月冠の巫王

書影

著 者:たつみや章
出版社:講談社
出版日:2001年12月17日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「月神の統べる森で」「地の掟 月のまなざし」「天地のはざま」に続く、「月神シリーズ」4部作の4作目。つまり完結編。「天地のはざま」のレビューに「次が最終巻。読むのが楽しみだ。」と書いたものの、ちょうど2年間も間が空いてしまった。

 このシリーズは前作までで、縄文のムラと弥生のクニの文化の衝突、さらに強大なクニの存在とそれによる侵略、という多層的な構造と、抗いようのない文明の進展を提示してきた。そして、縄文のムラの少年で「ほうき星の神の息子」であるポイシュマと、弥生のクニの女王の甥であるワカヒコの翻弄される運命を描いてきた。

 冒頭、強大なクニである「アヤ」の野心が、ポイシュマの縄文のムラに伝えられ、ムラの人々は行動を起こす。前作で、大化けして絶大な力を垣間見せたポイシュマは、その力に戸惑いつつ、「アヤ」に囚われたワカヒコの救出に向かう。ワカヒコは、「アヤ」が自分のクニへ進軍することを知り、脱出とクニへの帰還を目指す。
 ムラの人々とポイシュマとワカヒコ、3者の動きが徐々に収れんする。これまで出会いと別離を繰り返してきたポイシュマとワカヒコの2人の運命が、三たび交わる時に向かって物語は加速する。

 完結編なので、縄文のムラと弥生のクニの文化の衝突などの、これまでに提示されたものへの決着が期待される。シリーズで一貫して描かれてきた「新しい文明への疑問」には、どのような回答が与えられるのかも興味深いところだ。
 この物語は確かに終わった。しかし、物語も気持ちも静まらない。別の物語が繰り返し続き、悠久の時間を経て現代と連続する。読み終わってそんなことを想像した。

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デイルマーク王国史2 聖なる島々へ

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著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:田村美佐子
出版社:東京創元社
出版日:2004年10月22日 初版
評 価:☆☆☆(説明)

 「詩人たちの旅」に続く、「デイルマーク王国史」4部作の第2作。「詩人たちの旅」とほぼ同時期の出来事を、舞台となる場所と登場人物を変えて綴る。

 今回の主な舞台は、南北に分かれて反目するデイルマーク王国の、最南端に位置するホーランド。伯爵による苛烈な圧政の元で、民衆の不満がたまっている。主人公は、そこで小作農の息子として生まれたミットと、伯爵家の三男の子どものヒルドリダとイネンの姉弟。
 庶民の生活は圧政に虐げられ、ミットは少年の身で反乱組織「ホーランド自由の民」の一員となり、伯爵暗殺計画の一翼を担う。ヒルドリダとイネンの姉弟は、裕福ではあっても自由にならない暮らしに不満を募らせていた。そして、一族を政治のコマとしか見ない祖父によって、ヒルドリダは9歳にして遠方にある「聖なる島々」の20歳の領主と婚約させられる。

 ミットと、ヒルドリダとイネンの姉弟。生まれ育ちが違い、それ故に色々な価値観も違う。おまけに姉弟にとっては、ミットは祖父の命を狙った人間。この相容れるところのない2組の少年少女が、偶然の出来事によって遭遇し、ヨットで海上を北を目指す。そして物語は何度かの起伏を経て終盤のスペクタクルへ向かう。

 なんとも頼もしい子どもたちだ。彼らはヨットを操ることができるし、夜間に交代で見張りに立つこともできる。相手の意見を聞き、受け入れるべきことは受け入れ、取るべき方針を決断することもできる。問題を先送りにしたり、身内を裏切ったりするダメダメな大人たちと好対照。「気丈な子どもと信用ならない大人」は、著者の後の作品にも共通する特長だ。

 本書は4部構成で、「圧政に抗するレジスタンス」の第1部、「追いつ追われつ」の第2部、「海洋冒険物語」の第3部、「魔法ファンタジー」の第4部と、1冊で様々な形式の物語が楽しめる。

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「守り人」のすべて 守り人シリーズ完全ガイド

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著 者:上橋菜穂子
出版社:偕成社
出版日:2011年6月 初版第1刷
評 価:☆☆☆(説明)

 本のタイトルがすべてを語っている。本書は「精霊の守り人」から始まる「守り人」シリーズ全11巻(本編10巻+外伝1巻)の世界を余すところなく紹介したガイドブック。

 まず内容をざっと紹介する。「新ヨゴ皇国」「カンバル王国」他の「守り人」の舞台となった5つの国の地理と歴史や神話。生物や食べ物、薬草など150項目余りの用語集。150人余りを収録した人物事典。上橋菜穂子さんの対談と講演録など。
 さらに「上橋菜穂子全著作紹介」として、デビュー作の「精霊の木」以降、「獣の奏者」「弧笛のかなた」など「守り人」以外のファンタジー作品はもちろん、上橋さんの文化人類学者としての著書「隣のアボリジニ」も紹介されている。実に盛りだくさんな内容だ。

 11巻に亘って描かれた「守り人」シリーズは、主人公がバルサとチャグムの2人で、5つの国を舞台とし、本編で7年の月日が経過する。地理的にも時間的にも広大な物語空間を擁する壮大なドラマとなっている。それを考えると、本書のような「ガイドブック」は、意義も必要性も少なからずある。
 最近は人気作家や人気シリーズの「ガイドブック」が少なくないが、率直に言うと、作家やシリーズの人気に乗っかって売ろうとしているだけに思えるものもある。しかし例えそうであっても、ファンにとっては気になって仕方ない。特に「これでしか読めない」特典などあればなおさらだ。

 本書にも「書き下ろし短編」が収録されている。「守り人」の話を全部読みたい、と思っている私は、これを目当てで買ったようなものだ。ごくごく短い物語で、私としてはもう少しでいいから長いものを読みたかった。そうしたら何と、上橋さんと佐藤多佳子さんの対談の中で、「炎路の旅人」という未発表の作品の存在が明かされているではないか。あぁ、それも読みたい。是非とも何らかの形で発表して欲しい。

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「読書感想文の書き方」について

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 毎年、小中学校の夏休みの時期になると、このブログに「読書感想文」という検索語でのアクセスが急増します。それで2年前に「読書感想文の宿題に思うこと」「再び、読書感想文の宿題について」という2つの記事を書きました。
 内容は「読書感想文をパクリ、コピペで済ませようというのは論外だけれど、他人の感想を読んでから感想文を書くのもどうなんでしょう?」というものと、その年の夏に「読書感想文」で検索されたアクセス数の紹介です。

 今年もその時期になりました。先日新聞に「実例作文がいっぱい!小学校○・○年生の読書感想文」「スイスイ!ラクラク!!読書感想文小学○・○年生」という2種類の本の広告が載っていました。「○・○」の部分は「1・2」「3・4」「5・6」という学年数が入ります。
 虚しいやら情けないやら暗い気持ちになりました。本を読んだ感想は、読んだ人それぞれだけのものです。ビジネス文書やあいさつ状のように、例文を参考にしたり、手直しをして使ったりするものではありません。出版社は本に携わる仕事なのだから、子どもたちが本を読んで「感じる」ことを大切にして欲しい。「そんなことも分からないのか!」と思いました。

 ただ、この本のことをブログに書くからには読んでみないといけないと思い、5・6年生向けの2冊を読んでみました。そうすると読む前とは違った考えに至りました。「使い方を誤らなければ、これはこれで良い本なのかもしれない」と思ったんです。それでAmazonのリンクも貼りました。

 2冊とも「ふせんを活用した、読書感想文の書き方」を紹介したものでした(当たり前ですが「コピーして使える読書感想文の例」ではないんです)。正直に言って、紹介されている「書き方」は、簡潔で実用的でした。量が多すぎるように思いますが、「実例」も書き方の説明のためには必要でした。
 「友だちに差がつく」だとか「ラクラク書ける」だとか、細かいコピーには物申したいことがあります。それからこの本を読み込んで、内容を自分のものにできるだけの根気と読解力があれば、何かに頼らずとも感想文が書けるんじゃないか?という疑問もあります。

 しかし「読書感想文ってどうやって書けばいいの?」と、まったく手が付けられないようなら、この本の方法を試してみても良いと思います。きっと、それなりの感想文が書けるでしょう。上に書いた「使い方を誤らなければ..」は、実例に載っている本の感想を書いてはいけない、ということです。実例にされるだけあって、例文はどれもとても魅力的です。これを読んで影響を受けないなんてことは考えられないからです。

 最後に。「読書感想文の書き方」を調べるために、このブログに来られた方たちに少しだけ意味のある情報を。私が、読書感想文に手が付けられない自分の娘にしたアドバイスです。それは、白い紙に「私はこの本を読んで○○○と思いました。なぜかと言うと」と書け、ということです。

 「それで書ければ苦労しない」と思われたかもしれません。ですがこれは、私がこのブログでどうにも記事を書けない時に使っている方法でもあるのです。一番大変なことは書き始めることで、一番大事なことはその本を読んでどう思ったかです。上に書いた一文はこの両方をクリアする最短の文章です。
 「なぜかと言うと」の続きを書いた後は、それを補う説明や本のあらすじが必要になるはずです。書いているうちに、登場人物への想いや自分の経験、その他に思ったことなど、うまくすれば次々と浮かんできます。

実例作文がいっぱい!小学校〇・〇年生の読書感想文
スイスイ!ラクラク!!読書感想文小学校〇・〇年生

真夏の方程式

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著 者:東野圭吾
出版社:文藝春秋
出版日:2011年6月6日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 著者が生み出した天才物理学者の湯川の推理が光る、ガリレオシリーズの最新刊。長編では「容疑者Xの献身」「聖女の救済」に続く第3弾。

 今回の舞台は、玻璃ヶ浦という海辺の街。「玻璃」は水晶のことで、太陽に照らされた海の底が、いくつもの水晶が沈んでいるように見えることから、街の名前が付いた。言わばこの海は宝の海。しかしその宝の海を抱くこの街は寂れる一方だ。
 その街に降って湧いたのが海底資源開発の話。湯川はその調査の技術指導のために、この街に来た。そして開発に反対する女性、成実の両親が経営する旅館に泊まる。翌日、その旅館の宿泊客の男性が、堤防から転落した状態で遺体となって発見される..。

 今回の現場は警視庁の管轄ではない。これまでのシリーズに登場した、湯川の大学の同期で警視庁の刑事の草薙の出番はないかと思ったが、そんなことはない。被害者の身元から、事件は早々に警視庁へ東京へ、そして草薙へと結びつき、いつも通りの地道な活躍を見せてくれた。新人?の女性刑事の内海の捜査も頼もしかった。
 また、こちらはいつもと違って、子ども嫌いの湯川が、今回は小学校5年生の少年の恭平クンと気が合ったようだ。夏休みの自由研究の手伝いをしたり、宿題を教えてあげたり。「大学の物理学の先生に自由研究を手伝ってもらうなんて何と贅沢な」とか「湯川先生、実は子ども好き?」などと思ってしまった。

 伏線の仕込み方が見事だ。「そうだったのか」と何度もページを前に繰った。そして著者が繰り出す「新事実」に翻弄された。何かが分かる度に「そういうことか」と真相に近づいた気になった。しかしそれは真相の一部でしかないか、まったく真相とは関係ない、ということが最後まで続く。騙され通しの400ページだった。

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デイルマーク王国史1 詩人たちの旅

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著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:田村美佐子
出版社:東京創元社
出版日:2004年9月24日 初版
評 価:☆☆☆(説明)

 「ファンタジーの女王」と呼ばれた著者は、今年3月に亡くなった。もう新しい物語を世に送り出してくれることはないのだと思うと寂しいが、幸いにも沢山の作品を遺してくれた。私が未読のものも10作品ほどあるので、これから読み進めて行こうと思っている。

 本書は「デイルマーク」という架空の王国を舞台として、時代と主人公を換えて綴る「デイルマーク王国史」4部作の第1作。デビューから間もない1975年の作品。詩人(うたびと)と呼ばれる、楽器の演奏と歌のショーをして王国内を巡る家族の物語。

 主人公は、詩人の家族の末っ子の少年、11歳のモリル。有名な詩人の父と、母、兄、姉の5人で王国内を馬車で巡る暮らしをしている。詩人は王国内を自由に行き来できる通行手形を持っているので、手紙やニュースも運ぶ。そして時には乗客として人を馬車に乗せて運ぶこともある。
 物語は、王国の北部へ向かうキアランという少年を乗せたことから展開する。馬車で旅する暮らしのため、一家は仕事を分担して休む間もないのだけれど、キアランは手伝う気はないらしい。モリルや兄姉とも仲違いばかりしている。

 実はこの王国は南部と北部に分かれて争っている。シリーズ第1作の本書で、主人公一家を王国の南端に近い街から北部へと旅させることで、そのあたりの事情をうまく紹介している。南北で争っている中を、南部の街から北部へ向かうキアランは当然ワケありなのだ。
 ワケありなのは、キアランだけではない。モリルの父にも母にもそして兄にも、モリルが知らない一面がある。父が持つ弦楽器のクィダーにも秘密がある。王国史4部作の幕開けは、捻りの効いた個性的な登場人物に著者らしさが感じられるが、活躍する子どもたちに声援を送りたくなる、正統派ファンタジーだった。

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ピスタチオ

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著 者:梨木香歩
出版社:筑摩書房
出版日:2010年10月10日 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 著者の最新刊。著者の作品に多くに共通するのは、「異界」の存在を感じさせること。「家守綺譚」や「f植物園の巣穴」のこの世ならぬ者たち、「裏庭」の鏡の向こうの世界、「村田エフェンディ滞土録」の神々、「沼地のある森を抜けて」の故郷の島。そして、今回はアフリカの呪術医と精霊だ。

 主人公は山本翠。40歳手前。「棚」というペンネームでライターの仕事をしている。仕事関係の人からだけでなく、恋人からも近所の喫茶店の女主人からも「棚」と呼ばれている。彼女は、かつて勤めていた出版社を辞め、衝動的にケニアに渡り数か月を過ごしたことがある。

 棚は、亡父が建てた武蔵野の公園の前のマンションの2階に犬のマースと暮らしている。公園の木々や池にいる水鳥たちの描写が詳しい。「カモ」と一言で片づけてしまわずに、「オナガガモ」「キンクロハジロ」「ホシハジロ」「ハシビロガモ」「カルガモ」と名前を挙げていく。
 それは棚がそうしたことに興味があるということを表している。また棚は、気圧の変化が自分の体調で正確に分かる。前線が通過するとひどく頭痛がする一方で、異様に意識が覚醒する。だから、棚にとって気象情報は何にもまして関心のあるニュースなのだ。

 物語の前半は、公園でのマースを連れた散歩の様子などの描写が瑞々しい。しかし棚の暮らしはマースの病気に振り回されることになる。そして後半になって、著者の作品に共通する「異界」の存在を強く感じる物語に展開していく。

 正直に言って、読んでいて今ひとつ乗れないままになってしまった。前半と後半のつながりが、無いようで有る。細い糸でつながっている感じ。

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20代で身につけたい質問力

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著 者:清宮普美代
出版社:中経出版
出版日:2011年7月6日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 著者が代表を務める株式会社ラーニングデザインセンター様から献本いただきました。感謝。

 「20代」という若い世代、組織で「新入り」の世代がタイトルになっているので、一見すると「先輩(上司)に好かれる上手い質問の仕方」という「処世術」っぽいものを想像するが、本書はそういう本ではない。
 本書冒頭に曰く、質問力が高いと「人間関係がうまくいきます」「問題解決がうまくいきます」「人を動かすことができます」「自己成長につながります」と、本書が言う「質問力」という力は随分と強力なのだ。

 この主張には、裏打ちがある。著者は、世界で9人しかいない、日本人としては初めての世界アクションラーニング(AL)機構の認定マスターALコーチ。「アクションラーニング(AL)」とは、現実の問題に対処する過程で生じる行動などを通じて、個人や組織などの問題解決力を養う学習法のこと。
 そのALの特徴的で重要な要素が「質問」。つまり、著者は「質問」を問題解決力や組織力の向上につなげる第一人者。「処世術」レベルのHowTo本とは違って、もっと大きく高いゴールが設定されていて当然なのだ。

 全部で40項目ほどあるが、特に腑に落ちたのが「クローズ質問」と「オープン質問」について。例を挙げると、「プロジェクトは順調に進んでいるか?」は「クローズ」で、「どうすれば順調に進むだろうか?」は「オープン」。
 「クローズ」は、「はい」「いいえ」で答えられる→相手の自由な意見(アイデア)は出てこない。そして「順調に進んでるんだよな!」というニュアンスを含んでしまう→相手は押し付けられた感じがする、他人事に聞こえる。「オープン」はその逆。問題解決にはアイデアが必要だし、一緒に事に当たる姿勢も重要だから、「オープン質問」をうまく使いこなしたいところだ。

 さて、上の「オープン質問」は、ある程度上の立場でこそ役に立つ。このことから分かるとおり、本書は20代という世代限定の本ではない。私のように50歳に届きそうになっていても読むべきことは多い。タイトルに「20代」が謳ってあるのは「20代の人はチャンスです。若いうちはどんどん質問をしても許されます(「はじめに」より)」ということらしい。
 そう、年季が入ってくると聞けなくなることもある。「クローズ質問」が多くなる。自戒を得た本でもあった。

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首なし騎士と五月祭

書影

著 者:ケイト・キングズバリー 訳:務台夏子
出版社:東京創元社
出版日:2011年5月13日 初版
評 価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 「ペニーフットホテル」シリーズの第4弾。「ペニーフットホテル」は、英国南東部の海岸沿いの小さな村バジャーズ・エンドにある、紳士淑女御用達の隠れ家的ホテル。時代は20世紀初頭。これまでも毎回奇妙な殺人事件が起きたが、どうも回を重ねるごとにその奇怪さが増している。今回の事件は「首のない騎士が現れて、女性を殺してポールに縛り付けた」というものだ。

 首のない騎士と聞けばオカルトかホラーかと思うが、おどろおどろしい雰囲気はしない。もちろん、殺人事件が起きたことは確かで、それも残虐な事件には違いない。しかし「首なし騎士」については、目撃者はホテルの常連客の退役軍人の大佐一人で、普段から言動が怪しい上に、その日は足元がおぼつかないほど酔っていた。
 誰もが彼の話を信じることに戸惑いを感じたが、大佐が「何か」を目撃したのは間違いないらしいのだ。ちょうど五月祭(英国では古代からの祭日)の直前で、事件が解決しなければ五月祭が中止になる。五月祭を目当てにくる宿泊客が多いので、ホテルの女主人のセシリーは、素人探偵よろしく聞き込みを開始する。

 前作「マクダフ医師のまちがった葬式」のレビューにも書いたが、このシリーズの魅力は、セシリーの活躍と登場人物たちが織りなすドラマにもある。そのドラマの方は、前作のように複数の同時進行ではなく、ピンポイントで展開する。私が前々から注目しているメイドのガーティに事件が起きる。

 これも前作のレビューにも書いたけれど。本書だけで物語は完結しているが、1作目から順に読む方が楽しめると思う。(もう少し安ければいいのだけれど)

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ひたむきな人のお店を助ける 魔法のノート

書影

著 者:眞喜屋実行
出版社:ぱる出版
出版日:2011年7月1日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 著者の眞喜屋実行さまから献本いただきました。感謝。

 主人公は山田一歩。大学4年生。学校近くの地鶏屋のアルバイトをしていた彼女は、店主の入院によって店長代理になり、おまけに店の立て直しをしなくてはならなくなった。銀行への返済が滞っており、滞納分だけでも納めないと店を手放さないといけないからだ。期限は3か月あまり。
 そんな彼女の前に、亡くなったはずの父が現れる。「しばらく前に送ったノートはあるかい?きっと今の一歩に役立つはずだよ」と告げた。ノートとは、父が亡くなる直前に一歩に送ったもの。各ページにひと言ふた言書いてあるだけのノート。一歩が最初に開いたページには「窓の外は、雪」と書かれていた。はたしてその意味は?

 本書は、一歩が店の経営を立て直していく、物語形式の実用書だ。近いところでは「もしドラ」が思い浮かぶ(「もしドラ」の著者の岩崎夏海さんが、帯に推薦を寄せている)。私が思いつく限りでも、古くは「金持ち父さん貧乏父さん」や「ザ・ゴール」以降、結構売れた本が何冊かある。
 売れた本と言えば「ソフィーの世界 」「夢をかなえるゾウ」も、それぞれ「哲学書」「自己啓発書」を物語形式にしたものだ。人に何かを伝えようとする時、物語はとても強力な方法なのだろう。100年、1000年を越えて語り継がれるものもあるのだから。

 ただし難点もある。実用書なら実用書としての内容と、物語としての魅力との両方が揃わないと、中途半端なものになってしまう。著者は販売促進関連の仕事が本職で、それについては自信も持っていらっしゃる。だから、本書は実用書としての内容は、地に足の着いた確かなものを感じた。サービス精神からか、いろいろな要素を入れ過ぎた感はあるが、物語としての魅力も、最後まで飽きずに読めるのでそれなりにある。及第点といったところだろうか。

 そうそう、長い物語を今回初めて書いた著者は、「窓の外は、雪」を地で行ったことになる。

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