格闘するものに○

著 者:三浦しをん
出版社:草思社
出版日:2000年4月14日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 2006年に「まほろ駅前 多田便利軒」で直木賞を受賞、。「風が強く吹いている」「仏果を得ず」「神去なあなあ日常」などのヒット作で知られる、人気作家の著者のデビュー作、2000年の作品。

 主人公は藤崎可南子。就職活動中の文学部の学生。就職希望先は出版社。漫画編集者になりたいのだ。可南子が情熱を持って取り組んだことと言えば、漫画を読むことぐらいで、漫画については一家言ある。
 ただし就職活動には向いていないようだ。「平服で」を「ファッションセンスを見るのだな」と解釈して、気合を入れて黒ずくめに豹柄のブーツで面接に出かけたり、ちょっと立ち寄った古本屋で、高値で取引されている「キン肉マン」を見つけて、嬉しくなって面接を忘れて帰ってしまったり。

 さらに、可南子には妄想癖がある。ある時、集団面接で「学生時代に一生懸命やったこと」として、「彼女を大切にすることかな」と向かいに座った男が答えた。可南子は男の「襟首をつかんで背後の窓に何度もたたきつけ、べっとりとガラスには...(過激な表現のため自粛)」と、自分も面接の椅子に座ったまま思い浮かべてしまう。
 就活以外にも、さまざまなものと「格闘する」可南子だが、ちょっと空回り気味だ。まぁ、それがまた「格闘してます感」を醸し出しているのだけれど。

 こう紹介するだけでも、ゴムまりが弾むような勢いと面白さが、少し伝わるだろう。しかし、デビュー作にかける著者の意気込みは、さらに何重にも面白い設定を、主人公の可南子に施した。可南子の家も弟も友だちも恋人もちょっと普通じゃない。普通じゃないけれども、みんなひっくるめて「いい話」になっている。

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