メディアの仕組み

著 者:池上彰、津田大介
出版社:夜間飛行
出版日:2013年7月1日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 テレビのニュース解説特番には無くてはならない存在の池上彰さんと、ネットメディアでの活躍が目覚ましいジャーナリストの津田大介さんの対談。「メディアの仕組み」というタイトルだけれども、「仕組み」と聞いて思い浮かぶ、「ニュース番組では、まず記者が取材に行って..」という、チャートで表せるような「仕組み」は書かれていない。

 その代り本書に書かれているのは、「テレビにタブーはあるのか?」とか「新聞は生き残れるのか?」といった、日常で感じる疑問へのお二人の答え(津田さんが池上さんに聞いたり確かめたりする形が多いけれど)だ。二人のやり取りの向こうに「仕組み」が透けて見える。

 本書は5章構成で、第1章から順に「テレビの仕組み」「新聞の仕組み」「ネットの仕組み」「情報を世の中を動かす方法」「「伝える」力の育て方」。徐々に視線が将来へ向く、未来への展望が開ける。まとめ方も読者に優しく気が利いていると思う。

 随所に「Point」と書かれた黄色くマークされた部分がある。短いけれど的を射た言葉が多く、いくつも「あぁそうなのか」「なるほど」と思った。そのうちの2つだけを紹介する。

 1つ目は「もうこれからはメディア事業自体で稼ぐことは考えないで、不動産収入をどんどん増やしていけばいいんじゃないですか」というところ。

 民放とスポンサーの関係は、視聴者が思っているよりずっとゆるやかで、報道系の部署に人はスポンサーのことなんて一切考えないそうだ。ただそうは言っても..ということもある。TBSの「赤坂サカス」のように、別の事業で収益を上げる、というのは報道の独立性を担保するいいモデルかもしれない。

 2つ目は「「正しい情報」と「間違った情報」を瞬時に切り分ける能力ではなくて、「実は分かってないんじゃないか」という恐れを持つこと」という部分。

 これはメディア・リテラシーの話題の中で出てきた言葉。リテラシー不足が大変な惨禍を招くこともある。「自分は絶対に正しい」と思うのは危険だ。「自分の書いた本が売れても、自分は何にも変わらない」という、池上さんの言葉とともに覚え、謙虚であろうと思う。

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