1.ファンタジー

コロボックル絵物語

書影

著 者:有川浩
出版社:講談社
出版日:2014年4月15日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「だれもが知ってる小さな国」は、有川浩さんが佐藤さとるさんの「コロボックル物語」を書き継いだ作品で、お二人ともが大好きな私にとっては「奇跡」のような作品だけれど、その先駆けとなる本があった。それが本書。

 本書は絵本。「コロボックル物語」をストーリーに取り込んだ物語。主人公は小学生の少女、ノリコ。お父さんとお姉ちゃんとで、お母さんのお墓参りに来たノリコの目に、何か小さな影がはねるのが写って...。

 絵本なのでストーリーは長くない。「コロボックル物語」にもページが割かれている。だから、あまりたくさん紹介してしまうと、読む楽しみがなくなってしまいそうなので、あらすじはここまでにする。

 「だれもが知ってる小さな国」は、まぎれもなく「有川作品」だった(もちろんそれはそれで良い)。それに対して本書は、有川さんがあくまで「コロボックル物語」の一愛読者として、その愛着を描き込んだものだと感じた。そう考えると本書は、佐藤さんの「コロボックル物語」から、有川さんの「だれもが知ってる小さな国」への、絶妙な橋渡しとなっている。

 小学生の女の子のことが、きめ細かく描き込まれている。これはもしや有川さん自身のことではないか?と思ったが、その質問の答えは「あとがき」に書かれていた。ノリコに「だれもしらない小さな国」を貸したのはお姉ちゃん。「家族」とか「姉妹」とか、そういうのもいいなぁ、と思った。

 佐藤さとるさんと有川浩さんの対談

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だれもが知ってる小さな国

書影

著 者:有川浩
出版社:講談社
出版日:2015年10月27日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 タイトルを読んで「これって、もしかしたら..」と思った人は、子どものころにそれなりに豊かな読書体験を持った方が多いだろうと思う。そう本書は、佐藤さとるさんの「コロボックル物語」を有川浩さんが書き継いだものだ。

 主人公はヒコ。物語の初めには小学校の3年生だった。「はち屋(養蜂家)」の子ども。蜜が取れる花を追って、両親とともに九州から北海道までを移動しながら暮らしている。

 それぞれの土地で、巣箱を置く場所は決まっているので、毎年同じ学校に戻ることになる。1年前に転出した学校に今年は転入する。その年も北海道の同じ学校に転入した。ただし昨年と違うことがあった。もう一人転入生がいた。その女の子の名はヒメ。彼女も「はち屋」の子どもだった。

 「はち屋」の仕事が屋外の晴れの日に行われることが多いせいか、物語全体に陽光が差したような明るい雰囲気に包まれている。ヒコのところには、コロボックルのハリーが訪れ、二人は友達になる。

 物語はこの後、ヒコとヒメの二人の暮らしを微笑ましく綴る。ボーイ ミーツ ガール。いつもよりも少し年齢が低いけれど、ここは有川さんの真骨頂だ。「コロボックル物語」の世界観に、有川ワールドが溶け込んでいる。これは奇跡だ、と思う。

 この奇跡は、佐藤さとるさんと有川浩さんの対談によって生まれた。佐藤さんがこう言ったのだ「有川さん、書いてみたら」。有川さんはその言葉に見事に応えたと思う。巻末の佐藤さんによる「有川浩さんへの手紙」が、それを証明している。佐藤さんは(眼が悪いのに!)一気読みしたそうだ。

 そして有川さんの、佐藤さんと「コロボックル物語」へのリスペクトは、冒頭の二行に現れている(分かる人にしか分からないけれど)。「二十年近い前のことだから、もう昔といっていいかもしれない。ぼくはまだ小学校の三年生だった。

 二人の作家の世代を越えたエールの交換に拍手。

 この後は書評ではなく、この本を読んで思ったことを書いています。お付き合いいただける方はどうぞ

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(さらに…)

ゆんでめて

書影

著 者:畠中恵
出版社:新潮社
出版日:2012年12月1日 発行 12月10日 2刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「しゃばけ」 シリーズの第9作。第1作「しゃばけ」、第5作「うそうそ」、前作「ころころろ」に続く4作目の長編(5編の連作短編)作品。しかし今回は、後述するようにとても斬新な構成になっている。

 タイトルの「ゆんでめて」は「弓手(ゆんで)馬手(めて)」で、弓を持つ「左手」と馬の手綱を握る「右手」という意味。本書の冒頭で一太郎が右の道を駆けて行く。本当は左の道を行くはずだった。ここは運命の分かれ道でもあった。

 一太郎は、兄の松之助の子どもの松太郎の祝いの席に居た。松太郎は4歳。元気いっぱいで、そのせいか松之助の店は明るさに満ちていた。ところが一太郎は元気がない。元来が病弱なので珍しいことはないのだけれど、今回は別の理由があった。友でもある妖の「屏風のぞき」が行方不明なのだ。

 こうして始まった後は、いつものようにちょっとした謎解きや、登場人物たちの大騒ぎが、楽しく綴られていく。2編目の「こいやこい」には、可愛らしいお嬢様が5人も登場して、なんとも華やかだし、3編目の「花の下にて合戦したる」は、オールスターキャストの装いで、4編目の「雨の日の客」にも懐かしい人が出てくる。本書は読者サービスの巻かと思う。

 そんな感じで楽しく読めるのだけれど、本書はそれだけでなく、とんでもない大仕掛けが仕掛けられている。冒頭の「兄の松之助の子どもの~」のくだりは、前作まで読んでいる読者が知らないことばかりで、明らかに時間が飛んでいる。実は本書は、短編を読み進めるごとに時間を遡る仕組みになっているのだ。

 「解説」にも書かれていたけれど、著者は各巻ごとに様々な工夫を凝らしている。短編集あり、連作短編集あり、長編もあり、時に主人公を変えてみたり。しかしシリーズ9作目にして、ここまで実験的な試みをするとは驚きだ。しかも「解説」によると、続巻も「括目して待て」とのことで、とても楽しみだ。

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アルケミスト 夢を旅した少年

書影

著 者:パウロ・コエーリョ 訳:山川紘矢+山川亜希子
出版社:KADOKAWA
出版日:1997年2月25日 初版発行 2014年2月5日 50刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 本書は、1988年にブラジルで発表されて、大きな評判を呼んだ。その後に英語を始めとして各国語に翻訳され、世界的なベストセラーとなった。ブラジルではもちろんフランスやイタリアなどでもベストセラーリストの1位に何回も顔を出し、各国で文学賞を受賞しているそうだ。日本語訳は1994年に発行。

 主人公はサンチャゴという名のスペインの羊飼いの少年。ただ少年と言っても16歳まで神学校にいて、羊飼いとしての流浪のの暮らしを2年間しているので、物語の始まりの時で18歳ぐらい。

 サンチャゴは「エジプトのピラミッドに来れば、隠された宝物を発見できる」という同じ夢を二度見た。彼は夢を解釈してくれる老女に会い、セイラムの王メルキゼデックを名乗る老人に会い、彼らの言葉に従ってエジプトを目指すことになる。

 この後サンチャゴは、騙されたり危ない目に会ったり、助けられたり導かれたりして、エジプトへ向かう旅路を行く。「困難を乗り越えて目的地に達する」パターンで、ドラマあり教訓もありなのだけれど、正直に言って、最近の類似の物語に比べると、圧倒的に「もの足りない」。

 だから、この物語が世界的なベストセラーになったのは、冒険のハラハラドキドキに、読者が興奮したからではない。むしろ「興奮」とは逆。随所にちりばめられた「勇気付けられる言葉」「ハッとさせられる言葉」を、ひとり「静かに」胸に納めるようにして、この本が大事な本となったのだろうと思う。

 例えば、クリスタル商人の言葉。受け止め方は様々だろう。私は、自分の中にこんな考えがないか、自問してみた。

 今の店は、わしが欲しいと思っていたちょうどその大きさだ。わしは何も変えたくない。どうやって変化に対応したらいいかわからないからだ。わしは今のやり方に慣れているのだ。

 もう一つ。メルキゼデック王の言葉。

 人は人生のある時点で、自分に起こってくることをコントロールできなくなり、宿命によって人生を支配されてしまうということだ。それが世界最大のうそじゃよ

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バケモノの子

書影

著 者:細田守
出版社:KADOKAWA
出版日:2015年6月25日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 多くの紹介は必要はないだろう。細田守監督の同名の映画が現在公開中。公開18日で約212万人の観客動員というヒット作になっている。本書はその原作小説で、細田監督自身による書き下ろしだ。

 主人公の名は蓮。9歳の時に母親が交通事故で亡くなった。父親は以前に母親と離婚している。そのため、母の親戚たちに引きとられることになった。しかし、蓮はそれを拒否して一人で生きていくことを選ぶ。

 この後、蓮は「バケモノの世界」に迷い込んで、「熊徹」という名の乱暴者の弟子となる。そして「九太」という名で生きていく。物語は「バケモノの世界」での「人間の子」の九太の成長を中心に描く。

 映画公開後20日あまりなので、ストーリーについてはこれ以上触れない。ただ、とてもよく練られたストーリーだと言っておく。少年の成長、それと裏腹の孤独、抱えた闇、もう一つの世界、冒険、衝突、回復、再生。

 私は「映画」を先に見て「小説」を後から読んだ。監督自身による書き下ろしということもあって、ストーリーに違いはない。違いはないけれど、この順番でよかったと思う。「映画」を観てワクワクした。「小説」を読んで「あのシーン」の意味がよく分かった。

映画「バケモノの子」公式サイト

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さびしい女神 僕僕先生

書影

著 者:仁木英之
出版社:新潮社
出版日:2010年4月20日 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「僕僕先生」「薄妃の恋」「胡蝶の失くし物」につづくシリーズ第4弾。元ニート青年の主人公の王弁と、彼が師と仰ぐ仙人の僕僕先生の旅を描く。今回は前作で道連れとなった苗人の姫「蚕嬢(故あって巨大な蚕の姿をしている)」の国での物語。これまで3作は連作短編の形を取っていたが、今回は長編だ。

 蚕嬢の故郷である峰西は隣の峰東とともに、ひどい日照りに苦しんでいた。山の頂にある社におわす神に仕える巫女が、勤めの途中で逃げ出したことが原因らしい。その巫女がだれあろう「蚕嬢」。蚕の姿をしているのはその報い。ああなるほどそういうことか。

 この蚕嬢の話とは別に、主人公の王弁は山の頂で女神と出会う。「女神」という言葉から想像する麗しさとはかけ離れた姿。がさがさの体にくちびるからはみ出た歯、鼻は上を向き目は左右で極端に大きさが違う。名を「魃(ばつ)」という。

 これまでで一番読み応えがあった。長編ということもある。ただそれ以上に、スケールが大きいことと、これまで秘められた様々なことが分かってきたことが、その理由だ。なんと言っても今回の物語は、天地に秩序をもたらした神々の戦いに端を発している。僕僕先生その人も関係している。

 知らぬ間に逞しくなった王弁は、この度は師匠の僕僕先生の言うことを素直にきかない。これまでは二人の関係がどうなっていくのか?というのは、いわばただの下世話な興味を引いていただけだ。僕僕先生の「ありのままの姿」が垣間見えた今は、それがこのシリーズの大きなテーマへと変貌したように思う。

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胡蝶の失くし物 僕僕先生

書影

著 者:仁木英之
出版社:新潮社
出版日:2009年3月20日 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「僕僕先生」「薄妃の恋」につづくシリーズ第3弾。元ニート青年の主人公の王弁と、彼が師と仰ぐ仙人の僕僕先生の旅を描く。前作で僕僕先生が救いの手を差し伸べた、薄妃を道連れにして中国大陸を南下していく。

 僕僕先生と王弁は、行く先々で病や災害に苦しむ人々を救って来た。感謝されることはあっても、恨まれることはないはずなのだけれど、「救世主」を喜ばない人々も存在する。今回の物語の発端は、朝廷の何処かから発せられた僕僕先生の暗殺指令。

 今回も面白かった。川を司る女神、巨大な蚕の姿をした少女ななど、多彩な登場人物たちが個性的でかつ憎めない。女神とか高僧とかの恐れ多い立場の人たちも人間臭いし、殺し屋さえ心の隅に優しさを抱えている。

 仙人としての術も、剣術などの武芸も、どれを取っても超絶強い僕僕先生だから、何事が起きても危なげないのだけれど、弟子の王弁くんがいろいろやらかしてくれる。

 僕僕先生と王弁くんの関係がどうなっていくのか?本書のラストによると、旅はまだまだ続きそうだから、しばらく楽しめそうだ。

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ころころろ

書影

著 者:畠中恵
出版社:新潮社
出版日:2011年12月1日 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「しゃばけ」 シリーズの第8作。第1作「しゃばけ」、第5作「うそうそ」に続く3作目の長編(5編の連作短編)作品。

 前作「いっちばん」で18歳になっていたはずの、廻船問屋「長崎屋の」跡取り息子で主人公の一太郎が、最初の短編「はじめての」では12歳になっていた。これはどういうことか?と思ったが、どうやら12歳のころの出来事が、今回の事件の発端となっているらしい。

 「今回の事件」とは一太郎が失明してしまうことだ。2つめの短編「ほねぬすびと」の冒頭、布団で目覚めた一太郎の目には暗闇しか映らなかった。病弱で始終寝込んでいる一太郎だけれど、今回の原因は病ではないらしい。

 そんなわけで一太郎の目に光を取り戻すことが、本書の長編としてのテーマになる。それぞれの短編は、それぞれちょっとした謎を追いかけるミステリーになっている。長短の両方の展開が楽しめる作りになっている。

 面白かった。一太郎や「長崎屋」の面々ら人間と、一太郎の周辺にたくさん集ってくる妖らといった、いつものメンバーに、今回はなんと「神さま」が加わっての騒動は、賑やかだった。

 文庫には漫画家の萩尾望都さんと著者の畠中恵さんの対談が収録されている。

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野に出た小人たち

書影

著 者:メアリー・ノートン 訳:林容吉
出版社:岩波書店
出版日:1969年5月20日 第1刷 2004年4月5日 第13刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 スタジオジブリ作品「借りぐらしのアリエッティ」の原作「床下の小人たち」の続編。

 前作で住んでいた大きな家の床下を追い出された、小人のアリエッティと、そのお父さんのポッド、お母さんのホミリーの3人家族のその後の冒険。

 アリエッティたちは、ホミリーの兄であるヘンドリアリたちが暮らしている(はずの)アナグマの巣を目指す。それは土手を登り生垣を通り抜け果樹園を通過して...アリエッティたち小人にとっては大変な道のりだ。

 それでも何とか辿りついたけれど、それからが大変。小人たちは基本的にひっそりと隠れるように暮らしている。ヘンドリアリたちもそれは同じ。簡単には見つからない。途中で見つけた「編み上げぐつ」を家がわりにして暮らしながら、じっくりと探すことに。物語はこの間の出来事を中心に描く。

 お父さんのポッドは、ちょっと理屈っぽいけれど頼りになる。お母さんのホミリーは感情的で気ままなところがあるけれど、誰よりも家族想いだ。アリエッティは好奇心がいっぱい。デフォルメされているけれど、3人で家族のいいバランスを感じる。

 なかなかスリリングな冒険譚で楽しめた。章タイトルがアリエッティが付けていた「日記格言集」からの引用の格言になっているのだけれど、これがその章の内容にうまくはまっていたり、微妙な感じだったりする。章タイトルではないけれど、なかなか良い格言をひとつ「酒がはいれば、知恵が出ていく」

 本書だけでも楽しめるけれど、はやり前作「床下の小人たち」から順番に読んだ方がいいと思う。ちなみにシリーズは全5巻ある。

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ダンス・ウィズ・ドラゴン

書影

著 者:村山由佳
出版社:幻冬舎
出版日:2012年5月25日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 著者のことは、私が入っている本好きのためのSNS「本カフェ」などで何度か評判になったことがあって気になっていた。 直木賞受賞の「星々の舟
」や中央公論文芸賞他のトリプル受賞となった「ダブル・ファンタジー
」などが代表作なのだろうけれど、手に入った近著の本書を読んでみた。

 ドラゴンを巡る4つの物語をつなぐ連作短編集。井の頭公園の自然文化園の中にある図書館が主な舞台。その図書館は自然文化園の閉園中にだけ、それも図書館自身に「呼ばれた」人だけがたどり着くことができる不思議な図書館。

 29歳の滝田オリエは、この図書館で司書として働くことになった。そこで住居として用意された洋館に住み始めてしばらくしたころ、「屋根裏部屋へ上がるように」という伝言が届く。そこでオリエはドラゴンに遭遇する。

 4つの物語にはそれぞれ主人公がいる。オリエの他の主人公たちもそれぞれにドラゴンや竜との縁が深い。そしてそれぞれが、圧倒的な疎外感や孤独、背徳感や悔恨を胸に抱え込んでいる。哀しい、しかしもの凄い吸引力をもった物語で、強く深く引き込まれてしまった。

 井の頭公園は繁華街から近い。そこにこんな不思議な空間が広がっている。本書は、私たちの暮らしと隣り合わせにある異世界を艶めかしく描いている。他の作品も読んでみたい。

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