おまけのこ

書影

著 者:畠中恵
出版社:新潮社
出版日:2005年8月20日 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「しゃばけ」から始まるシリーズの第4作。今回も短編集。表題作「おまけのこ」を含めて5つの短編が収められている。どの物語も問題の原因は妖ではなく、欲や疑心や病、自分でもよく分からない心の縛り、といった人間の内にあるものだった。

 前作「ねこのばば」で、「ハッピーエンドなのかどうか微妙だ」と書いた。本書の冒頭に収録の「こわい」は、その思いが一層進んだ物語だった。「狐者異(こわい)」は、仏にさえ厭われる妖の名前。関われば自分だけでなく、周囲の人間にまで災いを招く。
 それは「狐者異」が何か悪さをするからではなく、「狐者異」がそういう者だからなのだ。一太郎が一太郎であるのと同じで、本人にも変えることができない。ましてや、誰かの力で変えることなどできはしない。それでも一太郎は「受け止めよう」とする。

 これに比べて「おまけのこ」はハッピーエンドと言って良いだろう。他の作品が「妖の力を借りて問題解決」の一本道なのに対して、この作品では2本の物語が並行する。1本は人間が起こした事件、もう1本は「鳴家」の物語。「鳴家」は、恐ろしい顔をした小鬼なのだけれど、これが何とも憎めないかわいいヤツらなのだ。

 にほんブログ村「しゃばけ」ブログコミュニティへ
 (「しゃばけ」についてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

格闘するものに○

書影

著 者:三浦しをん
出版社:草思社
出版日:2000年4月14日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 2006年に「まほろ駅前 多田便利軒」で直木賞を受賞、。「風が強く吹いている」「仏果を得ず」「神去なあなあ日常」などのヒット作で知られる、人気作家の著者のデビュー作、2000年の作品。

 主人公は藤崎可南子。就職活動中の文学部の学生。就職希望先は出版社。漫画編集者になりたいのだ。可南子が情熱を持って取り組んだことと言えば、漫画を読むことぐらいで、漫画については一家言ある。
 ただし就職活動には向いていないようだ。「平服で」を「ファッションセンスを見るのだな」と解釈して、気合を入れて黒ずくめに豹柄のブーツで面接に出かけたり、ちょっと立ち寄った古本屋で、高値で取引されている「キン肉マン」を見つけて、嬉しくなって面接を忘れて帰ってしまったり。

 さらに、可南子には妄想癖がある。ある時、集団面接で「学生時代に一生懸命やったこと」として、「彼女を大切にすることかな」と向かいに座った男が答えた。可南子は男の「襟首をつかんで背後の窓に何度もたたきつけ、べっとりとガラスには...(過激な表現のため自粛)」と、自分も面接の椅子に座ったまま思い浮かべてしまう。
 就活以外にも、さまざまなものと「格闘する」可南子だが、ちょっと空回り気味だ。まぁ、それがまた「格闘してます感」を醸し出しているのだけれど。

 こう紹介するだけでも、ゴムまりが弾むような勢いと面白さが、少し伝わるだろう。しかし、デビュー作にかける著者の意気込みは、さらに何重にも面白い設定を、主人公の可南子に施した。可南子の家も弟も友だちも恋人もちょっと普通じゃない。普通じゃないけれども、みんなひっくるめて「いい話」になっている。

 にほんブログ村「三浦しをん」ブログコミュニティへ
 (三浦しをんさんについてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

官僚の責任

書影

著 者:古賀茂明
出版社:PHP研究所
出版日:2011年8月30日 第1版第5刷
評 価:☆☆☆(説明)

 著者は経済産業省の現役の官僚、その告発の書だ。著者は、2009年12月に「大臣官房付」になってからの3年近く、職務を与えられていない。この役職は、次のポストが決まるまでの、普通は数カ月以内のつなぎのための「閑職」なのだ。そうなった理由は、「国益」のために著者がやったことが、経産省の「省益」や公務員全体の利益、次官の意向に反したためだと解説されている。

 この解説が偽りではないだろうと、本書を読めばそう思う。本書には、官僚たちの「省が大事」「御身が大事」の振る舞いと、政治家たちのへダメ出しが、あふれるように詰まっているからだ。こんなことを外に向かって言えば、「ムラ」の中で制裁を受けるのは想像に難くない。

 著者自身が「国益のため」と言ってやってきたことも紹介されている。現在話題になっている「発送電の分離」も、著者は15年近く前に仕掛けたことがある。著者が唱える「国家公務員制度改革」の内容は「あるべき姿」に近い。著者のような官僚がたくさんいれば良かったのに、と思う。

 しかしそう思う一方で、2つの点でとても危ういものを感じた。1つ目は、この著者をしてさえ排除できなかった「上から目線」という点。それは、官僚の仕事についてのこんな言葉に感じた。
 「自分の働き一つで世の中の仕組みを変えられる官僚の仕事は、民間ではなかなか体験できるものではない。とてつもない高揚感を得ることができる」「官僚という仕事の醍醐味は、まさしくこれだ」

 もう1つは「多面的な視点の欠如」。例えば、年金制度改革のこんな考え方。「(年金の受給開始年齢を)八十歳にしてもかまわない」「平均寿命くらいまでは、働くなり、不労所得を得る方法を考えるなりして、自分でなんとかしてもらう」
 また、企業は国籍にこだわらず、生産拠点だけでなく必要なら本社も海外に移すべきだ、とも言う。「日本人として、それでいいのか?」に対しては、「海外展開する企業の株に投資すれば、その配当が日本国民を豊かにする」と答える。

 受給開始年齢を引き上げれば、年金財源の逼迫は解消されるだろう。国籍や国境に拘ることが企業活動の足かせになるのも事実だろう。しかし著者の考えには、そのシワ寄せを受ける国民の視点が欠如している。「自分でなんとかしてもらう」「株に投資すればいい」では済まない。

 ダメ出しをくらった政治家たちは、苦笑しながらこう言うだろう。「それで済めば苦労しないよ」

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

森見登美彦の京都ぐるぐる案内

書影

著 者:森見登美彦
出版社:新潮社
出版日:2011年6月30日 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 森見登美彦さんによる京都のガイドブック。これまでに膨大な数の「京都のガイドブック」が発行されたことと思うが、これほど私的な偏りのあるガイドブックは、そう多くないだろう。「左京区」に多くの誌面を割いているのだけれど、銀閣寺も南禅寺も平安神宮もない。それは、著者のその場所に対する思い入れの程度によるのだろう。

 それなら何処が載っているのかというと、「鴨川デルタ」「下鴨神社」「京都大学」「進々堂」「吉田山」...(掲載順)。ここに挙げた全部にピンと来た方は、かなりの京都通か、森見登美彦通だろう(3番目の「進々堂」の難易度が高い)。
 森見登美彦通の方はもうお分かりと思うが、このガイドブックに載っている場所は、著者の思い入れがあるだけではなく、その作品に登場した場所だ。「左京区」の他には、四条大橋や叡山電車、それから「竹林」なんてのもある。それぞれの場所のページには、そこが登場した作品の1節が載っている。

 はっきり言って、これは著者の作品のファンに向けられた本だと思う。映画やテレビドラマの舞台やロケ地が、観光地として賑わっているそうだけれど、そのノリだ。作品に登場したあの場所の写真を見て、「こんなところだったんだ」と思い、「いつか行ってみよう」と誓う。...ということで、森見ファンにおススメ。

 ※森見登美彦さんのブログ「この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ」によると、森見さんは現在、病気療養中だそうです。一日も早いご回復を祈ります。

 この後は、ちょっと私事を話しています。お付き合いいただける方は、どうぞ

 コンプリート継続中!(単行本として出版された作品)
 「森見登美彦」カテゴリー

 人気ブログランキング投票:「一番好きな森見登美彦さんの作品は?」
 (あなたの好きな森見作品の投票をお待ちしています。)
 にほんブログ村「小説家、森見登美彦」ブログコミュニティへ
 (森見登美彦さんについてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

(さらに…)

小さいおうち

書影

著 者:中島京子
出版社:文藝春秋
出版日:2010年5月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 2010年上半期の直木賞受賞作。著者の作品は「イトウの恋」と、「Re-born はじまりの一歩」というアンソロジーの中の短編を読んだことがある。

 主人公は布宮タキ。茨城の田舎で一人暮らしをしている(たぶん)80代の女性。物語は、そのタキが昭和5年に女中奉公に出た後の、終戦の年までの暮らしを、一人語りで回想する形で進む。

 タイトルの「小さいおうち」とは、タキが奉公した平井家が住む赤い屋根の洋館のこと。東京の郊外に建つこの家で、タキは10代の後半からの11年あまりを過ごした。玩具会社の重役のご主人と、奥様の時子、一人息子の恭一との4人の暮らし。
 タキが時子と出会った時には、タキは14歳、時子は22歳。2人は歳も比較的近く、時子の偉ぶらない性格もあって、一般的な奉公人と使用人の関係より、ずっと親しみのある幸せな「濃い時間」を一緒に過ごす。

 日本が戦争へと突き進み、ついには東京が焦土と化した時代だ。当然、郊外にある平井家にもその影は落ちてくる。しかし、タキの回想の表層からは、その影は最後になるまで感じられない。昭和10年ごろには「5年後の東京オリンピック」にウキウキしていた。昭和16年12月に米国と開戦して「世の中がぱっと明るくなった」とある。
 私たちが習った「歴史」では、昭和6年には満州事変が起こり、それから終戦まではずっと「戦時下」で、こんな平和な時代ではなかったはずだ。その違和感は、タキが回想の途中で挟む、「甥の次男」の健史とのやり取りの中で、健史が代弁してくれる。「おばあちゃんは間違っている。昭和十年がそんなにウキウキしているわけがない」と。

 申し訳ない。本書をどんなに説明しても、正確にイメージしてもらうのは難しい。記事を何度も書き直しているうちに、そう思った。この本は、女中の目から見た昭和初期の暮らしを描いた本?違う。戦時下で本当のことを知らされない怖さを表した本?違う。

 私が思うに本書は、最後の数ページのために、それに先立つ約300ページがあるようだ。もちろん、上に書いた2つともの意味でも、本書は優れた読み物になっている。だからこそ、読者は約300ページを読んで来ることができる。最後の数ページを明かせば「正確なイメージ」に近づくことは分かっているのだけれど.....もちろんそんなことはできない。

書影

 バージニア・リー・バートンの絵本「ちいさいおうち」も併せて読みました。直接の関係はありませんが、本書の中でも言及されているし、どこか見えないところでは繋がっているような気がします。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

僕たちのミシシッピ・リバー 季節風 夏

書影

著 者:重松清
出版社:文藝春秋
出版日:2008年6月15日 第1刷発行 
評 価:☆☆☆(説明)

 「ツバメ記念日 季節風 春」に続く、短編集シリーズ2冊目の「夏」編。春夏秋冬の各編があるので、それぞれの季節に読もうと思っている。12編を収録。

 「夏」ってどんな季節?と聞けば、色々な答えが返ってくるだろう。子どもたちにとっては「夏休み」がある季節だろう。高校球児にとっては「甲子園の夏」、中高生の3年生にとっては「最後の夏」だ。(不思なことに「最後の春」や「秋」「冬」とはあまり言わない。)

 表題作「僕たちのミシシッピ・リバー」は、小学生の夏休み、真っ直ぐな友情を描いた秀作。映画「スタンド・バイ・ミー」の主題歌が聞こえてきそうだ。「虹色メガネ」は小学生の少女の、「終わりの後の始まりの前に」は高校球児の、精細な心のひだを掬う。著者の真骨頂と言える。

 大人にとっては「お盆」の季節、著者はそう感じたらしい。長めの休み、帰省、親戚が集まる。こうした場面の物語が並ぶ。そして「お盆」には、亡くした人を偲びその魂を迎える...収録されている12編のうち7編が、亡くなった人に思いを馳せる物語だった。

 近しい人の死に直面した直後ではなく、何年か後を描いたものもある。「あじさい、揺れて」「ささのは さらさら」は、伴侶を亡くした女性の再婚をめぐる家族の話。「金魚」は、子供のころの親友の三十三回忌の話。大切な人を亡くした人々が故人を想う。当たり前だけれども残された人は、生きて普通に生活していく。その人の死を、忘れるのでも、薄れるのでも、乗り越えるのでもなく、大事に心にしまって今を生きる。

 冒頭に収録された作品「親知らず」が胸に沁みた。何とも痛々しい物語なのだけれど、「今を生きる」という意味では、主人公はこの奥さんと暮らして、今幸せだと思う。

 にほんブログ村「重松清のトラバ」ブログコミュニティへ
 (重松清さんについてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

神様のカルテ

書影

著 者:夏川草介
出版社:小学館
出版日:2011年6月12日 初版第1刷発行 年6月22日 第2刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 2009年に小学館文庫小説賞という新人文学賞を受賞した、著者のデビュー作。2010年の本屋大賞の第2位となり、櫻井翔さん、宮崎あおいさんが主人公夫婦を演じて映画化され、この8月27日に公開される。何ともスピーディな展開だ。書店で文庫になっているのを見つけたので読んでみた。

 主人公は栗原一止(いちと)。長野県にある民間病院に勤務して5年目の内科のお医者さんだ。夏目漱石を敬愛するあまり、古風な話し方をするようになってしまって、周囲からは「変人」扱いされている。
 一止が務める病院は「24時間、365日対応」でどんな患者も受け入れる、という理念を掲げている。崇高な理念だが、現場は理念だけでは回らない。近郷の患者と救急車が集結し、夜間の救急は戦場のごとき様相を呈する。物語の冒頭も彼は、35時間勤務してこれから回診、というありさまだ。
 一止はそれなりに腕の確かな医者で、もっと高度な医療に携わる楽な道もあったようだ。そのことのを知る人々は、医学部を卒業してすぐにこの病院に勤めることにした彼を、やはり「変人」だと思っている。もちろん、好ましい想いも込めて。

 このように紹介すると、救急医療を舞台とした「カッコいいスーパードクター」の話を思い浮かべるかもしれない。しかし、それでは恐らく映画の公式サイトの紹介のように、「全国の書店員を涙に濡らし」たりはしないだろう。
 一止の患者さんは「栗原先生に出会えて幸せだった」という。もちろん先に書いたように一止の腕が確かで、適切な治療を受けられたことは大きいだろう。しかし「幸せ」という言葉のうらには、彼の患者さんへの寄り添い方に対する感謝が込められている。それは(本書によれば)、高度医療を施す大学病院では得られないものなのだ。

 病院の理念にある「どんな患者も」には、「治らない患者」も含まれるから、登場人物たちは医者として看護師として、その死を看取ることもしなければならない。そして私は、「死」を「感動」につなげることには否定的な意見を持っている。
 しかし、著者自身が現役の医師であり、病院という場所では「死」と向き合わざるを得ない。その向き合い方としての理想が、本書に表されているのだとしたら、この物語の「死」が感動を誘うことに、私も否定的なことを言うまいと思う。

 このあとは書評ではなく、ちょっと気が付いたことを書いています。お付き合いいただける方はどうぞ

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

(さらに…)

ほっと文庫「ゆず、香る」「郵便少年」ほか

書影

著 者:有川浩、森見登美彦、あさのあつこ、西加奈子
出版社:バンダイ
出版日:2011年8月1日
評 価:☆☆☆(説明)

 おもちゃ・ホビーのバンダイと角川書店のコラボレーション商品。30ページほどの短編小説に、その小説に登場する色と香りの入浴剤が1包付いている。全部で6種類発売されている内の4種類を買って読んでみた。

 読んだのは、有川浩さん「ゆず、香る」、森見登美彦さん「郵便少年」、あさのあつこさん「桃の花は」、西加奈子さん「はちみつ色の」の4つ。前の3人は、私が好きな作家さんで、西さんは「もし面白かったら他の作品も読んでみよう」と、新規開拓のつもりで選んだ。

 面白かった順も上に書いた順のとおりだった。まぁ好きな作家さんの順に書いたので、好きな作家さんの作品が面白かった、という至極当たり前の結果になっただけ、とも言える。

 それぞれを簡単に紹介する。「ゆず、香る」は、王道のラブストーリー。コラボ作品としてハマり過ぎな感じ。「郵便少年」の主人公は、たぶん「ペンギン・ハイウェイ」のアオヤマ君。悲しくもほのぼのとした作品。「桃の花は」は、30歳の女性の遠い昔の記憶をめぐる不思議な物語。「間に合ってよかった」と思えるいい話。「はちみつ色の」の主人公の小学生の母親は小説家。自分の誕生日に「誰からもおめでとうメールが来ねぇ」と憤っているような人。新規開拓のつもりだったが、私には合わなかったらしい。

 それぞれの著者のファンで、(399円払っても)30ページの書き下ろし短編が読みたい、という方にはおススメ。「小説と入浴剤のセットって、ちょっと面白そうじゃない?」という方もOK。

※この商品は入手困難になっている。私も1週間前に、近くの書店、ホームセンター、ドラッグストアを何軒か回ったが売っていなかった。商品のホームページに載っている「商品お取扱店舗」にも行ってみたが、チェーンの場合、全店にあるわけではないらしい。
 今日(2011.8.20)現在では、ネット書店で取り扱いがあるようだけれど、「ゆず、香る」と「郵便少年」は、Amazonでは在庫がなくて「9月26日入荷予定」になっている。
 1週間前には他のも在庫がなかったので、私はバンダイのショッピングサイト「プレミアムバンダイ」で購入した。ここなら今も買えるようだ。(ただし送料が525円(税込)かかる。399円のものを買うのにこの送料はちょっと痛い)

 ここからは書評ではなく、この商品についてちょっと気になったことを書いています。お付き合いいただける方はどうぞ

 にほんブログ村「有川浩」ブログコミュニティへ
 (有川浩さんについてのブログ記事が集まっています。)
 にほんブログ村「小説家、森見登美彦」ブログコミュニティへ
 (森見登美彦さんについてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

(さらに…)

裔を継ぐ者

書影

著 者:たつみや章
出版社:講談社
出版日:2003年11月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「月神の統べる森で」から始まる「月神シリーズ」の外伝。4部作からなる本編は、縄文のムラと弥生のクニの文化の衝突を描き、一度は物語の幕が下りた。多くの犠牲を代償にして、ムラやクニが融和への道を歩み始め、人々は平穏と、木や川動物にカムイという神的な存在を認め敬う清き心と暮らしを取り戻した。本書は、それから約500年の後の物語。

 主人公の名はサザレヒコ。13歳。ムラ長の6人兄弟の末っ子。彼の家は「星の神の息子」であるポイシュマの末裔の一族でもある。ただ、サザレヒコはもっと幼い頃は病弱で、今でも同い年の子どもの中で一番背が低く一番痩せていた。
 サザレヒコは6歳の頃、高熱で臥せっていた夜に、5,6人のカムイたちが自分を見下ろして話している夢を見た。「この子はもうだめだろう」「弱い枝に重い実を生らせてしまったようなものなのだ」。そして白い髪のカムイが言った「その実をわたしが預かったらどうだろう」...

 その頃から重い病気をしなくなったのだが、自分の体が大きくならないのは、あの白い髪のカムイが自分のそうした力を奪ったからだと、サザレヒコはそう思っている。そのために「神もカムイも嫌いだ」とも思っている。
 実は、大人たちだって神やカムイを、本気で尊敬しているわけではなかった。500年という時間は、大事な儀式や営みを形骸化し、人の心に変化を与えずにはいなかったのだ。こうした心の変化を、サザレヒコが一身に体現した形で、物語は彼の成長と「清き心」の回復のための修練の彷徨を描く。

 正直に言って、物語としては一本調子で含みがない。少年が助けを受けながらも困難を克服し、成長と失われたものの回復を成し遂げる。そう言えば大方の予想ができてしまう(だから安心して楽しめる、とも言える)。しかし、本書はこの「月神」シリーズで、とても重要な役割を果たしたと思う。
 その役割とは、現代にまで続く悠久の時間を、このシリーズに与えることだ。物語が500年後にも続いていたとなれば、さらにその500年後にも...と膨らませることができる。弥生時代が3000年前ごろからだとすると、この繰り返しはたったの数回で現代へ到達する。

 この時間性のことは、著者も各作品の「あとがき」で度々触れている。本書の「あとがき」には、「命は、かならず親から子へと受け継がれるのですから(中略)縄文時代に行けたとしたら、そこにはその時代のあなたの先祖かいるわけです」とある。私の場合は、江戸時代の先祖も皆目分からない。縄文時代に先祖がいたことは、想像することさえ容易ではない。けれどもいたことは間違いない。命は連綿と続く。

 にほんブログ村「ファンタジー」ブログコミュニティへ
 (ファンタジー小説についてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

偉大なる、しゅららぼん

書影

著 者:万城目学
出版社:集英社
出版日:2011年4月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 著者は、奈良では神の使いの鹿に話しかけられ京都ではオニたちを操り大阪では豊臣の姫を守った。そして今回の舞台は、日本最大の湖である「琵琶湖」を擁する滋賀。琵琶湖から特別な力を授けられた「湖の民」の物語だ。

 琵琶湖の東岸にある「石走(いわばしり)」の街は、日出(ひので)一族が絶大な力をふるう街。一族が持つ「他人の心を操る」力によって財をなし、かつてのお城の本丸御殿で暮らしている。ちなみに一族の力のことは、物語が始まって早々に読者には明かされる。

 主人公の日出涼介は、お城に住む本家からは遠縁になる高校生。日出一族の力を授かった者は、高校の3年間を本家で暮らし、その力の修行をする決まりになっている。涼介も本家で暮らすことになり、同級生で当主の息子である淡十郎と石走高校に通い始める。

 前半は、涼介たちの高校生活と、石走での日出一族の「とんでもなさ」がコミカルに描かれる。淡十郎が校庭に姿を現すと、教頭が挨拶に走りよってくる。他の生徒の制服は「黒」なのに、淡十郎の制服は「赤」。淡十郎が「赤」が好きだからだ。それからクラスはいつもC組。淡十郎がCが好きだからだ。
 後半は、一転して緊迫した展開で「見せ場」が続く。「湖の民」として日出一族とは別の力を持つ棗(なつめ)家との確執。さらに別の圧倒的な力を持つ第三の勢力の影。その他にも「隠し玉」が繰り出され、大スペクタクルも用意されている。実にエンタテイメントな1冊だ。

 神戸生まれの関西人である私は、表紙裏の「石走」の説明を読んで「滋賀?そう来たか!」と思った。自分のエゴでしかないのだけれど、奈良、京都、大阪、と来たら「次は兵庫(神戸)?」と漫然と思っていた。しかし、むべなるかな。「琵琶湖には何か秘密があるはず」と私も思う。

 ※分かる人にだけ分かること:笑ってしまったのは「奇面組」。おやっ?!と思ったのは「玄三郎」。

 人気ブログランキング投票「一番好きな万城目学さんの作品は?」
 (あなたの好きな万城目作品の投票をお待ちしています。)
 にほんブログ村「万城目学の本を読みました」ブログコミュニティへ
 (万城目学さんについてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)