23.森見登美彦

「有頂天家族」テレビアニメ化。「聖なる怠け者の冒険」発売。

 少し前に、森見登美彦さんに関する情報が、立て続けに報じられました。まず森見さんの人気小説「有頂天家族」の今年7月のテレビアニメ化が決定したそうです。

 私は、3年前に「四畳半神話体系」がアニメ化された時に書いた記事で、「アニメ化にもっと向いたいい作品」として、この「有頂天家族」を挙げていましたから、私としては待ちに待ったアニメ化です。

 TVアニメ「有頂天家族」公式サイト
 ※ただ「どの放送局で」ということが、見あたりません。何か訳があるのでしょうか?

 次は、「聖なる怠け者の冒険」の発売決定です。5月21日だそうです。この本は、朝日新聞に2009年から2010年に連載された新聞小説を改稿したものです。これまでに公式非公式を合わせて何度か、発売情報が流れては延期になっていました。

 ネット書店などでの登録がないのが、気がかりではありますが、この度は、森見さんご自身の公式ブログでの告知、それも2か月後のことですから、もう確実でしょう。

 これまでの延期は、森見さんの長期にわたる体調不良が理由だと推察されます。その意味ではこの発売は回復の兆しでもあるわけで、私はそれが何よりもうれしいです。

 森見登美彦さん公式ブログ「この門をくぐるものは一切の高望みを捨てよ」

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森見登美彦の京都ぐるぐる案内

書影

著 者:森見登美彦
出版社:新潮社
出版日:2011年6月30日 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 森見登美彦さんによる京都のガイドブック。これまでに膨大な数の「京都のガイドブック」が発行されたことと思うが、これほど私的な偏りのあるガイドブックは、そう多くないだろう。「左京区」に多くの誌面を割いているのだけれど、銀閣寺も南禅寺も平安神宮もない。それは、著者のその場所に対する思い入れの程度によるのだろう。

 それなら何処が載っているのかというと、「鴨川デルタ」「下鴨神社」「京都大学」「進々堂」「吉田山」...(掲載順)。ここに挙げた全部にピンと来た方は、かなりの京都通か、森見登美彦通だろう(3番目の「進々堂」の難易度が高い)。
 森見登美彦通の方はもうお分かりと思うが、このガイドブックに載っている場所は、著者の思い入れがあるだけではなく、その作品に登場した場所だ。「左京区」の他には、四条大橋や叡山電車、それから「竹林」なんてのもある。それぞれの場所のページには、そこが登場した作品の1節が載っている。

 はっきり言って、これは著者の作品のファンに向けられた本だと思う。映画やテレビドラマの舞台やロケ地が、観光地として賑わっているそうだけれど、そのノリだ。作品に登場したあの場所の写真を見て、「こんなところだったんだ」と思い、「いつか行ってみよう」と誓う。...ということで、森見ファンにおススメ。

 ※森見登美彦さんのブログ「この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ」によると、森見さんは現在、病気療養中だそうです。一日も早いご回復を祈ります。

 この後は、ちょっと私事を話しています。お付き合いいただける方は、どうぞ

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ほっと文庫「ゆず、香る」「郵便少年」ほか

書影

著 者:有川浩、森見登美彦、あさのあつこ、西加奈子
出版社:バンダイ
出版日:2011年8月1日
評 価:☆☆☆(説明)

 おもちゃ・ホビーのバンダイと角川書店のコラボレーション商品。30ページほどの短編小説に、その小説に登場する色と香りの入浴剤が1包付いている。全部で6種類発売されている内の4種類を買って読んでみた。

 読んだのは、有川浩さん「ゆず、香る」、森見登美彦さん「郵便少年」、あさのあつこさん「桃の花は」、西加奈子さん「はちみつ色の」の4つ。前の3人は、私が好きな作家さんで、西さんは「もし面白かったら他の作品も読んでみよう」と、新規開拓のつもりで選んだ。

 面白かった順も上に書いた順のとおりだった。まぁ好きな作家さんの順に書いたので、好きな作家さんの作品が面白かった、という至極当たり前の結果になっただけ、とも言える。

 それぞれを簡単に紹介する。「ゆず、香る」は、王道のラブストーリー。コラボ作品としてハマり過ぎな感じ。「郵便少年」の主人公は、たぶん「ペンギン・ハイウェイ」のアオヤマ君。悲しくもほのぼのとした作品。「桃の花は」は、30歳の女性の遠い昔の記憶をめぐる不思議な物語。「間に合ってよかった」と思えるいい話。「はちみつ色の」の主人公の小学生の母親は小説家。自分の誕生日に「誰からもおめでとうメールが来ねぇ」と憤っているような人。新規開拓のつもりだったが、私には合わなかったらしい。

 それぞれの著者のファンで、(399円払っても)30ページの書き下ろし短編が読みたい、という方にはおススメ。「小説と入浴剤のセットって、ちょっと面白そうじゃない?」という方もOK。

※この商品は入手困難になっている。私も1週間前に、近くの書店、ホームセンター、ドラッグストアを何軒か回ったが売っていなかった。商品のホームページに載っている「商品お取扱店舗」にも行ってみたが、チェーンの場合、全店にあるわけではないらしい。
 今日(2011.8.20)現在では、ネット書店で取り扱いがあるようだけれど、「ゆず、香る」と「郵便少年」は、Amazonでは在庫がなくて「9月26日入荷予定」になっている。
 1週間前には他のも在庫がなかったので、私はバンダイのショッピングサイト「プレミアムバンダイ」で購入した。ここなら今も買えるようだ。(ただし送料が525円(税込)かかる。399円のものを買うのにこの送料はちょっと痛い)

 ここからは書評ではなく、この商品についてちょっと気になったことを書いています。お付き合いいただける方はどうぞ

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四畳半王国見聞録

書影

著 者:森見登美彦
出版社:新潮社
出版日:2011年1月30日 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 モリミーの最新刊。yom yom、小説新潮、ユリイカといった小説誌に掲載した短編が7編収められた短編集。掲載誌が3誌あって、掲載された時期もまちまちなのだけれど、登場人物たちがほぼ共通しているので、連作短編といって良いだろう。

 単行本の刊行順で言うと、本書の前が日本SF対象を受賞した「ペンギン・ハイウェイ」、その前は「宵山万華鏡」。著者の作品と言えば思い浮かぶ「腐れ学生」モノからは、ちょっと距離を置いた作品が続いた。そして本書は..「四畳半神話大系」を彷彿させるタイトルでお分かりだろう。愛すべきダメダメ学生たちが帰ってきた。

 最初の一編「四畳半王国建国史」に慄いた。「四畳半王国」の国王が、京都は東山のふもとにある「法然院ハイツ」の一階の四畳半に、いかにして無限の空間を有する「王国」を築いたかが記されている。もちろん妄想が全開した産物だ。著者の作品の愛読者の私も、最初からこのペースで飛ばされたのでは付いて行けない、と思った。巻末の初出一覧で、これが現代思想誌の「ユリイカ」に載ったの知って、再び慄いた。

 このように最初の一編はなかなか手強かったが、二編目の「蝸牛の角」以降は大丈夫だ。大丈夫というのは、これまでの著者の「腐れ学生」モノのペースが戻った、ということ。京都の無益な営みに明け暮れる学生(つまり「腐れ学生」)たちが奉じる、「阿呆神」という神様の周辺の物語。詭弁論部や図書館警察などお馴染みの組織や、大日本凡人會、四畳半統括委員会などが活躍(暗躍?)する、著者のメイン路線とも言える作品。

 私はとても楽しんだ。登場する黒髪の乙女のセリフが、本書を端的に表している。
 「見渡すかぎり阿保ばっかり」

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日本SF大賞に「ペンギン・ハイウェイ」

 日本SF作家クラブによる「第31回日本SF大賞」を、森見登美彦さんの「ペンギン・ハイウェイ 」と、長山靖生さんの「日本SF精神史 」の2作品が受賞しました。

 「ペンギン・ハイウェイ」について、腐れ大学生でもない、舞台が京都でもない、「著者の新しい引き出しが開いた」と、以前にレビューに書きましたが、新しい引き出しから出てきた新しい物語は、優れたSF作品として認められたようです。

 もう一つの受賞作「日本SF精神史」は未読ですが、「BOOK」データベースによると、「文学史・社会史のなかにSF的作品を位置づけ直す野心作。」と、なかなか魅力的な本のようです。

 日本SF作家クラブのサイト

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ペンギン・ハイウェイ

書影

著 者:森見登美彦
出版社:角川書店
出版日:2010年5月30日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「また1つ、著者の新しい引き出しが開いた」そんな感じがした。本書は著者の最近刊。月刊誌に2007年から2008年にかけて掲載したものに大幅に加筆したそうだ。著者は「太陽の塔」「四畳半神話大系」で、臭うような腐れ大学生を描いて登場し、「きつねのはなし」「宵山万華鏡」で妖かしの京都を描いた。エンタテイメント作品の「有頂天家族」もある。
 「腐れ大学生」にインパクトがあってクローズアップされがちだけれど、このように色々な物語を次々とつづっている。ただし、そこにはいつも「濃密な空気感」があった。しかしこの作品に感じる空気は淡彩画のようにとても淡い。これはまったく別の引き出しから出てきたもののようだ。

 主人公はアオヤマ君。郊外の街に住む小学校4年生の男の子だ。彼は毎日きちんとノートを取る。授業だけではなく、毎日の発見をノートに記録している。そうしてたくさんの「研究」をしている。「昨日より今日はえらくなる」ことを自分に課していて、大人になった時にどれだけえらくなっているか見当もつかない、と思っている。
 まぁ、「子どもらくない」こと甚だしいのだけれど、これが意外と憎めない。もちろん同級生のガキ大将キャラのスズキ君たちの受けはすこぶる悪く、自動販売機に縛り付けらてしまったりする。そこを歯科医院のお姉さんが通りがかって「なにしてるの、少年」と聞かれて彼は、「自動販売機ごっこです」と答える。クールすぎる。

 物語の発端は、歯科医院の隣の空き地に突然ペンギンが何羽か出現したこと。そして、トラックで運ばれる途中で姿を消してしまった。現れた時と同じように突然に。こうしてアオヤマ君は、一緒に探検隊を組んでいるウチダ君とともにペンギンの「研究」をはじめる。途中から同級生のハマモトさんも加わって謎の解明を進める。けれども謎は深まるばかり、というストーリー。(ハマモトさんは、「E=mc2」と書かれたアオヤマ君のノートを見て「相対性理論?」と聞く、とってもキュートな女の子なのだ)

 とても楽しめた。今までの著者の作品(とくに腐れ大学生)のようなものを期待すると薄味すぎて物足りないかもしれない。でも、アオヤマ君の研究テーマの1つには「歯科医院のお姉さん」というのもあって、そのために彼はお姉さんのまるいおっぱいを観察する。頻繁にこの4文字が出てくるあたりは著者らしいといえばその通りだ。
 「誰々に似ている」という言い方は著者に失礼な気がするのであまり好きではないのだけれど、本書は「もし村上春樹さんが小学生を主人公にして書いたら」こんな感じかな、と思った。この街には「海辺のカフェ」というカフェがあるのだけれど、その字を見るたびに「海辺のカフカ」を思い出してしまったからそう思うのかもしれない。この1文字違いは偶然なのか?

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 この本は、本よみうり堂「書店員のオススメ読書日記」でも紹介されています。

伊坂幸太郎さん、森見登美彦さん、Web文芸誌に執筆

 「ニュース記事を運ぶジェイムズ鉄道」のジェイムズ鉄道さんからトラックバックで、とても有用な情報をいただきました。ジェイムズ鉄道さんに感謝。

 出版社のイースト・プレスが、Amazon.co.jpと連動したWeb文芸誌「マトグロッソ(MATOGROSSO)」を、5月24日に公開しました。サイトの紹介文によると「何かに気がついた時、また何かを感じ取ったとき、それを言葉にして伝えたくなる。そんな書き手の方たちにのびのびと筆をふるっていただく場」として誕生したとのことです。

 現在は「読みもの」と「今日、なに読んだ?」の2本建て。「読みもの」は、森見登美彦さん、内田樹さん、萩尾望都さんらの連載などが読めます。「今日、なに読んだ?」は、伊坂幸太郎さん、高橋源一郎さんの読書/音楽日記です。なんと豪華な顔ぶれでしょう。ネットの楽しみがまた1つ増えました。

※「マトグロッソ」はAmazon.co.jpの「文芸・評論」「和書」ストアなどのバナーからアクセスできます。

ラジオドラマ「有頂天家族」放送決定

 先日のアニメ「四畳半神話大系」続報に続いて、森見登美彦情報が入ってきました。NHK FMのラジオドラマ「青春アドベンチャー」で、森見さんの最高娯楽作品「有頂天家族」を放送する予定です。6月21日(月)~7月2日(金)までの月~金の10回、22:45~23:00の放送です。

 これは2008年に放送されたものの再放送なんです。このラジオドラマがあったことを、放送後にどなたかに教えていただいて知って、とても残念に思ったことを覚えています。なにしろ「有頂天家族」は、私としては今でも森見作品の中の(「宵山万華鏡」も良かったけれど、僅差で)ナンバー1ですから。

 実は先日、加納朋子さんの「モノレールねこ」の中の短編、「バルタン最後の日」の朗読が、NHK第一の「ラジオ文芸館」でありました。知ったのが当日の夕方だったので、ブログで紹介するタイミングがなかったのですが、その時に家のコンポでラジオの録音予約ができることが分かったので、今回も録音して聞くつもりです。しばらくはラジオがプチマイブームになるかも?

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アニメ「四畳半神話大系」続報

 以前に「「四畳半神話大系」アニメ化決定!」という記事で紹介したとおり、森見登美彦さんの小説「四畳半神話大系」が、フジテレビのノイタミナでアニメ化され、4月から放送されています。セリフ回しがすごく速いのですが、原作の腐れ大学生のグダグダ感をしっかり感じられる。奇跡のようです。早口のセリフをよく聞くと、ほとんど意味がないんです。何という巧みな演出でしょう。

 それから、リンクを貼っていただいているchaiさんのブログ「chaiの細道」に、アニメ「四畳半神話大系」の情報が紹介されていました。登場人物の黒髪の乙女「明石さん」が着ているシャツを、京都の「モリカゲシャツ」さんが再現して販売するそうです。
 センスも質もいいシャツを作られている、有名なお店なんだそうです。980~1980円のシャツばかりを着回している身にはちょっとお高いように感じますが、そんな私でも「素敵だな」とか「カッコいいなぁ」と思うシャツがウェブサイトの画面に並んでいます。

 追加情報をもう一つ。森見さんとアニメの脚本を担当された上田誠さんが「はてなブックマークニュース」で対談されています。アニメ化のウラ話などがあって、面白いですよ。

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「四畳半神話大系」アニメ化決定!

 ネットを回遊していたら「四畳半神話大系」アニメ化決定!、という文字が飛び込んできました。フジテレビノイタミナで4月から放送だそうです。正直に言って最初は冗談だと思いました。コミック化や舞台化などのメディアミックスの実績がある森見登美彦作品ですが、よりによって最も男汁が濃いと思われる腐れ大学生が、テレビでお茶の間に登場するなんて...

 アニメ化なら森見作品にはもっと向いたいい作品があります。「有頂天家族」なんて最高にアニメ向けです。「宵山万華鏡」なら、妖しくも幻想的な雰囲気がアニメにはまりそうです。「夜は短し歩けよ乙女」でもいいです。公式ページを見ると、キャラクター原案は「夜は短し~」の表紙イラストを描いた中村佑介さんだというじゃないですか。

 ノイタミナと言えば、木曜24時45分からという深夜枠ながら「図書館戦争」や「のだめカンタービレ」などの話題のヒット作も多いです。あまりの衝撃にうろたえて文句を並べてしまいましたが、実はとても楽しみです。きっと予約録画して見ます(笑)

ノイタミナ「四畳半神話大系」公式ホームページ
本読みな暮らし:四畳半神話大系
本読みな暮らし:有頂天家族
本読みな暮らし:宵山万華鏡
本読みな暮らし:夜は短し歩けよ乙女
本読みな暮らし:図書館戦争

(2010.4.23 追記)
録画し忘れました(泣)。フジテレビはケーブルテレビの再送信で観ているので、録画予約がちょっと面倒で、後回しにしておいたのがいけなかった。5月8日深夜からBSフジでも放送されるので、そっちに回ります。

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