今年で3回目になりますが、今年読んだ本のランキングを作ってみました。昨年までと同じく小説部門は10位まで、ビジネス・ノンフィクション部門は5位までです。(参考:昨年のランキング)
今年はこのブログでこれまでに109冊の本を紹介することができました。☆の数は、「☆5つ」が2冊、「☆4つ」は40冊、「☆3つ」は63冊、「☆2つ」が4冊です。相変わらず「☆3つ」がかなりの割合を占めますが、「☆3つ」を「可もなく不可もなく」ではなく、「自分としては、まぁ楽しめた(役に立った)。興味のある人はどうぞ」です。つまり、「今年もずいぶん楽しんだなぁ」ということですね。では、ご覧ください。
■小説部門■
順位 | タイトル/著者/ひとこと | Amazonリンク |
1 | 上と外 / 恩田陸 | Amazon 商品ページへ |
中米の国のクーデターや、マヤ文明などを取り入れたコメディ。予想外の事件が次々と転がるストーリーに、ホロッとさせる家族愛を織り込んだ娯楽作品。 | ||
2 | 天地明察 / 冲方丁 | Amazon 商品ページへ |
正確な暦の採用に生涯をかけた江戸時代の青年の物語。時代小説でありながら、「何者かにならん」ともがく主人公への「羨望」と「共感」を呼び起こす。 | ||
3 | キケン / 有川浩 | Amazon 商品ページへ |
工学系男子が巻き起こす、ぶっ飛んだ危険な騒動の数々が、キラキラした結晶のような輝きを持って語られる。すべての「元男の子」の心を揺さぶる作品。 | ||
4 | 神去なあなあ日常 / 三浦しをん | Amazon 商品ページへ |
林業という厳しい現場に放り込まれた18才の青年の奮闘記。登場人物たちが抜群に素敵だ。物語の雰囲気が瑞々しく、山仕事の人びとの暮らしが力強い。 | ||
5 | オー!ファーザー / 伊坂幸太郎 | Amazon 商品ページへ |
主人公の由紀夫には父親が4人?気の利いた会話、愛すべきキャラクター、巧みな伏線。伊坂作品の人気の特長が強くでた、著者が言う第一期最後の作品。 | ||
6 | 獣の奏者 外伝 刹那 / 上橋菜穂子 | Amazon 商品ページへ |
名作「獣の奏者」に収めなかった3つの物語。著者が「自分の人生も半ばを過ぎたな」と感じる世代に向けた、静かにしかし一瞬で燃え上がるような恋物語。 |
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7 | 戸村飯店青春100連発 / 瀬尾まいこ | Amazon 商品ページへ |
大阪の下町の中華料理店の、要領が良くていい加減な兄と真面目な弟。吉本新喜劇、アメをくれる近所のおばちゃん。大阪の町が育んだ家族愛の物語。 | ||
8 | ペンギン・ハイウェイ / 森見登美彦 | Amazon 商品ページへ |
腐れ大学生でも京都でもない、著者の新しい引き出しから出てきた物語。クールな小学生のアオヤマくんと、キュートなハマモトさんたちの不思議な体験。 | ||
9 | 猫を抱いて象と泳ぐ / 小川洋子 | Amazon 商品ページへ |
人前に出ない不世出のチェスプレイヤーの、悲しくも美しい物語と、静謐な音楽か詩のような文章。チェスの素人の私でも、その棋譜を「美しい」と感じる。 | ||
10 | マークスの山 / 高村薫 | Amazon 商品ページへ |
十数年の時を隔てた4つの事件が、1つに縒り合わされる。事件を追う刑事たちと犯人の人間ドラマで魅せる。改稿を重ねた著者の代表作、文庫版でどうぞ。 |
上位2つは「☆5つ」、それ以外は「☆4つ」なんですが、順位はそれぞれ前後3つぐらいの範囲で迷いに迷いました。作家さんの顔ぶれを見ると、冲方丁さん、瀬尾まいこさん、高村薫さんが、今年初めて読んだ作家さんです。その他はお馴染みの顔ぶれが並んでいて、私の好みがはっきり出てしまいました。
選外の作品について言うと、初めての作家さんでは、三崎亜記さんの「失われた町」、真保裕一さんの「アマルフィ」、好きな作家さんでは、森博嗣さん「カクレカラクリ」が良かったです。
海外作品も、10位には入れませんでしたが、ジョージ・R・R・マーティンさんの「氷と炎の歌」シリーズ、スコット・マリアーニさんの「ベン・ホープ」シリーズは、これから長い付き合いになりそうです。
■ビジネス・ノンフィクション部門■
順位 | タイトル/著者/ひとこと | Amazonリンク |
1 | 小惑星探査機 はやぶさの大冒険 / 山根一眞 | Amazon 商品ページへ |
今年一番の明るいニュースはこれだと思う。だから本書の魅力は「はやぶさ」の成功あってのこと。それでも7年前から取材を続けていた著者には感謝したい。 | ||
2 | フリー <無料>からお金を生み出す新戦略 / クリス・アンダーソン | Amazon 商品ページへ |
携帯ゲームサイトなどで良し悪しが言われるようになった「無料」のビジネスモデルをいち早く正面から考察した本。今後の経済の重要なテーマになると思う。 | ||
3 | 日本人へ 国家と歴史篇 / 塩野七生 | Amazon 商品ページへ |
徹底したリアリストの著者が、日本の政治と社会を斬る。時に切れすぎて怖いぐらいだ。しかし、「あぁ、そのとおりだった」と思うことの何と多いことか。 | ||
4 | 地域再生の罠 / 久繁哲之介 | Amazon 商品ページへ |
「地域振興」は、地方の喫緊の課題だが、その「成功例」は実は危ういものだった。自治体や地域振興関係者には厄介な本だが、目をそらしてはいけない。 | ||
5 | 中国報道の「裏」を読め! / 富坂聰 | Amazon 商品ページへ |
中国のメディアが報道した中国国内のニュースを考察する。そこから見えてきたのは、私たちが思っている「一党独裁国家」とは少し違った姿だった。 |
今年は明るいニュースを伝えた本が1位になって良かったです。ただ「事業仕分け」の中継を見て思うこと」という記事を私が書いたのは、昨年の11月。科学技術関連の予算の縮減が話題になったことを思うと複雑な気持ちです。
今や、「事業仕分け」は燎原の火のように、全国の自治体に拡がっています。「費用対効果」だけで物事を判断することが続けば、これから先に、こんなニュースに触れる機会があり得るのかどうか不安です。