本を読む人だけが手にするもの

編  者:藤原和博
出版社:日本実業出版社
出版日:2015年10月1日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 著者は元リクルートのフェロー(年俸契約の客員社員)。それよりも東京都で義務教育では初の民間校長となった「元杉並区立和田中学校校長」、と言った方が分かる方が多いかもしれない。その後は、自治体や首長の特別顧問やアドバイザーなどを歴任している。

 このタイトルに加えて、見返しには「これから先の日本では(中略)「本を読む習慣がある人」と「そうでない人」に二分される”階層社会”がやってくるだろう」と書いてある。「本を読む習慣がある人」だと自分で思っている私にとって、とても魅力的に見えた。

 「読書の効用」をうたう本は他にも多くある。本書も読書は「想像する力」「集中力」「バランス感覚」などなどが身につく、という効用をうたう。本書の特長はそういった個別の効用を挙げるだけなく、読書が「人生を切り拓くためには欠かせない」という筋を一本通していることだ。

 かつては「ちゃんと」していれば、みんな一緒に幸せになれた。しかし成熟社会を迎えて「みんな一緒に」はなくなり、「人生を切り拓く」ためには、一人ひとりが「自分の幸福論」を築かなくてはいけい。そのためには、知識・技術・経験の蓄積が必要になる。それらを得るには読書が欠かせない。

 読書で身につく効用のうち、特に印象に残ったことを一つだけ。「複眼思考(クリティカル・シンキング)」のことだ。「複眼思考」というのは、一つのことを「反対側から見たら違うのではないか?」と、別の視点から見てみることだ。

 テレビでコメンテーターの意見を聞いたら、「そうじゃないんじゃないか?」と一旦は疑って検証する。そういうことを繰り返す方法でしか「自分の意見」は得られない。それをしないで「なるほどそうか」と受け入れてしまったら、それはコメンテーターの意見であって、自分の意見ではないからだ。

 この複眼思考による検証には、経験や知識のたくさんのインプットが必要になる。ちょっと逆説的だけれど、たくさんの人の意見にも触れた方がいい。個人ではそれらを「生の体験」として得るのは難しい。それを補うのは「読書」で得る「他人の体験」だ、というわけだ。

 最後に。巻末に「これだけは読んでほしい」と思う本・50冊、というブックリストが付いている。ここだけでも目を通しておく価値ありだと思う。

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