明後日4月7日(火)に本屋大賞が発表されます。10作品がノミネートされていて、今年はそのすべての作品を読むことができました。
その10作品は「線は、僕を描く」「店長がバカすぎて」「夏物語」「熱源」「ノースライト」「むかしむかしあるところに、死体がありました。」「ムゲンのi」「medium霊媒探偵城塚翡翠」「ライオンのおやつ」「流浪の月」です。
何度も予想して一度も大賞が当たったことがないのですが、懲りずに今年も、私の予想を発表します。
大賞:「熱源」 2位:「流浪の月」 3位:「線は、僕を描く」 4位:「ノースライト」
「熱源」は、明治から昭和初期にかけての、樺太のアイヌや祖国を失ったポーランド人らの群像劇で、「自分は何者か?」を問う骨太の群像劇です。正直にって他の作品とは一線を画す秀作だと思います。直木賞も受賞していることが気がかりですが、過去にもダブル受賞の例があるので。
「流浪の月」は、幼児誘拐事件と、その被害者の「その後」を描いた作品です。事件があると、私たちは分かりやすい説明を求めます。本書は、その世間が納得しやすい分かりやすい説明と事実のギャップを浮き彫りにしたものです。
「線は、僕を描く」は、著名な水墨画家に弟子入りした大学生の物語です。白い画仙紙に墨だけで描く水墨画の世界が、主人公自身の境遇や成長とともに、魅力的かつユーモラスに描かれています。先輩たち登場人物も魅力的でした。
「ノースライト」は、一級建築士を主人公とした一家失踪事件を追うミステリーを入口にした、様々な要素が縦横に絡む人間ドラマです。入口から予想したものとはずい分違うところに着地して、心地よく裏切られました。
最後に少し苦言を呈します。ノミネート10作品に「子どものころの出来事のトラウマ」を扱う作品が多いのです。
主人公に関して、目前で肉親が殺される作品が2つ、両親の突然の死で心に傷を負う作品が1つ、性的虐待を受ける作品が1つ。主人公が父親に叩かれ、別の登場人物が性的虐待を受けている作品が1つ。つまり半数の5作品が「トラウマ」を描いている。(残りの5作品でも、子どものころの父の死がストーリーに絡む作品が1つ、両親が亡くなっている作品が1つ。)
本屋大賞は、個々の書店員さんの投票によってノミネート作品が決まりますから、総体としての意思があるわけではありませんが、「書店員はトラウマがそんなに好きなのか?」と思わずにいられませんでした。
—-2020.4.7 追記—-
大賞は「流浪の月」2位「ライオンのおやつ」3位「線は、僕を描く」4位「ノースライト」で5位が「熱源」でした。私の予想の大賞は5位だけれど、2位が大賞、3位と4位は的中です。かなりいいセンいったんじゃないでしょうか。
人気ブログランキング「本・読書」ページへ
にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
(たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)