永遠の0

著 者:百田尚樹
出版社:講談社
出版日:2009年7月15日 第1刷発行 2013年12月2日 第47刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 今年最初のレビューは、昨年の「今年読んだ本ランキング」の1位「海賊と呼ばれた男」の著者のデビュー作である本書。デビュー作というよりも「映画が大ヒット中の作品」と紹介した方が分かりやすいかもしれない。先月21日の公開後2日間で動員約43万人だそうだ。

 「0(ゼロ)」は零戦のゼロ。念のために補足すると、第二次世界大戦時の大日本帝国海軍の戦闘機のこと。本書は、この零戦の搭乗員であった宮部久蔵という名の男の物語。主人公は宮部の孫の佐伯健太郎。健太郎が祖父を知る人々を訪ねて話を聞く。一つ一つの話が折り重なって、60年あまり前の一人の「青年」の生き様が浮かび上がる。

 上で「青年」としたのは、この物語が昭和16年から20年、宮部の23歳から26歳の時のものだからだ。飛行訓練の教官を務め「熟練搭乗員」と呼ばれるので、つい「壮年の男性」をイメージしてしまうのだけれど、まだ20代なのだ。周囲の人々も総じて若い。多くは10代から20代の若者。そのことを思い返すとより一層胸が痛む。

 浮かび上がるのは「青年」宮部の生き様だけではない。当時の日本がどのような戦い方をしたのか?いかにして破滅的な特攻作戦に突き進んでいったのか?という当時の時代のあり様が浮かび上がる。さらには、残された人々の現在にいたる60年余りの時間も...。私は、宮部の教え子のある特攻要員の妻の一言が胸に刺さった。

 醒めたことを言って恐縮だけれど、「十死零生」と言われる特攻は「泣ける」という意味ではテッパンのテーマだ。文庫歴代売り上げ1位という300万部超も、映画の大ヒットも一番の要因はここだろう。ただしそれだけではない。この作品を「泣ける」物語として消費してしまってはもったいない。この作品によって、あの戦争を知識としてではなく、記憶として留めたい。

 最後に。正直に言って読みやすい本ではない。プロローグと第1章に「つかみ」はあるものの、その後に長く続く「戦争語り」は、あの戦争をしっかり描写することを意図したものなのだろうけれど、読者に優しいものではない。本書を手に取った人は、少しガマンすることになるかもしれないけれど、先へ読み進めてほしい。

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