沈みゆく大国アメリカ<逃げ切れ!日本の医療>

書影

著 者:堤未果
出版社:集英社
出版日:2015年5月20日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

  前著「沈みゆく大国アメリカ」の続編。出版社の特設サイトには「姉妹編」と書いてある。敢えてタイトルを変えていない、ということから、前著と本書はひと続きの著作なのだと思う。内容的には前著の最終章「次のターゲットは日本」を、掘り下げたものになっている。

 前著では、米国民全員が医療保険に加入する「オバマケア」が(オバマ大統領が意図したものかどうかは別として)、大きな問題を抱えていることを明らかにした。日本の「国民皆保険」はそれとは違い、非常に優れた制度であることも分かった。

 「オバマケア」の問題を一言でいうと、「保険会社と医薬品メーカーが儲けるための仕組みになっている」こと。そして本書では、恐ろしいことにその仕組みが、部分的にではあるが既に抜きがたく日本の制度に組み込まれていることを明らかにしている。

 その端緒は1980年代の「ロン&ヤス(レーガン大統領と中曽根首相)」の頃だというのだから驚く。国民が気付かないように時間をかけて静かに潜行していたのだ。私たちは、30年間も知らずにいたわけだから。前著から繰り返し登場するのは「無知は弱さになる」という言葉だ。私たちは「国民皆保険」の仕組みにもその素晴らしさにも、あまりにも無知で来てしまった。

 これに対抗するために「よく知る」ことが必要なのだけれど、本書にはドキッとすることが書かれていた。なんと米国では、ワシントンタイムズ紙が、オバマ政権と「オバマケア宣伝契約」を480万ドルで結んでいたというのだ。同じような形態でニューヨークタイムズ紙も。

 翻って日本では?安倍政権は2015年予算で「政府広報予算」を、前年度の約65億円から83億円と大きく積み増している。もちろんこれだけでは、これが意味することまでは分からないけれど、米政府がやったことを、日本の政府が絶対にやらないとは言えないだろう。

 最後に。しかしタイトルにあるように、まだ逃げ切れる。まだ間に合う。そのための方策のヒントは意外なほど近くにあった。ひとつは私が住む長野県の佐久総合病院に。最終章に詳細に書かれているので、繰り返し読みたい。

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禁断の魔術

書影

著 者:東野圭吾
出版社:文藝春秋
出版日:2015年6月10日 第1刷
評 価:☆☆☆(説明)

 本書は「禁断の魔術 ガリレオ8」に収録された「猛射つ(うつ)」という150ページの中編を加筆・改稿した長編。帯には「シリーズ最高のガリレオ」と書かれている。

 今回の事件は、ガリレオこと天才物理学者の湯川の、高校の後輩が絡んでいる。湯川に近い人物が事件に関係している点では、短編集「ガリレオの苦悩」のいくつかの収録作品と共通している。

 その高校の後輩の名は古芝伸吾。物語の冒頭で、湯川が理学部の准教授を務める帝都大学の工学部に合格し、湯川にあいさつに来ている。優秀なのだ。そして未来に希望を持っていた。

 ところが彼は、一か月ちょっとで大学を中退してしまう。それはどうしてなのか?ホテルでの女性の殺人事件、マンションでのフリーライターの殺人事件、屋形船の爆発事件...。伸吾はこれらの事件と関わりがあるのか?

 伸吾が湯川にあいさつに来たのは、以前に湯川にレールガンの製作の指導を受けたことがあるからだ。レールガンは電磁エネルギーで物質を射出する装置。湯川は「実験装置」と呼ぶが、刑事たちは「武器」と呼ぶ。

 伸吾がレールガンを使って何かをしようとしているのは、ほぼ間違いない。殺人に使われれば、科学は「禁断の魔術」になってしまう。そうなれば、指導した湯川にも科学者としての責任がある。

 「ガリレオの苦悩」と共通しているは、湯川に近い人物が事件に関係しているだけでなく、湯川の「苦悩」と「決意」を描いている点。この一点に読み応え有り。

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ファンタジーを書く ダイアナ・ウィン・ジョーンズの回想

書影

著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:市田泉、田中薫子、野口絵美
出版社:徳間書店
出版日:2015年3月31日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 本書は2011年の3月に亡くなった、英国の児童文学作家で「ファンタジーの女王」と呼ばれた、ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの講演やエッセイ、書評などをまとめたもの。私は著者の作品が好きで、これまでに30数作品を読んできた。

 偉大な作家が亡くなった後に、遺稿集が出版されることは珍しくない。しかし本書はそれらとは違う。本書は著者がガン宣告を受け余命数か月と告知された後に、著者自らが関わって編纂したものなのだ。

 その経緯が書かれた「著者前書き」を読んで衝撃を受けた。整理のために、長く引出しにしまわれた講演の原稿や、雑誌や新聞の原稿を再読するうちに、こう思い付いたそうだ。

 「これを本にしたら学生も楽しみ、おもしろがってくれるかもしれない。創作を教える教師や大学の講師に役立つかもしれない」。自らの死を前にこんなことを考えていたのだ。この前書きには、亡くなる4カ月前の日付が記されている。

 そして内容は宝物のようだった。他に人にとってもそうだとは言わない。たぶん違うと思う。しかし私にとっては、よくぞこれを出版し、また日本語版を出してくれた、と感謝の気持ちが湧いた。

 著者の生い立ちやいくつかの作品の創作の裏話が聞けた。「あの作品のあの人と、こっちの作品のこの人は、同じ人物の違う面を描いた」なんてことを知ることができた。

 本人のことだけではない、オックスフォードで教わった、J.R.R.トールキンやC.S.ルイスの授業の批評が書かれている。それから「ハリー・ポッター」のことも。著者の作品と似た、ユーモアを持ちつつ辛口の語り口で。

 ファンなら必読。そして、亡き著者の魂の安らかならんことを祈って。

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おとなの教養

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著 者:池上彰
出版社:NHK出版
出版日:2014年4月10日 第1刷 2015年3月5日 第15刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 時々、著者のこの手の本を読みたくなる。例えばこれまでに読んだののは「知らないと恥をかく世界の大問題」「日本の選択 あなたはどちらを選びますか?」「ニッポンの大問題 池上流・情報分析のヒント44」。何かこう「知識の補充」をする感じ。

 本書のテーマはタイトルどおりで「おとなの教養」。西欧の「リベラルアーツ」の7科目「文法」「修辞学」「論理学」「算術」「幾何学」「天文学」「音楽」に倣って、本書も7つのテーマを据える。

 その7つは「宗教」「宇宙」「人類の旅路」「人間と病気」「経済学」「歴史」「日本と日本人」。関係がありそうでなさそうな7つだけれど、実は1つのことが共通している。著者は、これらは全て「私たちはどこから来て、どこへ行くのか?」の答えにつながる、と考えているのだ。

 「宗教」と「歴史」の項目が面白かった。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教を並べて、これだけコンパクトにスッキリとまとめた文章を初めてみた。歴史というものの本質、中国や韓国と日本の関係のことが、すんなりと胸に落ちた。

 それから「経済学」も。恥ずかしながら私は、大学で経済学を学んだはずなのだけれど、「そういうことなのか!」と膝を打つことが数度あった。やはり「教養」が足りないなぁ、と思った。

 文部科学省が大学に出した「人文社会科学系学部の廃止や転換を促した」通知のことが報じられている。実は本書の冒頭には、そのことを見越したような部分がある。「教養」については、これまでにも政府・経済界と大学の間で綱引きがあったらしい。この文脈で見ると今回の通知の位置づけがよく分かる。

最後に印象的な言葉を。「すぐ役に立つことは、すぐに役に立たなくなる

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民王

書影

著 者:池井戸潤
出版社:文藝春秋
出版日:2013年6月10日 第1刷 20015年6月1日 第20刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 著者は「下町ロケット」で直木賞を受賞。その他に「ルーズヴェルト・ゲーム」「七つの会議」、そして大きな話題になったテレビドラマ「半沢直樹」の原作シリーズと、「経済小説」のジャンルでヒットを飛ばし続けている。本書もテレビドラマ化され、テレビ朝日系列で7月から放映される。

 主人公は武藤泰山と、その息子の翔の2人。泰山は「民政党」に所属する政治家で、何と我が国の内閣総理大臣。翔は六本木のクラブに入り浸る大学生。つまり絵に描いたようなダメ息子だ。

 この泰山と翔が、何のはずみか入れ替わってしまう。泰山の身体に翔の意識が、翔の身体には泰山の意識が宿る。何だか強烈な既視感を感じる設定。「転校生」?「パパとムスメの7日間」というのもあった。

 設定は使い回されたものではあるけれど、描かれた物語はなかなか奥が深くて考えさせられ、かつ楽しめるものだった。翔は総理大臣として国会で野党の追及に対処し、泰山は就職活動の面接を受けるはめになる。「漢字が読めない総理大臣」なんていうネタを挟みながら、コミカルに物語は展開する。

 「演じる」が本書のテーマだと思った。泰山は与党の政治家を演じ、翔は就活中の学生を演じる(ダメ息子だと思っていたら、真面目に就職活動をしていたのだ)ことを求められている。例えば翔は、本音とは別に「御社を第一志望に..」と話さないといけない。

 入れ替わりによって、就活中の学生を演じている翔を、その父親である泰山が演じる、というヤヤこしい二重構造になる。そうすると不思議なことに(無責任とも言えるが)、本当に言いたいことが言えてしまう。ソリの合わない父子なのにすごく似ていて、泰山の「空気を読まない発言」はたぶん翔の本音で、その逆もまた然り。

 著者としては異色の作品だと思う。ここまでコミカルなものも、「入れ替わり」のようなちょっと現実離れした設定も、著者の作品では初めてだからだ。でも、これまでの作品と同じかそれ以上に、とても面白かった。

テレビ朝日 金曜ナイトドラマ「民王」公式サイト

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どうする定年 50歳からの巻き返し! まだ間に合うマネー対策

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著 者:日経ヴェリタス編集部
出版社:集英社
出版日:2014年12月10日 第1刷発行
評 価:☆☆(説明)

 本書は「日経ヴェリタス」という、日本経済新聞社の週刊投資金融情報紙の連載に加筆・修正したもの。登場するのは50歳の会社員3人。それぞれが10年後の定年と、それ以降の老後を考える、悲喜こもごもを綴る。(なんと3人は1963年生まれで私と同じ歳!)

 まず気が滅入る話をする。平均寿命から逆算すると、男性は定年後23年、女性は28年生きる。その間の生活費はざっと9000万円。65歳から支給される年金は、会社員+専業主婦のモデルで、約5500万円。(あまり現実味がないけど)仮に退職金が1000万円もらえるとしても、約3500万円足りない。絶望。

 まぁ絶望してしまってはいけないので、本書は、定年までと定年後に、如何にして資産を形成するかを、物語仕立てで説明する。金融商品の紹介が、特に前半には、たくさんでてくる。まぁつまり「投資のススメ」みたいな本だ。

 当然なのだけれど、「日経ヴェリタス」の読者層を対象に想定している。登場する3人も上場企業の社員で、2人は役員の席を覗う部長。まぁちょっと我が身と引き比べて、違いが大きすぎて、正直言って鼻白む想いもした。

 ただ、前半の金融商品の説明は読み飛ばして、後半に展開される「相続」に関する顛末と読むのはいいかもしれない。取りあえず危機感は共有しておいた方が良さそうなので。

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決戦!大坂城

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著 者:葉室麟、木下昌輝、富樫倫太郎、乾緑郎、天野純希、冲方丁、伊東潤
出版社:講談社
出版日:2015年5月26日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「大坂の陣」をテーマに、7人の時代小説作家が書下ろし小説で競作。何とも贅沢な1冊。ちなみに本書は「競作シリーズ第2弾」で、第1弾は「決戦!関ヶ原
」。

 大坂夏の陣と冬の陣、その場にいた7人を主人公に、7人の作家がそれぞれ物語を紡ぐ。具体的には次のとおり。

「淀殿:葉室麟」「真田幸村:木下昌輝」「近江屋伊三郎:富樫倫太郎」「水野勝成:乾緑郎」「松平忠直:天野純希」「豊臣秀頼:冲方丁」「福島正守:伊東潤」(敬称略)

 言うまでもないことだけれど「大坂の陣」とは、1614年と翌1615年に行われた、徳川軍が大坂城を攻めた戦い。徳川と豊臣によって、日本中の大名、武将が召集された「最後の決戦」と言える。

 多くの武将らが、それぞれの立場でそれぞれの想いを抱えて戦った。それぞれの物語を積み上げることで「大坂の陣」を描く。本書はそういう試みで、それはとても成功していると思う。同じ戦いを7回描くのだから、同じ場面が何度も出てくる。ただ、視点を変えて描くことで、立体感が出てくる。

 もちろん、作家さんのそれぞれの特長も楽しめる。私は、福島正守を描いた伊東潤さんの作品がとても楽しめた。代わりに、私の個人的思い入れもあるため、木下昌輝さんが描く真田幸村像は、ちょっと不満が残った。

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伝え方が9割 2

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著 者:佐々木圭一
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2015年4月23日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 タイトルのとおり「伝え方が9割」という本の第2弾。第1弾のレビューで「意外と良かった。とても役に立ちそうだ。」なんて書いたけれど、広い評価も得たようで、64万部を突破したそうだ。

 このシリーズは、コピーライターの著者が、自らの経験から導き出した「YESと言ってもらえる伝え方」「相手に響く強いコトバの作り方」のテクニックを記したものだ。

 例えばお店で「このシャツは現品限りです」と言うより、「こちら人気で、最後の一着なんです」と言った方が、買ってもらえる、というようなこと。これは「相手の好きなこと」の文脈で伝える、というテクニックの一例。

 第1弾は「役に立った」としても、第2弾もそうかどうかは別問題。第1弾には入らなかった、言わば「2軍」的な項目が書かれているとすれば、あまり期待できない。こういうHowToモノだと、第2弾はムリがあるんじゃないの?と懐疑的に思っていた。

 この懐疑は半分だけ当たっていた。第1弾とは全く別の項目で同等のクオリティを保つのは、やはりムリだったようだ。15項目あるうち、新しいのは3項目しかない。他の12項目は、はっきり言うと「第1弾の焼き直し」だ。

 「半分だけ当たり」としたのは、この「焼き直し」が、なかなか見事だったからだ。第2弾の作り方としては、意外だったけれど悪くない。

 それぞれのテクニックを使った例が、より具体的により洗練されたものになっていた。第1弾の出版後に「こう言ったらうまくいきました!」という報告が、著者の元にたくさん寄せられたらしい。つまり本書に載っているのは、「効果を確認済み」の例なのだ。

 そんなわけで、第1弾を読んだ人にススメるには、ちょっと微妙な内容。これから読む人は、第2弾の本書だけ読んでも役に立つと思う。

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追風に帆を上げよ(上)(下)

書影
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著 者:ジェフリー・アーチャー 訳:戸田裕之
出版社:新潮社
出版日:2015年4月1日 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「時のみぞ知る」 「死もまた我等なり」「裁きの鐘は」に続く、超長編サーガ「クリフトン年代記」の第4部。7部完結とのことだから、これで折り返し地点通過ということだ。

 前作のラストは、クリフトン家の長男であるセバスティアンが乗る車が、3台のトラックに挟まれて、悲劇的な交通事故を起こしたところで終わっている。

 それを受けて、本作はセバスティアンの母のエマが、夫のハリーに、息子の死を告げる電話で始まる。その時エマはイギリス西部の街ブリストルに、ハリーは大西洋を隔てたニューヨークにいた。

 この事故は、エマとハリーを激しく憎悪するペドロ・マルティネスという男が仕掛けたもの。本作は全編を通して、このマルティネス家と、クリフトン家-バリントン(エマの実家)家の対立を描く。

 マルティネス家は偽札作りで財を成したギャングで、クリフトン-バリントンへの憎悪は、悪行の邪魔をされた「逆恨み」。だから「対立」と言っても、マルティネス家の攻撃と、それに対する防御だ。

 ここに「勧善懲悪」の分かりやすい構図ができあがる。単純な構図には良し悪しがある思うが、エンタテイメントとして安心して楽しめるところがいい。上手にハラハラさせてくれるので、退屈するということもない。

 前作「裁きの鐘は」のレビューで、主人公がハリーからセバスティアンに移ったのでは?ということを書いた。本作でそれはもっとハッキリした確信に変わった。冒頭に書いたように本作は7部完結の折り返し地点。まだこの後に「次のクリフトン」が登場するのだろう。

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チーム・バチスタの栄光

書影

著 者:海堂尊
出版社:宝島社
出版日:2006年2月4日 第1刷 2006年3月27日 第4刷 
評 価:☆☆☆☆(説明)

 2005年の「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。本書は2008年には映画とテレビドラマになり、さらに続編を重ねてシリーズ化されている。きっと面白いのだろうと、ずっと前から気になっていた。

 主人公は田口公平、41歳。東城大学医学部付属病院の神経内科教室の万年講師。「不定愁訴外来」という、不安や不満を抱えた患者を精神面でサポートする診療科の責任者。なかなか先進的な取り組みとも言えるが、実態はその通称が表している。それは「愚痴外来」。

 東城大学附属病院には最先端の医療チームがある。米国から招聘した外科医の桐生恭一が率いる、心臓移植の代替となるバチスタ手術の専門の、通称「チーム・バチスタ」。成功率6割と言われるバチスタ手術を26例連続で成功させ、その名声は轟いていた。

 まぁ言ってみれば、出世競争から降りた万年講師の田口は、「チーム・バチスタ」とは対極にいる。その田口が、桐生を含めてチームのメンバー全員を調査することになった。「チーム・バチスタ」に立て続けに3例の術中死が起き、病院長からその原因についての調査の特命を受けたからだ。果たしてこの術中死は、連続した不運なのか?医療事故なのか?それとも....。

 チームには医師の他に、看護師、臨床工学技士などコ・メディカルと呼ばれる医療スタッフがいる。その立場の微妙な違いや、病院内の対立や妬み、さらにはそれぞれの個人的な事情などを、巧みにストーリーに取り込んでいる。さらには、物語半ばで絡んでくる厚生労働省の調査官の白鳥圭輔が、ちょっと突き抜けた感のある個性的キャラクターで、飽きさせずに読ませる。

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