ねぇ、委員長

著 者:市川拓司
出版社:幻冬舎
出版日:2012年3月10日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 娘が通う高校の「図書館だより」で紹介されていた本。幻冬舎の隔月誌「パピルス」に掲載された短編2編と、書き下ろしの1編の3つの物語が収録されている。どれも中高生の「恋」を描いている。

 1編目の短編「Your song」の主人公は、高校の陸上部の長距離選手の女子。体育館の物置で、同級生男子の魅力的な歌声を聴く。彼は、授業中にいなくなったと思うと、向かいの校舎の屋上で、気持ちよさそうに歌を唄っていたりする。まぁ「自由」ではあるけれど、生徒からも先生からも疎まれている。

 2編目は「泥棒の娘」。30ページ足らずの短い作品。こちらの主人公は中学生の男子の「ぼく」。彼は転校してきた学校で、彼より前に転校してきた「彼女」と出会う。「彼女」は、いつも小さなラッパ(コルネット)を持ち歩き、授業中にも歌を口ずさんだ。だから目立ち過ぎていて、多くの生徒たちに嫌われていた。

 3編目は、本書の表題作の「ねぇ、委員長」。書き下ろしの130ページの中編。主人公は、成績優秀な学級委員長の女子高校生。発作を起こして通学路で座り込んでいるところを、通りがかった同級生の男子に介抱される。彼は「学校一の問題児」。

 並べると一目瞭然。主人公が恋する相手が、周囲から疎まれている「問題児」、という物語の構成が全く同じだ(加えて3編とも「主人公の昔語り」で、物語が語られる)。統一感があると言えばいいのだけれど、正直に言うとワンパターンに倦んでしまいそうだった。男の子たちのセリフが、妙にキマっているのも、少し興ざめだった。

 ただ、表題作「ねぇ、委員長」は、比較的長い作品だったこともあって、主人公の心情が良く描けていて良かった。「昔語り」も、他の作品よりも活きている。この設定では「優等生が大人びた問題児に魅かれて恋に落ちる」というだけの、何とも底の浅い陳腐な話になってしまいがちだけれど、2人の境遇を描きこむことによって、かろうじてその陥穽を免れている。

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