6.経済・実用書

僕の仕事はYouTube

著 者:HIKAKIN
出版社:主婦と生活社
出版日:2013年7月29日 第1刷 2014年5月16日 第9刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 少し前に「小学生男子に将来の夢で「ユーチューバー」が3位に入った」というニュースが流れた。小学生に「ユーチューバーという職業」を浸透させた一番の人物は、本書の著者のHIKAKINさんで間違いないだろう。私は仕事で小学生と話すことがあるのだけれど、「ヒカキン」の話題を何度も聞いたことがある。

 帯によると、著者はYouTubeで「総登録者数356万人」「総再生回数7億5千万回超」という、日本一のユーチューバーだそうだ。本書はその著者が「日本一のユーチューバーになるまで」「アクセスUPの秘訣」「成功の陰の落とし穴」などを記したもの。

 著者の動画を見た印象が「お調子者」という感じだったので、読む前は、本書も「調子がいい割に中身のないハウツー本」かと思った。読み終わって思うのは「そんなに悪くない」という感想だった。

 「お調子者」なのはウケルための演技か、そうでなければ著者の一面に過ぎないのだろう。読者のために真面目に書かれたものだし、「秘訣」は実践的でもある。編集者が手を入れているとしても、これだけ物事を整理して書けるのは、ひとつの才能だと思う。

 「ユーチューバーになりたい」という小学生は、本書を読めばいいかもしれない。ただし、それは「ユーチューバーになるのは簡単じゃない」と知るためだ。今の著者があるのは、努力と集中力と忍耐力の結果だと分かるためだ。

 ユーチューバーを目指して読むのなら、都合のいいところだけ都合よく読むのではなくて「自分はHIKAKINと同じようにできるだろうか?」と自問しながら読んで欲しい。そういう読み方ができないのなら、読まない方がいい。そういう人(大人も含めて)には危険な本だと思う。

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京大式 おもろい勉強法

著 者:山極寿一
出版社:朝日新聞出版社
出版日:2015年11月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 著者は、京都大学理学部卒業、同大学院、助手、助教授、教授を経て、昨年10月に京都大学総長に就任。研究者としての道を一貫して京都大学で歩んでこられた。その著者が記した「京大式 おもろい勉強法」

 タイトルから想像される本書の内容は、「自由」と形容されることの多い校風の元の「実践力を付けるための授業やゼミのあり方」「研究ノートの取り方」などなど、だろう。そして本書にはそういうことは、まったく書かれていない

 本書には、ゴリラ研究者としての著者の半生が綴られている。それによって大事なことを伝えようとしている。タイトルから想像するような、「効率よく知識が身につけられる」的なお手軽な勉強法より、幅広い層、幅広い年代に役に立つ。ゴリラと比較することで、人間のことが良く分かる。

 書き起こされた著者の半生は、1978年に大学院生の時に、コンゴ民主共和国(当時のザイール)から始まる。一人で行って、一人で調査許可を得て、一人で交渉する。並外れてタフでなければできない。「タフ」という意味では「ゴリラ研究のフィールドワーク」自体が想像を絶する。

 ゴリラに慣れてもらうために「餌付け」ならぬ「人付け」というのをするそうだ。簡単に言うと、ゴリラがその存在を気にしなくなるまで、そこに居続けること。咆哮で脅されたり、突進を受けることもある。ゴリラが草を食べれば自分も食べる、昼寝をしたら自分も寝転ぶ、なんて方法を取った研究者もいるそうだ。

 私には絶対にできない。同じことをしようと考えると、そんな諦めの気持ちになってしまう。でも、もちろん同じことをする必要はない。著者もそんなつもりはないだろう。本書からはたくさんのことを教わった。

 借り物ではない「自分の考え」を持つこと、「勝つか負けるか」という単純な解決策しかないと思うことが問題であること、「時間」こそが「信頼」に必要であること、「共にいる」ことが「幸福」につながること、「食事を一緒に食べる」ことに特別な意味があること。

 「それ、おもろいな」。これがキーワード。 

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最強のリーダー育成書 君主論

著 者:鈴木博毅
出版社:KADOKAWA
出版日:2015年10月30日 第1刷発行
評 価:☆☆(説明)

 著者の鈴木博毅さまから献本いただきました。感謝。

 本書はマキアヴェリの「君主論」を読み解いて、そのエッセンスを現代のリーダー育成のためのテキストに編み直そうというもの。念のため補足すると、マキアヴェリは15~16世紀のイタリアの政治思想家。「君主論」はそれまでの様々な君主・君主国を分析した著作。

 マキアヴェリズムと言えば「目的のためには手段を選ばない」という主義のことで、「君主論」はその由来にもなっている。そのような冷徹さは「君主論」の一側面を表しているがすべてではない。約500年前の著作が、今でもこうして読み継がれているのだから、読む人を惹きつけるものが他にあるのだろう。

 そして本書について。「ケチであれ 冷酷であれ 自ら仕掛けよ」「力を求め、力を愛せ」「悪を学んで正義を行え」「誇り高き鋼の精神を養う」「運も人も正しく支配する」の5章建て。テーマに合わせて君主論の中の一節を、現代にアレンジして解説する。

 読んでいて戸惑いを感じた。マキアヴェリの分析が多岐にわたるから仕方ないのかもしれないけれど、項目が多くて散漫な感じがした。中には「軽蔑されるな」とか「決断と責任から逃げる者は君主ではない」とか、「当たり前」のことも少なくない。

 また「君主論」が念頭に置いているのは中世の君主、軍事力で侵略から国を守る(場合によっては領土を拡大する)立場の者だ。現代の「リーダー」とのギャップは相当に大きい。だからこそ著者が「アレンジ」して解説するのだけれど、会社の社長ぐらいならまだしも、部下を持つ上司に当てはめるのは難しい。その果ては、家庭とか恋人との関係まで例えとして出てくる。

 とは言え「君主論」は、上に書いたように500年も読み継がれ、今もトップリーダーたちに影響を与えているらしい。その内容が気になる方は、本書を手に取ってみてもいいかもしれない。 

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ヤフーとその仲間たちのすごい研修

著 者:篠原匡
出版社:日経BP社
出版日:2015年7月21日 第1版第1刷
評 価:☆☆☆(説明)

 出版社の日経BP社さまから献本していただきました。感謝。

 本書はヤフー株式会社の人事本部長である本間浩輔氏が仕掛けた、人材育成研修の様子を記録したもの。この研修は「次世代のリーダーの育成」を目的としたもので、ヤフーだけでなく、アサヒビール、日本郵便、インテリジェンス、電通北海道といった多様な企業の幹部・リーダー候補生が参加する異業種コラボレーション研修だ。

 研修テーマは「北海道美瑛町の地域課題の解決」。数人からなるAからFまで6つのチームに分かれ、それぞれには美瑛町役場の職員も参加する。6か月で5回のセッション、全12日。その間に「効果的かつ美瑛町で実現が可能な」解決策を練り上げて提案しなくてはいけない。参加者にとってはハードルの高い研修と言える。

 期間中には様々な問題が起きる。それでも、受講者と運営サイドが持てる能力を注いで研修を前に進める。その様子と最終的な提案の内容が、要領よく描かれている。読み物としても面白い。研修を進めるためのノウハウも興味深い。

 思ったこと。求めらるのはやはり「課題解決力」なのだな、ということ。「やはり」というのは、これは私が20数年来意識してきたことだからだ。「何か起きた時にそれをどうにか解決する力」。物事を前に進めるにはそういった力が必要だ。

 しかし、それだけでは足りない。企業も地域社会も、もちろんもっと大きなくくりでも、分かりやすい「課題」を解決するだけでは立ち行かなくなっているからだ。「課題の設定」自体も難しくなっている。解決にはブレイクスルーが必要なこともある。

 そこで重要なキーワードが「ダイバーシティ」。「多様性」と訳される。この研修が異業種コラボレーションで行われたのには、多様性を確保するためらしい。「女性や外国人が入りました」というような単純なことではなく、価値観の違う「合わない人」との議論、言って見れば「摩擦」からしか得られないことがある、という。..これは大変な時代になった。 

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この方法で生きのびよ!

著 者:鈴木博毅
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2015年9月7日 初版第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 著者の鈴木博毅さまから献本いただきました。感謝。

 本書は所属する組織やビジネスの枠組みを「船」に見立て、社会を激変させるような大きな流れを「氷山」に例える。迫りくる「氷山」への対処を知っていれば、衝突や沈没を避けられる、衝突しても海に投げ出されることを免れられる、うまく利用できればチャンスにさえなる、ということだ。

 著者があげる「氷山」は5つ。「代替」「新芽」「非常識」「拡散」「増殖」。言葉だけではどうしてこれが「氷山(=大きな流れ)」なのか分からないだろう。例えば「代替」は、交通手段としての「馬」が「自動車」に、デジカメやゲーム機などのいろいろなものが「スマホ」に、取って代わられた、ということを差している。何かが「代替」となって市場を失う、という流れだ。

 その他の4つも簡単に。「新芽」は、困難に直面した時に、新しい発想によって復元すること。「非常識」は、文字通り常識に囚われず、それまでの世界観から抜け出すこと。「拡散」は、それまで存在しなかった分野に商品が拡がっていくこと。「増殖」は、ある商品を買った消費者が、その商品の熱心なセールスマンになるようなこと。

 読んでいてどうもしっくりこない感じがしていた。本書は、誰に対して何を促そうとしているのか?著者が言うように、従来のビジネス書が描く「日常の仕事の効率化」と違い、「大きな変化」を本書が描き出しているのは間違いない。しかしその大きな変化に乗れる人とはどういう人?という疑問が湧く。

 しかもその「大きな変化」の例が、「「馬」が「自動車」を代替」では「つまり「第二の自動車」を発明しろってこと?」と思ってしまう。その他にも「巨大帝国を築いたアレクサンダー大王の「非常識」」というのもあったけれど、例えがあまりに大きすぎる。

 タイトルが「この方法で生きのびよ!」だから、生きのびるための具体的な方法が書いてあると思うと肩すかしを食う。私の「しっくりこない」感の原因もここにある。本書は、もっと大きな戦略レベルの思考の枠組みを提供する。そのつもりで読めば得るものがあるだろう。 

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どうする定年 50歳からの巻き返し! まだ間に合うマネー対策

著 者:日経ヴェリタス編集部
出版社:集英社
出版日:2014年12月10日 第1刷発行
評 価:☆☆(説明)

 本書は「日経ヴェリタス」という、日本経済新聞社の週刊投資金融情報紙の連載に加筆・修正したもの。登場するのは50歳の会社員3人。それぞれが10年後の定年と、それ以降の老後を考える、悲喜こもごもを綴る。(なんと3人は1963年生まれで私と同じ歳!)

 まず気が滅入る話をする。平均寿命から逆算すると、男性は定年後23年、女性は28年生きる。その間の生活費はざっと9000万円。65歳から支給される年金は、会社員+専業主婦のモデルで、約5500万円。(あまり現実味がないけど)仮に退職金が1000万円もらえるとしても、約3500万円足りない。絶望。

 まぁ絶望してしまってはいけないので、本書は、定年までと定年後に、如何にして資産を形成するかを、物語仕立てで説明する。金融商品の紹介が、特に前半には、たくさんでてくる。まぁつまり「投資のススメ」みたいな本だ。

 当然なのだけれど、「日経ヴェリタス」の読者層を対象に想定している。登場する3人も上場企業の社員で、2人は役員の席を覗う部長。まぁちょっと我が身と引き比べて、違いが大きすぎて、正直言って鼻白む想いもした。

 ただ、前半の金融商品の説明は読み飛ばして、後半に展開される「相続」に関する顛末と読むのはいいかもしれない。取りあえず危機感は共有しておいた方が良さそうなので。

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伝え方が9割 2

著 者:佐々木圭一
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2015年4月23日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 タイトルのとおり「伝え方が9割」という本の第2弾。第1弾のレビューで「意外と良かった。とても役に立ちそうだ。」なんて書いたけれど、広い評価も得たようで、64万部を突破したそうだ。

 このシリーズは、コピーライターの著者が、自らの経験から導き出した「YESと言ってもらえる伝え方」「相手に響く強いコトバの作り方」のテクニックを記したものだ。

 例えばお店で「このシャツは現品限りです」と言うより、「こちら人気で、最後の一着なんです」と言った方が、買ってもらえる、というようなこと。これは「相手の好きなこと」の文脈で伝える、というテクニックの一例。

 第1弾は「役に立った」としても、第2弾もそうかどうかは別問題。第1弾には入らなかった、言わば「2軍」的な項目が書かれているとすれば、あまり期待できない。こういうHowToモノだと、第2弾はムリがあるんじゃないの?と懐疑的に思っていた。

 この懐疑は半分だけ当たっていた。第1弾とは全く別の項目で同等のクオリティを保つのは、やはりムリだったようだ。15項目あるうち、新しいのは3項目しかない。他の12項目は、はっきり言うと「第1弾の焼き直し」だ。

 「半分だけ当たり」としたのは、この「焼き直し」が、なかなか見事だったからだ。第2弾の作り方としては、意外だったけれど悪くない。

 それぞれのテクニックを使った例が、より具体的により洗練されたものになっていた。第1弾の出版後に「こう言ったらうまくいきました!」という報告が、著者の元にたくさん寄せられたらしい。つまり本書に載っているのは、「効果を確認済み」の例なのだ。

 そんなわけで、第1弾を読んだ人にススメるには、ちょっと微妙な内容。これから読む人は、第2弾の本書だけ読んでも役に立つと思う。

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戦略の教室

著 者:鈴木博毅
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2014年8月28日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 著者の鈴木博毅さまから献本いただきました。感謝。

 本書は、孫子からマッキンゼーやボストン・コンサルティング・グループまで、古今東西の「戦略」を紹介したもの。「リーダーシップ戦略」「軍事戦略」「効率化戦略」「実行力戦略」「目標達成戦略」「競争戦略」「フレームワーク戦略」「マネジメント戦略」「イノベーション戦略」「21世紀の戦略」の10分類に分けて、全部で30の戦略論が取り上げられている。

 登場する人物を年代の古い方から上げるとまず、孫武、アレクサンダー大王、ずっと下ってマキアヴェリ、さらに下ってナポレオン。その次は、テイラー、ランチェスター、シュンペーターと、前世紀初めに活躍した経済学者。

 さらには、ドラッカー、コトラー、ポーターと、現代のマネジメントとマーケティングの巨匠たち。日本人では野中郁次郎や大前研一らの名前が挙がっている。30年前にマーケティング専攻の学生だった私としては、テイラー以降はその著作を教科書として読んだ人々で、なんとも懐かしかった。

 本書に書かれていることは、それぞれの戦略論の10ページ前後の要約。何かを要約すると何か大事なことが抜け落ちてしまい、あまり深く理解するには至らないものだ。ただし著者は現代の事例を挙げて、その戦略論を理解しやくする工夫をしている。シュンペーターのイノベーションを表すのに「うまい棒」の事例を持ってくる、といった具合に。こうした工夫がけっこう効果的だった。

 「なるほど」と思ったことがあった。それは「暗黙知」と「形式知」に関する考察。1980年代までの日本企業の強さは、「暗黙知」を基にした知識創造によって成り立っていた。90年代以降にそれらが研究され「形式知」に変換されたことで、海外企業が容易に活用することができるようになり、結果として日本企業が遅れをとることになった、というものだ。

 さらには本書のテーマである「戦略論」も、もともとどこかの企業や業界で(「暗黙知」として)行われていることを、他でも活用できる形(「形式知」)に整えたものだと言える。少し視野が晴れたような感じがした。 

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渋沢栄一の経営教室

著 者:香取俊介 田中渉
出版社:日本経済新聞出版社
出版日:2014年7月23日 1版1刷
評 価:☆☆☆(説明)

 

 本書は幕末から明治・大正と生きた実業家、渋沢栄一の言動を現代に伝えようとしたもの。渋沢栄一は、王子製紙、東京ガス、東京電力、帝国ホテル、東京商工会議所、東京証券取引所、複数の銀行など、なんと500に近い会社や機関の設立に関わった人物。日本資本主義の父とも言われる。

 

 「その言動を現代に伝える」となれば、一般的には伝記にするか名言集にするか、といったところだろう。本書はちょっと趣向が違う。主人公の高校生の大河原渋が、何と幕末にタイムスリップして、渋沢栄一その人と行動を共にする。

 

 だから、完全なフィクションなんだけれど、後で調べたところ、大河原渋の存在以外の出来事の多くは、記録に残った事実なので「伝記」としての性格もある。さらに、重要な言葉は太字にしてあり、巻末にもまとめられているので「名言集」にもなる。

 

 さらに後半は、大河原渋の起業が描かれ、ちょっとした経済小説+自己啓発本にもなっていて、ラブストーリーまで組み込まれている。なんともハイブリッドな作品だ。「伝記」や「名言集」は退屈で..という人でもこれなら読み通せるかもしれない。

 

 ただし、こうした趣向には功罪がある。「功」は読みやすいこと。「罪」は事実とフィクションの境界があいまいなこと。下手をすると全部がフィクション、つまり「作り話」に思える。私のように「後で調べる」人ばかりではないだろう。それでは渋沢栄一の言動は伝わらなくなってしまう。

 

 渋沢栄一ってどんな人?と、興味が湧いた人は手に取ってみるといいと思う。少なくともこの記事を読んだ人は、「全部が作り話」と思ってしまう危険は免れるはずだから。

 

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伝え方が9割

著 者:佐々木圭一
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2013年2月28日 第1刷発行 8月8日 第11刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 知り合いに薦められて借りて読んだ。正直に言ってあまり期待していなかった。「人は見た目が9割
」という本が、100万部を超えるベストセラーとなったのだけれど、内容は「メラビアンの法則」を誤用した上に、中身のないものだった。その後「○○が9割」という本がたくさん出版されたけれど、どれも同類に思えてしまっていた。

 本書はどうだったかと言うと、これが意外と(なんて言っちゃ失礼なのだけれど)良かった。とても役に立ちそうだ。最初は「やっぱりなぁ」と思って読んでいた。「まったくあなたに興味がない人をデートに誘うときのコトバ」なんて興味ないし、第一それってゴマカシじゃないの?と思ったので。

 本書のベースにある考え方はこうだ。「同じことを言っていても伝え方によって結果が変わる」「伝え方にはシンプルな技術がある」。コピーライターとして、著者が試行錯誤の末に導いたその「技術」を伝授してくれる、というわけだ。

 どんな技術かと言えば、大きく分けると「「ノー」を「イエス」に変える技術」と「「強いコトバ」をつくる技術」の2つ。それぞれを豊富な具体例を使って解説している。私は特に「強いコトバ~」が参考になった。

 「強いコトバ」にはエネルギーがあるのだ。言葉にエネルギーを与える一番簡単な方法は「!」をつけることだ。「なぁんだ、そんなことか」と思ったかもしれないけれど、これだって意識して使えば立派な「技術」なのだ。(自分の首を絞めてしまったかも?今後、私の言葉に「!」が増えても指摘しないで欲しい)

 最後に。考えてみれば「技術」は、上に書いた「ゴマカシ」を言い換えたものだけれど、受け取る感じは全く違う。それから
何よりも「伝え方」の指南書だけあって、伝え方がうまい。本書自体が著者の「伝え方」の上手さの証明になっている。

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