空色メモリ

著 者:越谷オサム
出版社:東京創元社
出版日:2009年11月30日 初版
評 価:☆☆☆(説明)

 本好きのためのSNS「本カフェ」の読書会の1月の指定図書。

 ベストセラー+映画化となった「陽だまりの彼女」の著者の作品。「陽だまりの彼女」は25歳の会社員を主人公にしたラブストーリーだったけれど、本書は高校2年生男子を主人公にした青春ミステリー。

 主人公の桶井陸は、体重98キロ、ウエスト115cm。つまりデブ。デブであること自体を悩んでいる風はないのだけれど、友達の一人が「ぶーちゃん」と呼ぶのが本当は嫌だ。そして彼は、部員が部長一人しかない文芸部に(部員ではないけれど)入り浸っている。

 物語のきっかけは、その文芸部に新入生の女子が一人入部したこと。そして部長の河本博士(通称ハカセ)が、その新入生の野村さんを好きになってしまう。ここまで約20ページ。あまりモテない男の子の恋を描く、という青春小説の王道が冒頭から展開される。

 ところが野村さんには、付き合っているイケメンの彼氏がいるらしい。報われない恋、これも王道。でもこの後は、野村さんに脅迫状が届くとか、陸も正体不明の相手から脅されるとか、「野村さんは実は...」とか、ミステリー要素が配分された展開で、面白い読み物になっている。

 陸がなかなかいいヤツで、ハカセと野村さんの仲を取り持ったり、ハカセにアドバイスしたりする。そんな彼が私は好きだ。汗をかくことや体臭を気にしている「デブネタ」が痛々しい。ふざけて小突く力は、相手を怒らせないように慎重に加減している。失礼ながらデブでなければ、もっと自分に自信が持てて、男女ともに人気もあったことと思う。

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