著 者:森毅
出版社:筑摩書房
出版日:2009年1月10日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)
少し前に小学校の算数の指導方針について話題になったことがあり、調べ物をしている途上で見つけた本。本書の出版は2009年だけれど、元の単行本は1978年に刊行されたもので、さらにその多くは初出が1977年に書かれた雑誌の連載記事だ。
著者の森毅さんは、1970~80年代に京都大学の名物教授として人気があった数学者。テレビや新聞、雑誌にもよく登場されていたので、私ぐらいの年齢(50代)より上の方は馴染みがあるかもしれない。実は私も先生の授業を受けたことがある。熱心な学生では全くなかったけれど。
本書は、「数」や「数学」を、それを生み出した文化と関連付けて語る、という大きな視点と、ある演算が内包する意味を突き詰めて考える、といった細やかな視点の両方から論じたものだ。論文ではなく「数学エッセイ」という感じ。読みやすい本とは言えないけれど、堅苦しい本でもない。
「大きな視点」では、「数量化の道を追体験しよう」という章で、ヨーロッパで質量や運動量などの概念が、数量として定義された歴史を速足でたどる。「17世紀は「現象」からいくつかの概念を析出して構成して見せるところに特徴がある。それは広義のデカルト主義とでもいったものだ」なんてことをおっしゃっている。数学とは哲学だったのだ。(ちなみに、その前には数学は「魔術」だったらしい。)
「細かい視点」を挙げると、例えば「足し算・引き算に潜む情念」という章(まずこのタイトルが、数学が持つ理詰めのイメージに似合わないことを指摘しておく)。足し算には「お皿にピーナッツが3個ありました。そこに2個加えると何個になる?」という「添加」と、「右のお皿にはピーナッツが3個、左のお皿にはピーナッツが2個。合わせていくつ?」という「合併」の2つの場合があると言う。
「どっちも一緒なんじゃないの?」というご感想はあるだろう。しかし「合併」を表す式は3+2でも2+3でも構わないけれど、「添加」の方は3+2であって2+3ではないのだ。「いやいや交換法則が..」というご意見はあるだろう。しかし著者は「添加」の場合は「少しも自明ではない」と言っている。
こんなことを書いていると呆れた顔をされそうだ。それに、私の説明では袋小路に入り込みそうなので、これ以上の説明はしない。しかし、著者は多少変わってはいたが、著名な数学者で、数学教育にも関心を寄せた人だ。その人が考え抜いて記した意見・考察なのだから、一考に値すると思う。
この後は書評ではなく、この本を読んで思ったこと、この本を読むきっかけになった「算数の指導方針」に関係することを書いています。お付き合いいただける方はどうぞ。
人気ブログランキング「本・読書」ページへ
にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
(たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)










