日:2013年1月11日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 出版社のクロスメディア・パブリッシングさまから献本いただいました。感謝。

 今回は同じ日に発行された本を2冊いただいた。どちらも若いビジネスパーソンに向けて書かれた、いわば生き方の指南書。出版社さんがそう意識されたのかどうか分からないけれど、その方向性が対照的なので今回と次回で続けて2冊を紹介したい。

 まず1冊目の本書は、コンサルタントである著者が、これまでに5万人の一般社員と1000人以上の役職者に出会って発見した、数々の法則が披露されている。例えば「接待の翌日、平社員は90%がメールすらしない、部長でも80%の人がお礼を言わない、しかし役員は100%朝7時にお礼メールが来る」といったもの。

 こんな感じで、「平社員は〜、部長は〜、役員は〜」「三流は〜、二流は〜、一流は〜」という項目が、全部で36個並ぶ。お笑いの三段落ちのようなもので、テンポも良くて3つめの「役員」や「一流」では、「なるほど」ときれいにまとまっている。まぁ3つに分けるのに無理を感じるものもないではないけれど、そこは拘るべきではないだろう。

 しかし、最初は面白く読んでいたのだけれど、途中から強い違和感を感じた。その違和感の原因は本書にある次の言葉に端的に現れている「仕事以外何もできない自分を選ぶ覚悟を持つ」。つまり、役員になるためには、休みも夜もなく、生活のすべてを仕事のために(もっと意地悪く言うと「役員になるために」)使うべし、そんな考え方が見えてくる。

 そんな時代遅れな...と思った人もいるだろう。私もそう思う。ただ、ところどころ違和感を感じつつも、個々の「三段落ち」にはコンサルタントとしての著者の観察眼の鋭さを感じるものが多い。書店などで見かけたら手にとってパラパラ見てみるといいだろう。

 最後に。本書を読んで思い出したことがある。今から20年ぐらい前、私が若いビジネスパーソンだった頃。どこかのカリスマ社長が出会った人に必ず礼状を出す、という話を聞いて、私もマネをしたことがある(上の「お礼メール」の話と似ているでしょう?)。何万人も社員がいる大企業の一員だった私は、おぼろげながらも「役員になりたい」と、あの頃は確かに思っていた。

 この話の続きともう1冊の話は次回に... 

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

新版 結局「仕組み」を作った人が勝っている

書影

著 者:荒濱一 高橋学
出版社:光文社
出版日:2013年1月20日
評 価:☆☆☆(説明)

 著者の荒濱さんと高橋さんからいただきました。感謝。

 ちょっとややこしいけれど、まず本書の位置付けから。2007年に「結局「仕組み」を作った人が勝っている」という、本書と同名の本が出ていて、私は、それに続く「やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている」をいただいて読んだことがある。それで本書は、第1弾の内容に、そこで紹介した事例の「5年後の今」を取材して加え、「新版」として文庫化したものだ。

 この本で言う「仕組み」とは、「いったん作ってしまえば、自分がさほど動かなくても自動的に収入を得られるシステム」と定義されている。「そんなうまい話があるわけがない」と思うのが、きっと真面目に働いている多くの人の感じ方だろう。しかし、本書には10人の事例が紹介されている。「誰でもできる」とは言わないけれど、そんな話は「ある」のだ。

 詳しいことは読んでもらうとして、いくつかの事例に共通するのは、「インターネット」「仲介」というキーワードだ。例えば空港周辺の駐車場と利用者を仲介する予約サイト。例えば事業者とビジネスパートナーや投資家を結ぶマッチングサイト。例えば企業に米国の翻訳サービス会社を紹介する仲介ビジネス。
 「インターネット」は、ビジネス立ち上げから維持管理まで、何かとコストを抑えることができる。「仲介」は、自分の時間や能力という制限の撤廃、という重要な要素がある。例えば翻訳の仕事を自分がやれば、仕事量は自ずと限界がある。病気にでもなれば収入はゼロになってしまう。しかし「仲介」なら、提携先と顧客を理屈の上では無制限に増やせる。

 ここまでは、2007年の第1弾でも言えることだ。本書の本当の意味は、新たに加えられた「5年後の今」にある。考えてみれば、これはなかなか勇気がいる企画だ。「5年経ったらみんなダメになってました」では、悪い冗談にもならない。
 ところが「仕組み」が止まってしまったのは1件だけだった(まぁ、だから本書が出版できたのだろうけれど)。それでサブタイトルは「驚異の自動収入システムは今も回り続けていた!」というわけだ。

 読むと自分でも何かやりたくなる。そんな本だ。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

月に100万稼げる「Amazon輸出」入門

書影

著 者:山村敦
出版社:日本実業出版社
出版日:2013年1月1日 初版発行
評 価:☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 やけに景気のいい、すごいタイトルの本だ。「うまい話がそうそうあるはずがない」という「良心の声」の諫言も虚しく、月に100万稼げる方法があるのなら、是非とも知りたいと思うのが人情というものだ。

 本書の内容の前に、「Amazon輸出」ついて説明する。Amazon輸出とは、同じ商品の日本のAmazonと海外(例えば米国)のAmazonとの価格差を利用した商法だ。価格差の大きい商品を日本のAmazonで購入して、海外のAmazonに出品。それが売れたら商品を梱包して購入者に発送する。価格差が大きいから、送料や手数料のことを差し引いても結構な儲けが出る。

 具体的にはアニメ、フィギュア系が狙い目だという。著者によると、例えば「未来少年コナン」のDVD BOX。日本では1万7140円で、米国では439.98ドル(1ドル88円とすると3万8720円)。著者の純利益は1万2779円になったそうだ。それに、日本のアニメは海外で評判なので「直輸入」の付加価値もあるらしい。

 さて、ここまで聞いて皆さんはどう思っただろう。「面倒くさそうだなぁ」と思った方には、この本は何の役にも立たない。「100万稼げる」とは言っても、「楽して稼げる」とは言ってない。それ相応の面倒なことはあるのだ。「これは面白そうだ」と思った方には、本書は何かしらの有意義な情報となるだろう。

 実は「Amazon輸出」には、さらに面倒なことがある。例えば、海外のAmazonに出品者として登録するだけでも、現地の銀行口座や法人設立やらが必要で、その後も税務申告などが必要になる。しかし、この面倒さにこそ本書の価値がある。本書には、こうした面倒をできるだけ回避する、著者が自ら蓄えたノウハウが満載されている。

 「月100万」は遠くにも見えないとしても、本書は「Amazon輸出」を始める人には、値千金の情報だと思う。(私は早々に「面倒くさそうだなぁ」と思ってしまったけれど)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)