謎解きはディナーのあとで2

著 者:東川篤哉
出版社:小学館
出版日:2011年11月15日 初版第1刷発行 11月27日 第3刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 昨年の本屋大賞受賞作「謎解きはディナーのあとで」の第2巻。今年1月の時点で第1巻が183万部、昨年11月に発売された本書も93万部、というから「お化け」だ。10月から放送されたテレビドラマも、本の売上に対して相乗効果があったと思う(「相乗効果」については後述)。

 国立署の刑事の麗子は、巨大企業グループの総帥の一人娘でもあり、彼女には執事の影山がついている。彼女が抱える難事件を、影山が話を聞いただけで推理して解決する。ただしその前に毒舌を吐く。前作の中の一つが有名になった「お嬢様の目は節穴でございますか」だ。

 第2巻の本書もこの構成は全く同じ。いささかマンネリ気味なのだけれど、本書の最大の特長である影山の毒舌を繰り出すのには、この構成が最も効果的なのだろう。水戸黄門の印籠と同じだ。マンネリ気味だから悪いということにはならない。また、本書では影山の毒舌に工夫の跡が見られる。著者もココが肝だと考えているからだろう。

 第2巻が出たことで、連作短編も12話になり、麗子と影山、麗子の上司である風祭警部の関係が、少し変化しているのが、今後の見どころにもなっている。その意味では今後にも期待ができる。ただ、前作のレビューに「145万部に見合うほど面白いか、というと少し疑問」と書いたが、それは本書でさらに強く思った。

 水戸黄門は印籠を取り出すシーンだけでなく、その前振りの物語も「いつかと同じような話」でも良かったが、ミステリーのネタはそうはいかない。常に読者に「アッ!」と言わせるものが必要だ。しかし、私は本書を読みながら何回か「エ~ッ?」と言ってしまった。

 このあとは書評ではなくて、本とテレビなどの「相乗効果」について書いています。お付き合いいただける方はどうぞ

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 冒頭の「相乗効果」について。11月15日放送のテレビドラマの第5話は、本書の中の1編を原作にしたものでした。私は本で読む前にテレビで見てしまいました。今後もこんなことがあったら堪らない、というわけで本書を購入して急いで読んだんです(諸般の事情で、レビューを書くのは今日になってしまいましたが)。私が買った1冊も、テレビドラマとの(私としては大変不本意な)「相乗効果」というわけです。

 第2巻の本書の発売は11月10日(奥付は11月15日発行)であることを考えると、11月15日のテレビで使うのは早すぎます。テレビや映画が、オリジナルの脚本のリスクを負えないのか、小説やマンガの「原作モノ」の映像化がドンドン早くなっているのは知っています。しかし、それにしても小説の発売直後(5日後)に、テレビでやってしまうというのは、例外的に早い、早すぎると思います。

 そもそも業界の人は、「メディアミックス」なんていう便利な言葉を作って、小説を「マンガ」「テレビ」「映画」「DVD・ブルーレイ」「グッズ」と展開することを、上手なやり方として喧伝するけれど、簡単に言えば使い回して楽をしているだけです。もちろん、テレビ番組も色々あるし、映画も驚くほどたくさん(昨年は邦画だけでも441本も)公開されていますから、全部がそうとは言いません。

 しかしヒットした作品は「原作モノ」が多く、それに頼った展開は「創造するリスク」を作家さんやマンガ家さんに押し付けるやり方です。さらに一方では、テレビや映画やグッズの業界のクリテイティブな芽を摘んでしまうことでもあります。そんなことは自殺行為だと思うのですがどうでしょう?

謎解きはディナーのあとで2”についてのコメント(1)

  1. 粋な提案

    「謎解きはディナーのあとで2」東川篤哉

    令嬢刑事麗子と風祭警部の前に立ちはだかる事件の数々。執事の影山は、どんな推理で真相に迫るのか。そして、「影山は麗子に毒舌をいつ吐くの?」「二人の仲は、ひょっとして進展するのでは?」「風祭警部は、……

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